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みちのく津軽ジャーニーラン266km完走記 その11 選手生命・・・終わりだ・・・(125.9km龍飛地区コミュニティセンター~161.9km道の駅たいらだて)

イマココ
イマココ

リーダーとは

125.9kmまでは、紆余曲折あれどタイム上はプラン通りの戦いが出来ていた。うまくいかなかったこととしては、龍飛地区コミュニティセンターでの睡眠がもう30分ほど欲しかったということぐらい。それ以外に関して言えば、プランを立てておいてなんだが、こんなにうまくいくとは思わなかった。ここまでで1時間のビハインドを背負ってしまっていては、疲れ果てたカラダにも関わらず今後のどこかで無理をせねばならない。そしてその無理は必ずまた別の不備や不調につながっていく。そうした無理をしなくて良いタイムスケジュールでここにいられることは、数少ない僥倖だった。少なくとも、前半戦に関しては「勝ち」を宣言しても弁護士のエンディは裁判所に異議申し立てをしないと思う。

タイムスケジュールに関しては数少ない僥倖、と表現したが、それを除くとどうなのか?95.5km鰊御殿の時点では感じられない、もしくは無視できるレベルの違和感に過ぎなかったものが、確実にカラダと心を蝕むレベルに至っていた。心配していた足裏の皮ズレに関しては、予想通りある程度のダメージを負っていることが視認できた。それ以外にもどうやら爪含めた複数個所をヤラれている可能性が高い。が、まだ走ることはできる。関節に関しては、先ほど確認した限りでは左ひざがイっている。右膝は最近だとめったにない肉離れ的な痛みが出てきていた。これは今後注視せねばヤバいことになりそうだ。それと前述の通り、鰊御殿にて全てのジェルをドロップバッグの中に忘れてきてしまっていたため、補給に関しても不安がいくらかあった。もともと、「125.9km以降は気合い」というふうに定義していたのだけれど、いざその場所まで到着してみて、残存戦力を冷静に分析してみると、残り140kmを戦えるのかどうかは正直五分五分か、もう少し分が悪いように思われた。


レース出発前に2019年の263km完走経験者のフジタマンと仙人が参加してくれたzoomミーティングでは、我々は125.9km龍飛地区コミュニティセンターまでを勝負と考えていたが、少しパラダイムを変える必要がありそうな意見をいただいた。その年、制限時間1分半前にゴールした仙人曰く、「過去参加した4回のみちのく津軽で、例外なくやられているのが龍飛からふるさと体験館手前までの海岸沿いの道。単調な道、波の音、孤独、闇、全てにやられる。敢えて言うなら、龍飛からが本当のスタート」。なんてこったい。俺らが「ここまでに勝負を決めれば勝ち」と決めていたラインが、単なるスタート地点に過ぎなかったなんて・・・。zoomミーティングでは、ともあれ龍飛までたどり着くことすら成否が微妙な状態だったので、その話は頭の片隅にしまっておくことにした。しかしいざ龍飛までたどりついてみると、仙人の言っていた話が現実味を帯びて目の前に姿を現し始めていた。ちなみに古間木選手と同じ「他意のない族」であるフジタマンは、「まぁ結局気合でしょ!羅王なら大丈夫だよ」といつも通り参考にしづらいアドバイスをくれた。

上段左が263kmに挑む他意のない族フジタマン、右が解脱してる仙人。下段は下々。


 
問題が一つあった。俺は、ここ125.9km地点までのプランを、超綿密に立てていた。他のどの参加者の立てたプランよりも、あるいは歴代のどの参加者が立てたプランよりも、緻密で現実的でチャレンジングで、そしてゴールに直結するプランを立てられたと思う。その代わり、龍飛地区コミュニティセンター以降のスケジュールについては完全に放棄していた。レース全体についての計画を立てなかった理由としては、絵にかいた餅になることが分かり切っていたからだった。どうせ後半戦は気合で走るしかない。それであれば、前半戦に総力と走力を結集して、なんとか後半戦を戦えるだけの貯金を作り出そうとしたのだ。そしてそれは成功した。しかし、事ここに至ると、125.9kmから266.5kmのゴールまでのプランが、なーんにもないこと、そしてそのことについて他の誰よりも俺自身が不安になっていることに気づいた。ない。ほんとにないのだ。
 
