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妹と結婚した天才

天才が好きな妹は、大学生になると天才と付き合いはじめた。

天才のほうから妹に近づいてきたと聞いて、私はそいつはアホだと確信した。

大学名をきくとたしかに天才なのだが、わざわざそのような大学に入って妹に近づいて夢中になるというのは私にとって素晴らしいアホである。

私は一度見てみたいと思った。

しかし何もしなかった。
できなかった。

仕事に没頭し、仕事以外に振り回されている私にわざわざ妹の彼氏をみにいく暇などなかったのだ。

ほっておいたら妹のほうから連絡があった。


「旅行の帰り道にお姉ちゃんのところよっていい?」
「いいけど。彼氏もくるの?」
「うん。お姉ちゃんに会ってみたいって。」
私に関して妹は何の話をしているのだ?
「わかった。駅まで行くから近づいたら教えて。」


とりあえず酒でも飲むか。

私はその時とても気に入っていた
日本酒を多く取り揃える海鮮系の
料理屋を予約した。

彼氏不在だった私は幸せな2人をみるのもけっこうだが、どうせだったら自分も楽しみたい。

1人ではいけないこの料理屋に行く口実ができて非常に嬉しかった。

飲めない男は不合格!

勝手に決めて、2人を待った。
待てど暮らせど連絡が来ない。
おかしいなと思っていたら、どうやら旅行先でケンカしたらしい。
メールが届いた。

「ごめん。別れるかもしれない。今日行けないわ。」

「わかった。」

なんだ。別れるのか。酒飲んでから別れたら面白かったのに。

ほっといたら
「もうすぐ着きます。とりあえず仲直りしました。」
とメールがあった。

なんだ。仲直りしたのか。早すぎてつまらない。お子様め。

私は駅まで行って2人に会った。

妹の顔はまだむくれており、
はじめてみる彼氏は神妙な様子だった。

妹の語る鬼姉エピソードに興味を示し、俺なら攻略できる会わせてみろと妹の前で得意になった男の憐れな成れの果てを私はみた。

いくらなんでもかわいそうだ。
なんで喧嘩したのかは知らないが
彼は今プライドズタズタの状況である。

私は自己紹介をし歓迎の意を表し、彼の名字を入手して、彼に即座にあだ名を与えた。

私は忘れっぽい。別れるかもしれない妹の彼氏の漢字2文字を覚える気にもなれない。よってあだ名は名字のうちの漢字一文字である。

「◇君、日本酒は好きですか?」
「はい!お姉さん!!」

なんと
お姉さんを攻略するどころか、
お姉さんに取り行って
この状況をなんとかして欲しい男になってしまっているではないか。

これは都合いい。
妹はあまり酒が飲めない。
いっぱい飲もうっと♪

私は2人を料理屋に案内した。

3人で乾杯をし、私も何度か行ったことのある旅行先の様子をききながら私はジャンジャン酒を注いだ。

「◇君!その杯をあけたまえ!」
「はい!お姉さん!!」

「◇君!次は何飲む?」
「これなんかどうでしょうか?お姉さん!!いい酒です!」

「◇君どうだ。まだいけるかね?」
「はい!お姉さん!!」


めっちゃ飲めるやん!!
舎弟のような妹の彼氏を
すっかり私は気に入った。


今思うと、彼氏を適度に弱らせて
私のもとに連れてきたのは
妹なりの彼への愛情だったような気もしてくる。

私はとりあえず
自分の身を挺して
◇君をぐでんぐでんに仕上げて
2人を帰りの電車に解き放った。


彼氏が自分のために
エライ目にあうのをみて
妹は再び愛情を取り戻したようだ。
その後2人は別れなかった。

その後◇は
「お姉さん!なんとかして下さい!」
「お姉さん!子どもができました。これから結婚の挨拶に行きます!どうしよう。」
何度か私に電話をよこした。

今も妹のことが大好きでたまらない可愛い義弟である❣️😊

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