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商品を絞り込み付加価値を高める

[要旨]

ある印刷会社では、幅広い商品を取り扱っていましたが、そのことにより作業効率が悪く、従業員の長時間労働が続いていました。そこで、商品の絞り込みを行なった結果、顧客の真のニーズを把握するための時間の余裕ができ、顧客の課題のソリューションを提供するようになったことから、価格競争を脱し、商品の付加価値を高められるようになったそうです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの佐治邦彦さんのご著書、「年商1億社長のためのシンプル経営の極意」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、飲食店などで、売上を増やすために、さまざまな顧客に応じることができるようにしようとして、メニューを増やせば増やすほど、仕事が複雑化し、従業員の負担も大きくなり、却って、サービスの質を低下させ、顧客からの評価を下げてしまいかねないので、経営者は、仕事の複雑化は避けるように注意しなければならないということを説明しました。

これに続いて、佐治さんは、仕事が複雑化した印刷会社が、仕事を絞り込んで、業績を回復させた事例について述べておられます。「ある印刷会社では、初めは売上を優先して、幅広く商品を取り扱っていました。印刷物全般に加え、ホームページ制作や動画制作などのサービスまで取り扱っていたため、商品ラインナップが広すぎ、スタッフの作業効率がとても悪く、残業が続く毎日でした。残業続きで疲弊していたせいで、顧客ニーズを汲み取る余裕がなく、顧客ニーズに鈍感になってしまい、要望に応えることに精一杯で、顧客に振り回されていました。

この印刷会社は、顧客が要望しているのは低単価や納期のスピードだと思い込んでいました。しかし、それらは真のニーズではなかったのです。ですが、表面的な要望を真のニーズと捉えてしまい、そうした顧客の要望に応えようと思えば思うほど、仕事は大変になっていました。そこで、経営者は、現場作業の時間管理をして、仕事の内容ごとに標準的な作業時間を設定して、無駄な作業をなくそうとしました。

しかし、その結果、さらに顧客ニーズに鈍感になり、修正作業が増えてしまい、ますます作業効率が悪くなってしまいました。つまり、顧客の表面的な要望に応えているうちに、利益は下がり、業務も多忙になっていったのです。そんな状況の会社が、『選択』と『集中』することに取り組み、一つの商品に特化することを決めました。すると、どうなったか。一つの商品に特化することで、その商品を通じて、お客様が求める真の価値が何かを深く考える時間ができたのです。

それにより、ただ単にお客様の要望を聞いて、『低コスト』、『低単価』で印刷物を制作するのではなく、お客様の現状の強みや競合他社の分析を行い、お客様の『目的』と『目標』を達成するために、コンサルティング型の提案をすることができるようになりました。それにより、販売単価も大きくアップすることに成功し、さらに、顧客満足度も向上させることができたのです。この印刷会社では、商品を絞り込み、シンプルにすることで、顧客満足度を高める時間が生まれました。それが付加価値を生むサービスの向上につながり、価格競争から脱却することができたのです」

この事例では、印刷会社がどんな商品に特化したのかは具体的には書かれていませんし、また、現実的に、どんな商品でもいいから、単に、特価すればよいということでもないと思います。しかし、顧客満足度を向上させ、付加価値を高めるという考え方は正しいと、私も考えています。もちろん、多くの経営者の方は、「付加価値を高めることは重要だ」ということは分かっていると思います。でも、現実的には、付加価値を高めることは、一朝一夕では、なかなか実現することができません。

そこで、多くの中小企業は、商品の幅を広げ、その結果、価格競争に陥ってしまっているのだと思います。ところが、もう、このような方法は、中小企業では勝てない時代になっています。すなわち、経営資源の少ない中小企業は、高付加価値の商品を提供できなければ、勝ち残ることができないということです。これは、中小企業であっても、高い経営スキルが求められるということです。このことは少し厳しい現実かもしれませんが、現在、業績が芳しくないという会社の経営者の方は、高付加価値の商品を提供できるよう、事業の改善を検討することをお薦めします。

2024/1/18 No.2591

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