俺は、自身の立てた計画にどれほど自分が信を置いていたかに改めて気づかされた。そして、何かを信じている俺を、チームメンバー(他意のない古間木選手以外)は信じていてくれていたことにも気づかされた。俺は、改めて痛感した。リーダーは、常に何かを信じてなくてはならない。それが現実的に到達可能な目標なのかどうか、実現可能なことなのかどうかはこの際関係ない。リーダーが信じるものを、メンバー(他意のない古間木選手以外)は信じるのだ。そうして信じる者は救われるがごとく、いつのまにか当初実現不可能に思えた目標は、その姿を具現化していき、現実のものとなってゆく。俺は、もう一度何かを信じることにした。2号機が「パパならできるよ」と手紙で言ってくれていた、その言葉を信じてみることにした。目の前に見えるものを信じることはカンタンだ。目の前に見えないものを信じる。それができる漢こそが、リーダーなんだ!

 
雨が激しく降ってきた。もはや、帽子だけでごまかすことは困難なほどの、激烈な雨。靴の中も全く望まない程度にはぐちゃぐちゃになってしまっている。皮がズレている感覚も、前よりひどくなってきている。仙人が言っていた通り、ひどく退屈な海岸線の道が続く。ツライ、疲れた、雨がうざい、足が痛い。言っても仕方ない文句を頭の中で何万回も反芻しながら、しかしそれを口に出す愚を懸命にこらえ、次なるエイドに向けて足を踏み出していく。途中、全身をドラえもんの着ぐるみに包んだ奇妙な漢とその一味とすれ違った。よく考えれば分かる通り、ドラえもんなんだからこんなにツライ思いをせずにどこでもドアで一気にスタートからゴールまでいけばいいのに、一体何をやっているんだろうか?しかも、聞けば前回は途中でリタイヤしたのだという。繰り返しになるが、一体何をやっているんだろうか?・・・というようなドラえもんディスをしていたら、我ながらとんでもないことを思いついてしまった。このレースのスタートは弘前のさくら野百貨店、そしてゴールもまたさくら野百貨店。つまり、スタートと同時に、「どこでもドア~!」とこれ見よがしにドアを用意し、通り抜ければ、あらびっくり!あっという間にゴールである。「ただのドアを通り抜けただけじゃん?」と言われても、どこでもドアなのだから「時空を超えた」と言い張れば良い。なんと、史上最速記録の誕生だ。

CPを1個も通過していないので多分失格になると思われる


ひ、膝が・・痛ぇ・・!?

Source:スラムダンク30巻ぐらい


一度は天気予報の通りに激降りになった雨であったが、数時間も経つ頃には神様が色々取り計らってくださったのか、上がっていた。そして、俺はまた別の問題に直面することになった。かねてから問題ではあったが、そこまで深刻ではなかったアレだ。膝が痛い。両ひざが激烈に痛い。俺はこの旅で初めて、精神的な摩耗ではなく肉体的な摩耗の方に悩まされていた。膝というのは厄介なもので、筋肉痛とは異なりひどくなると走ることはもとより、歩くことすらできなくなってしまう。どうにかこうにか進まねば話にならない道程を何とか進んでいたが、ついにロキソニンを投入した。が、まったく痛みが引かない。仕方ないので良くないとは思いつつ、一気に2錠目を投入した。まだ痛い、超痛い。でももうちょっとで137.9km三厩体育館だ。がんばれ俺。ラスト2kmほどはほとんど歩いてエイドに到着。ただいま2
日目の17:15。スタートから24時間15分経過している。

