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ナイル川でバタフライ(6)〜セレブ体験?

前回まで
(1)〜以前の私にとって、旅とは純粋に体験だった
(2)〜出発
(3)〜思いがけず、バンコク
(4)〜エジプト到着
(5)〜バクシーシ

ルクソールで一泊し、翌日ルクソールとアスワンの間にある街(名前は失念。サッカラだったかな)に途中下車した。当時はガイドブックにもほとんど載っていなかった。遺跡もそれほど多くないので、さくっと降りてさくっと見て旅のつづきをしようと思っていた。

駅に到着した。ここでもまたバクシーシの群れが押し寄せるのだろうと覚悟を決めて外に出た。すると、あれ? お金を求める人がいない。

代わりに、それまでふつうに歩いていたごくふつうの人々(男性のみ)が我々を一目見ようと群れてきた。1人2人、、、10人20人、、、100人200人、、、が我々めがけて集まってきた。その数たるや。驚いた。

東洋人を見るのは初めてなのだろうか。いや、女性が顔を出して歩くことがない国だ。正確に言えば、いっしょにいた友人の東洋人女性を見たかったのだろう。

我々が遺跡に向かうと、大勢がぞろぞろとついてくる。四方を囲まれ前に進めない。

いつの間にか若い警察官が我々の前に来て、誘導を始めた。私たちは警戒した。また誰かとグルになってぼったくりを考えている警官なのではないだろうかと。

しかし、この街はちがった。市民も警官も、誰ひとり我々を騙そうとしたなかったし、金銭も要求しなかった。

見ると、警官もなんだかうれしそうだ。「ちょっとそこ、どいてどいて。質問? あとであとで。」まるで有名な映画俳優を先導するかのように振る舞っている。

ついに新聞記者まで現れた。我々は涼しいところに案内され、椅子に腰掛けるよう促され、茶を出され、いくつかの質問をされ、写真を撮られた。なんだかセレブになったようだった。連れの友人2人も得意げに質問に答えていた。私への質問はごく短く、ほとんどの時間が彼女らへの質問と撮影に充てられた。途中から彼女らは女優のようにポーズしていたっけ。

すぐに次の電車に乗ってアスワンに行くつもりだったので、ごく短時間のセレブ時間に終わった。前年にNGOの活動の一環でインドの村に行ったときも、我々初めて村を訪れる異人に人々はピュアな眼差しで「どこの村から来たのか」と質問し、歓迎の宴を開いてくれたが、そのときと今回はまったくちがった。もうこんななんちゃってセレブ体験をすることは生涯ないだろう。

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