フェアネス02

 次に2人に会ったのは、ずいぶん後。なんと、成人式の時だった。大学で地元を離れた俺は、久しぶりに会う友人たちと昔話や近況を伝え合っていると、あのひょうきんな笑い声で、「よう!」と声をかけてきた。村田だった。となりには、、、となりには、なんだか大人っぽい、透明感のある女性が。ん?んん??!もしかして、いや、たぶん、絶対、鈴木さん?メガネをかけておらず、というより、補助器具がない!「え⁈鈴木さん?足!」たぶん、俺は初めて足のことに触れた。「うん。治ってん!」「うそー!いや、良かったなあ!」と、なんだか、いや、何も気にしてたわけでもないし、子供の時のことなのに、胸のつっかえが無くなった感じがしたが、それより、横で村田が泣いてる。ていうか、なんで一緒に?近所やからにしては、、、お前。「付き合ってるんやで。」と事情通女子が教えてくれた。その時は、次々と現れる久々の友人共を渡り歩いて行くうちに村田と鈴木さんも別の場所に流れていってしまった。それ以来、2人に面と向かって会ってはいない。

 後で聞いた話だが、中学生の頃も、2人はちゃんと会っていたらしい。道端のボードゲームなんかではない。俺たちと自転車でモデルガンで撃ち合った運動公園や、なんでもない話をしながら探検していた川沿いの道を夕方、村田は自転車の後ろに鈴木さんを乗せて、その時間を共有するかのようにたどり直していたらしい。そして、試作段階のロールプレイ型ボードゲームのモニターとして、一緒にプレイしていたんだと。そりゃあ、覚えが速いはずですよ。いや、そうじゃない。そりゃあ、深い交際をするわけですよ。

 さらに驚くべきは、それから15年以上経過し、同窓会が行われた時に聞いた話だが、その後、2人は別れたということだった。なんか、フェアやな、と思った。弱い、守ってあげないとだめやからとか、幼馴染やからとかいう狭いというか、重たいような関係に縛られていない、なにか公平な関係性やなと。それが本当にそういったものなのか分からないが、そのとき、そう感じた。

 実は、嘘のような後日談がある。それからさらに5年は経って、幼馴染と飲みに行く前に地元商店街をなつかしく散歩していると、道端にゲームショップ&スタジオ店の看板をみつけた。ハッとして2階がガラス張りのその店を見上げると、高校生くらいの青年たちに何かを説明している様子の、随分髪に白いものが混ざっているが、当時着ていたようなアディダスのトラックジャケットを上までジップアップした姿の村田の姿があった。お前。ゲーム好きやな、ほんまに。そして、その後ろに、新しいゲームのポスターを壁に貼り付けている、メガネ姿の、いまだに透明感がくもらない彼女の姿があった。、、、、良かったなあ。

 2人と話したわけでもないから、かつて付き合い、その後、別れがあったのか、そして、よりを戻したのかなんて実際のところは分からない。何もわからないが、村田と鈴木さん、いや、村田と村田かも知れないし、鈴木と鈴木かも知れないが2人の間には、何故か昔からフェアさを強く感じている。というような話を、その夜、幼馴染と幸せな乾杯を何度もしながら長々としていた。

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