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ヤマモモの実の行方

「お嬢さん方そんなんいつまでやんのー?」
職場の女子どもが一斉にパンをこねはじめてしばらくたったある日の朝
のこと、のけものにされたように思ったの、かつまんなそうにT島さんが言った。

そしてその日の10時の休憩時間にT島さんが私に言ってきた。

「お嬢さん。あのねぇ。ヤマモモがたくさんなってるんよ。もしよかったらお昼休みに一緒にとらない?」

ヤマモモ…


それ一体とってどうすんの?

食べられるものは食べられるというだけで美味しいかどうかは別であることを賢い私は知っている。

しかし、T島さんはパンをこねてない。かわいそうだ。

ヤマモモは1人で取るのは恥ずかしい。

仕方ない。よし、行ってやろう。

「ヤマモモですか?いいですよ!行きましょう。」

私ってなんて親切なんでしょうね🩷



昼休み、もちろん私は夢中になってT島さんよりずっとか多くのヤマモモを採取した。フフン♪。


さて、家に帰って採取した大量のヤマモモを目の前に、案の定私は困るのであった。
ちょっと食べてみたけどたいして美味しくない。


どうしましょう?



そこで私はヤマモモの加工法を調べ上げ比較的材料の少ないシロップを作ることにした。覚えてないけどハチミツか氷砂糖それにちょっとレモン汁あたりをビンに入れてほっとくだけだ。


「姉ちゃん。久しぶり。今度家いっていい?」

弟が電話をよこしてきた。珍しい。

「いいけどなんで?どっかみたいとこあるの?」

結婚して田舎に住んでたので、用事がないとこんなとこには来ないはずだ。
実家に帰れば良いのにわざわざこんなへんぴなところへなぜくるのだろう?
弟の声には人生に行き詰まった様子はなかった。

「まぁその辺ぷらぷらさせてよ。」

おかしい。

「ところで来るのはあんた1人?」

「いや。彼女と行こうと思ってる」

ほれみろ!

だいたい弟というものはこんなもんだ。大事なことを言わないんだ。掃除事情がまるで変わってくるではないか。アホめ!

ブツブツいいながら
結婚だ結婚だ結婚に決まってる💒
と喜んで

完璧な観光案内プランと掃除スケジュールを立てて2人の到来を待ち構えた。


果たしてとっても知的で素敵な女性を連れて弟は現れた。

私達夫婦は2人を歓待し、私がたてた完璧な観光案内に連れまわした。

城🏯、和菓子屋、古びた建築、旅気分の味わえる鰻屋…❣️私は私の好きなものを見て欲しくってずーっと喋り続けた。

どことなく品があって、控えめな雰囲気の彼女はとっても喜んでくれて、下見の時に私が見逃した、天井の絵についても新しい見方を教えてくれたりした。知性もあるのだ。私は彼女のことが完全に大好きになった。
だってこんなに完璧な女性なのに私の弟と結婚したいということは、彼女は絶対にどこか頭がおかしいのだ🩷最高🩷


でもほんとに彼女は
私の妹になる気があるのかしら?

ひょっとして今日一日テキトーにやり過ごしてあとは私なんかと全然会おうと思ったりしないかもしんない。

私はとても素敵な彼女を前に
だんだん心配になってきた。

もっと仲良くなりたいな。


観光と昼ごはんを食べ終えて
荷物を取りに家に戻った。

私は暑いお茶を入れようとして
ふと思い出したようにいった。

「冷たいジュースのほうがいいかな?」

「ジュースってなんなん?」
弟が言った。

「いやさー。こないだヤマモモシロップ作ったんよ。はじめて。まだ飲んだことないんだけどね。」
私が言った。

「またそんな魔女みたいなことして。」
弟が眉をひそめた。


そのとき天使がささやいた!

「✨🌹私飲んでみたいです🌹✨」

うめく弟とうちの旦那をよそに

彼女と私はヤマモモジュースで乾杯した。


今思い返せばこれが私と義妹の酌み交わした姉妹杯であった。

T島さんの誘いにのっておいて誠に良かった。

なんのはなしですか

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