個人的2021年間ベストアルバム Top 10
はじめましてKunです。
年間ベストアルバムやっていきます。今年は数えると350枚弱新譜を聴いていたみたいです。その中でもたくさん聴いたやつをとりあえず10枚選びました。また追加で書くかも知れません。
今年は自分も大学生になったり、社会的にも大きな変化の年でした。音楽もそんな変化を取り込んで良い作品が多く出てきた気がします。
それでは10位からどうぞ!!
10位 Claire Rousey『A Softer Focus』
昨年寝る前に必ずブライアン・イーノを聴いていたらSpotifyの年間まとめのランキングが『Music For Airports』に独占されてしまいました。これを受けて今年はしっかり色んなアンビエントを聴こうと、名盤や新譜などたくさん聴きました。
今年聴いたアンビエントの中でもこのアルバムは好きで一年中聴いてました。
テキサスのアーティスト。生活音などフィールドレコーディングとドローンのコラージュがとても心地よかったです。このコラージュのバランスが絶妙でこれできる人なかなかいないと思います。
ちゃんと人間が作っている暖かみ、そこに誰か居るような安心感、"生活"に寄り添ったアンビエント作品で毎晩聴いていました。
このアーティストは今年他にもアルバムを出していて、『An Afternoon Whine』という、マルチ楽器奏者More Eazeとの共作アルバムではフィールドレコーディング、ドローンのサウンドにギターとボーカルが乗っていて、こちらもオススメです。
9位 Black Country, New Road『For the First Time』
サウスロンドンシーン本命ともいわれるバンドのファースト。
サックス、バイオリンなどの7人編成、ベースがアンダーワールドの娘……などなど聞く前から非常にそそられるようなバンドで昨年から非常に楽しみにしてました。
内容は非常にかっこいい!King Crimson、Slintなどのプログレ、マスロックから影響を受けた音楽性、大所帯のバンドから放つ壮大なサウンド、徐々に熱量が上がっていく感じとか非常に好み。
割とマニア受けするような音楽性だと思うんですけど、結構爽やかに聞けてしまうのは彼らのバンドの雰囲気が生み出しているものだと思います。いままでのポストロックバンドとは違ったまさに新世代といった感じがしました。
これから時代を作っていくであろうバンドのまさに初めての方向けの一枚。
早速来年2月にアルバムが出るらしいので楽しみ。あとぜひ来日お願いします。マジで。
8位 Mom『終わりのカリカチュア』
ソロミュージシャン、Momの4枚目のアルバム。
ヒップホップやフォークなどをエッセンスにMomにしか作れない唯一無二のポップス。初めはポップで聴きやすかったのでよく聴いていました。何回も聴き返すたびに歌詞が染み込んでくる訳ですね。
社会から一歩引いて俯瞰するようなシニカルさと深く寄り添ってくれるような優しさを両立したような歌詞。このコロナ禍で何が正しいのかわからない中で「君は悪くないよ、悪いのはあいつらだから」と言ってくれてるような気がしました。
"祝日"の「クラスメイトみたいに冷たく笑うよ」とか"泣けない人には優しくない世界"の歌詞とか本当に最高なんですよね。
例えるなら「めちゃくちゃ良い奴でちょっとワルの自分のことをよく知っている昔からの親友」みたいなアルバムでした。
今年の精神的支えになった一枚です。
7位 Squid『Bright Green Field』
またまたサウスロンドンシーンから。
ポストパンク、クラウトロック、そして元々ジャズ出身らしくそれの影響も受けた音楽性、そして何より予想のできない展開、"Boyracers"のノイズドローンに飛ぶところなどほんと表現の手数が多いまさにSquid(イカ)。
プロデューサーにはSpeedyWundergroundのDan Carey、ジャスアーティストEmma-Jean Thackrayも参加していて、まさに今盛り上がりを見せるサウスロンドンを表すような一枚。
アルバム通して感じたのは、この人たちほんと音楽大大大大大大大好きなんだなということ。
レコーディングの話聞くと、自分たちのやりたいことを突き詰めて愚直にやっていってるのが感じられました。
いつもこのアルバムを聴くと音楽を作る楽しさみたいな物を感じて泣きそうになってしまうんですよね。バンドの仲間たちで色々案出して、アルバムを楽しく作っている様子が思い浮かびます。ラストトラック"Pamphlets"とか本当感動的。
来年は是非来日お願いします。
6位 折坂悠太『心理』
折坂悠太の3枚目のアルバム。
このアルバムについて書く上でまず取り上げるべき今年のアルバムが一枚。ベーシストPino PalladinoとBlake Millsの『Notes With Attachments』です。