浮かれる古間木選手と俺たち 撮影:Shizu Koshikawa
エンディはなぜかいない 撮影:Shizu Koshikawa
常に写真写りを忘れない、ヒロポン 撮影:Shizu Koshikawa

三厩体育館ではエンディ棒(エンディがいつも嬉しそうに持っているマッサージ棒)を借りて、膝をぐりぐりした。エンディ棒はエンディが使い過ぎているせいか、なめらかな回転がウリなのに全然回転しない。この頃になると、こういった期待相違に関してもいちいち舌打ちしたくなってくる。

見ると、明らかに右ひざが肉離れのように大きく腫れているし、なんなら筋肉が剥がれてしまったような感じになっている。こりゃいてぇわけだ。左ひざも、先ほどからずっとピキーンという痛みに苛まれている。もうなんか痛すぎて、ストレッチもまともにできないししゃがんで筋肉を伸ばすこともできない。あと130km弱?無理じゃねえか?どうすんだよこれ?どこからともなく、彩子マネージャーの声が聞こえる。「選手生命にかかわるわよ?」

桜木花道は背中が、俺は膝が・・・痛ぇ・・・

延命措置しかできないという絶望的な状況のなかで、しかしかすかな希望としてはあと45kmほど走ればもう一度大きな睡眠を予定している181.7kmふるさと体験館に到着することができる。そこまでたどり着ければ睡眠による充電と、ストレッチと、あと他にも色々できるはずだ。ロキソニンを大量投入することになっても仕方ない。やるだけやってみるか。しかし痛ぇ。痛すぎる。他のチームメイトは近くのコンビニでバカンスしてるみたいだけれど、俺は暗澹たる気持ちで黙々とストレッチ。そして仮眠。すれ違った司会兼アイドルのゆうゆとも、あまり言葉を交わす元気がない。やるのか、いややめるのか。できるのか、いやできないのか。どうする?どうすんだよ俺?龍飛地区コミュニティセンターでもう一度リーダーに戻ると誓った俺は、再び時を置かずしてダークサイドに堕ちつつあった。アナキン・スカイウォーカーもびっくりのダークサイドアゲインだ。銀河帝国皇帝がダークサイドはいいぞと手招きしているのが見える。しかし、仲間の存在に依存し、2号機の手紙に依存していたあの頃とは違う、小さな光が俺の胸に灯っていた。暗黒面の魅力に押しつぶされそうになりながらも、俺の中のルーク・スカイウォーカーが確かな産声をあげていた。父さん、僕は皇帝には負けないよ。

ふつふつと、地の底から湧き上がるような俺の中のマグマ。短い時間ではあったが、自分で自分に折り合いをつけ、次に進むための準備が整ってきた。ふと、あの漫画のセリフがよみがえる。後半の山王戦、絶体絶命の状況における様々な名台詞が、全てみちのく津軽バージョンとなって頭の中でこだまする。そうか、改めて分かった。俺は、この大会が好きなんだ。好きな大会なんだから、ゴールしなきゃいけないんだ!


「(みちのく津軽ジャーニーランが)大好きです。今度は嘘じゃないっす。」

Source:スラムダンク30巻ぐらい


「266kmゴールすんだろ!エンディ!通過点じゃねーかよ三厩体育館は!!」

Source:スラムダンク30巻ぐらい

「館山会長の栄光時代はいつだよ・・・スポーツエイドを立ち上げた時か・・・?オレは・・・オレは今なんだよ!」

Source:スラムダンク30巻ぐらい


そう、オレの栄光時代は今なんだ。今やるしかねぇんだよ!
 