折坂悠太自身も「21年上半期の事件として記憶に残る」と言ってました。アルバムへの影響も公言しています。
『Notes With Attachments』はバンドとして楽器を持ち寄って合わせるというよりかは、楽器の出す音そのものに注目して重ねていくといった感じで、全く新しいジャズ、非常に自由で個性的なサウンドを展開しています。
そして『心理』はそのサウンドをいち早く取り入れ、さらにボーカルを乗せるというかなり最先端のことを行なっています。
バンドではなく、様々な音の重なりの中に折坂悠太の声があり、また重なっていく。そしてそれぞれの音が混ざり合うのではなくはっきりと伝わってくる。これは今まで聴いたことない音楽でした。折坂悠太重奏の意味が解った気がします。
折坂悠太は"心"の作詞の際、アウシュビッツ強制収容所に存在した、ナチスの将校たちを楽しませるユダヤ人楽団にインスピレーションを受けたそうです。
ユダヤ人たちの音楽によるしたたかな反抗、このアルバム全体にもコロナによって抑制されていたミュージシャンのしたたかな反抗、そして折坂悠太の内に秘めた怒りのようなものを感じました。
5位 Injury Reserve『By the Time I Get to Phoenix』
Injury ReserveのStepa J. Groggs’死後初のアルバム。
このアルバムは大学に居る時ずっと一人で聴いてました。居場所の無い者のBGMのような気がしてます。
言語化するのは私には無理。これは未来から来たようにも、宇宙から飛来してきたようにも、神からの啓示のようにも聴こえる。この世のものとは思えないですね。
聴いていると身体が浮遊し、それで殴られたり、叩かれたり、撃たれたり、引っ張られたりするような感じがする。浮遊感と暴力性が両立しているような。
black midiや Black Country, New Roadなどからサンプリングしているみたいで、だから私の耳に合うのかも。
これをヒップホップと言って良いのかもわからない、Post-Rapと言う人もいるらしいです。全く聴いたことのない音楽でした。
4位 NOT WONK『dimen』
北海道のパンクバンド、NOT WONKの5枚目。
今作は前作で見せた3人編成のギターサウンドとは打って変わって、パンクの範疇に収まらない、R&B、ソウルなどブラックミュージックなどから影響受けた幅広いサウンドに変貌。"200530"ではシューゲイザーとドラムンベースを融合させつつ、バンドとしての身体性をギリギリ保っているような聴いたことのないサウンドで驚かされました。
コロナ禍でライブハウスから遠ざかった後にできたアルバムだと思っていましたが、今年のアルバムリリース直後の苫小牧でのライブMCでボーカル加藤修平が「ライブハウスによく行ってた奴らに聴いて欲しい / 行けなかったライブハウスのアルバム」と言っていました。
これは自分なりの解釈ですが、ライブハウスそしてライブにはいつも驚きがあって、どんなことが起きるのだろうというワクワクがあると思います。その感情をこのアルバムは表してるのだと思います。
ジャケットのマニキュアの意味であったり、ラストの"your name"名前を呼び合うことの大切さであったり、今の社会の変えるべき部分をいままでと違ったサウンドで歌う。NOT WONKの核の部分はパンクなんだなと改めて思いました。
NOT WONKのカッコ良さが出ている一枚です。
3位 black midi『Cavalcade』
2019年の前作『Schlagenheim』を初めて聞いた時のことはよく覚えています。当時私は高校2年生でタワーレコードの視聴機で聞いた暴力的で高速なあのギターに酷く衝撃を受けました。まるでサーキットでF1カーに突っ込まれたかのような感覚でした。
そして今作『Cavalcade』、彼らはF1カーから戦車に乗り換え、さらに軍隊を引き連れてゆっくりと鮮やかに私の音楽観を木っ端みじんに破壊していった…
プログレ、マスロック、ジャズ、ボサノバ……などなど様々なジャンルを飲み込み巨大なblack midi帝国を形成しています。
今作は前作から多くのことが変わっています。バンド自体もメンバーの休養で4人から3人に。そして大きく変わったのは作曲方法でしょう。
前作は即興のセッションから曲を作っていて、バンドはセッションには神が宿っていると言っていました。
そしてコロナ禍でblack midiは神を捨て、それぞれが曲を作り持ち寄るスタイルへ。
Vo.Gt.のジョーディーはblack midi関連の曲以外ではクラシックしか聴かないらしく、それが曲作りに影響し、バンドから飛び出し、管弦楽などを取り入れたあの巨大な帝国のような構築的なサウンドになったのです。
あと私が思ったのはジョーディー歌上手いなということ。ラストトラックの荘厳なバラード"Ascending Forth"なんかとても感動的。
black midiはいつも私の予想を超えてくる大好きなバンドです。来年は無事来日公演が行われますように。
black midi、BC,NR、Squidの3組、そして他にもDry Cleaning、Viagra Boys、N0V3L、Shame、LICE、Low life、NEHANN、CARTHIEFSCHOOLなどなどポストパンクのバンドには楽しませて貰いました。本当にありがとうございました。来年会ったらなんか奢ります。
2位 betcover!!『時間』
私は東京のインディーバンドが大好きで、NITRODAY、ステレオガール、突然少年などなどよく聴いていました。その界隈の中にいた一人の男がbetcover!!です。
早熟なアーティストで昨年のアルバム『告白』の時点でもうロックスターの素質は見えていた気がしました。
そして今作で私はbetcover!!は令和最大のロックスターになると確信しています。
3枚目で大きく化けた、まさしく"化けた"なんですが、冒頭"幽霊"→"狐"から聴いたことのないおどろおどろしいサウンド。
ゆらゆら帝国、フィッシュマンズが思い浮かぶようなサウンドの作り込み、最初から一気に引き込まれます。ほとんど一発録りらしいです。恐ろしい。
アートパンク、サイケ、ジャス、ブラジル音楽…を飲み込んだバンドサウンド。そして他に感じるのは歌謡曲へのリスペクト。先日ライブに行った際、"津軽海峡冬景色"と"川の流れのように"を披露していて、歌謡のDNAがしっかりと染み付いている。"棘を抜いて歩く"とかは昔の歌謡曲の名曲と言われて騙されてしまうと思います。
あと本人から出てくるカリスマ性も魅力の一つ。
この前家でbetcover!!のライブ映像を観ていたら、親が「尾崎豊じゃん」と言ってきました。
そうですbetcover!!って現代の尾崎豊なんです。自身の内在する熱量を全てぶつけてくるパフォーマンス。狂気性の孕んだ歌唱。そして優しく寄り添ってくれるような楽曲達。
betcover!!、柳瀬二郎に全て賭けて付いて行きたくなるような魅力があります。"あいどる"→"回転・天使"→"島"の流れで彼のカッコ良さ、優しさの虜になってしまいます。
ライブも凄まじく、このアルバムのレコ発ワンマンの映像は絶対に見て欲しいです。
凄いでしょ?来年2月にはリキッドでワンマンも、チケットはこちら
私はもう完全にbetcover!!の虜です。令和のロックスターになる、そんな予感のする一枚でした。
1位 Parannoul『To See the Next Part of the Dream』
完全優勝!
このアルバムについては色々言うことがありますね。
一番言いたいのはこのアルバムには青春が存在しないということ。
NUMBERGIRL、スーパーカー、銀杏BOYZなどのバンドは青春そのものな訳ですね。
Parannoulはバンドサウンドではあるけれども、DTMで独りで作られたものでバンドではない。青春そのものの"バンド"に対する"憧れ"だけがそこにある。
青春への憧れという抽象的なものを、輪郭がわからないほど歪んだシューゲイズ、なんだかやりきれない感情にするエモを組み合わせたシューゲイズエモで上手く表現しているんですね。
青春を描いたアルバムは無数にありますが、青春の不在を描いたアルバムはこれくらいでしょう。
青春の不在どころか、「俺の学生時代もなんもなかったな」と大勢の人に思わせる、錯覚させるほどのパワーのあるアルバムです。
私も学生時代、青春に憧れた一人だった、さらに大学入ったばかりで全然馴染めなくて悩んでた時に聴いたのでこのアルバムはめちゃくちゃに刺さりました。年間どころかオールタイムベストに入ります。
そしてもう一つこのアルバムの成したものとして、Parannoulをロックスターにしたことです。世界中から評価されたこの作品はもの凄い自信となったことでしょう(彼は謙遜していますが…)
このアルバムで"青春への憧れ"という呪縛から解き放たれ、その後所属レーベルLonginus Recordingsからリリースされたコンピ盤『Downfall of the Neon Youth』での楽曲は、重荷を下ろし自由に飛び立てそうなサウンドを展開しています。
Parannoulのこれからの活躍に期待です。来日公演もあったら良いな。
まとめ
今年はまだまだ本当に大変な年でしたが、良い音楽に支えられて無事生きてこれました。アーティスト達に感謝です。
来年はBC,NRの新譜とかceroのアルバムが出るとか、Suchmosのアルバムが出るとか、THE 1975が動きそうだったりとかとか…また音楽に助けられる年になりそうです。
ここまで読んでくださりありがとうございます。また来年もよろしくお願いします。
それでは
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