ほら、こんな人生も悪くない

山王工業戦前の湘北キャプテン、赤木剛憲のように自らとの対話で様々な葛藤に折り合いをつけ、ついに前を向くことに決めた俺。頭の中にはスターウォーズのテーマが鳴り響いている。副題は「ジェダイの帰還」だ。準備を重ねるチームメイトに断って、少し先に三厩体育館を出て歩いていた。後ろを見ると、エンディ、ヒロポン、マッキーが本レースの司会兼アイドルのゆうゆと話しながら歩いてきているのが見えた。ゆうゆとは龍飛でもすれ違ったし、ここでもエイドに来たタイミングが一緒。走力が同じとは全く思えないが、歴戦の勇者である彼女が視界に入っているということは、俺たちも悪くないペースでここまで来ているのだろう。

チームメイトが追いついてきた。先ほどまでゆうゆと話していたメンバーに聞いてみた。葛藤を乗り越えた俺の声色は、いくらか弾んでいたことだろう。「ゆうゆ、なんて言ってました?ここまでは良いペースって褒めてくれました?いや、私もリーダーとして僭越ながら実は結構そう思ってたんですけど・・・」と、チームメイトだけではなくゆうゆからの褒め言葉も待っている俺がいた。本レースに関してド素人のチームメイトではなく、より強い妖気を持つランナーからの褒め言葉。これを俺は欲していた。が、予想に反して、無表情な顔で難しそうな顔をしてうなづきながら、エンディが答える。「いや、ここからが地獄だって言ってました。」ルーク・スカイウォーカーに気分だけなっていた俺は、フォースの力が弱まるのを感じた。「高野崎キャンプ場からふるさと体験館までは世闇で何をしても全く進まないって」。ヒロポンが重ねる。完全にダークサイド・アゲイン。マジかよ。


痛みと戦いながら、ロキソニンを投入しながら、少しずつ、少しずつ進んでいく。2日目の日没が迫っている。あれ、ついさっき、朝を迎えて鰊御殿で朝ごはんを食べたはずなのに、なんでもう夜になってるの。このあたり、痛みと疲労と痛みで全く記憶がない。気づけば、150.9km高野崎キャンプ場に着いていた。時間は19時40分。出発から26時間40分が経過している。補給をささっと済ませ、15分ほど仮眠を取る。もうかなり眠い。キャンプ場に入った時にはまだかろうじて光があったが、エイドを出ると完全に日没。ちなみに俺はさっさと座ってガン寝していたが、マッキーは「虫が気になる」ということで寝られなかったらしい。もう少し違うところ(他意のないところ、下品なところ、声がでかいところetc.)を気にしてほしいものだが。。。もうこの頃には我々とは隔絶した何かを持つ他意のない族・「古間木選手」ではなく、元通りの他意のない族・マッキーに戻っていた。おかえりマッキー。高野崎キャンプ場を出るときに俺はチームメイトに声をかけた。「道の駅たいらだてまであと11km!エンディ、残りの距離の確認よろしく!ヒロポン、ペース確認よろ!マッキー、住宅街じゃないから声出してもだいじょうぶ!」。この号令を聞いた誰かに、「すごいチームワークだね!」と褒められたと記憶している。なんだか嬉しかった。この頃、俺たちはまさに「チーム」だった。それは最高の状態であり、そして「最後」の時間でもあった。

あ、そうそう、忘れていた。少しさかのぼるが、海岸線から見た素晴らしい夕日は格別だった。俺が大好きな小説に「終戦のローレライ」がある。第二次世界大戦の日独同盟(イタリアは出てこない)をモチーフにした小説で、いわくつきの兵隊ばかりを集めた日本のつよつよ潜水艦が、ドイツから供与された特殊武器「ローレライ」を使ってアメリカ海軍をバッタバッタと倒しまくり、最後は搭乗していた主人公とヒロインの未成年コンビだけを脱出させて、その後太平洋に散るという素晴らしい物語(全く伝わらないと思うので読んでほしい。この作者・福井晴敏氏の作品は、他に「某国のイージス」も素晴らしい。国防とはなんぞや、戦争とはなんぞやを考えるに良質な教材)。物語の最終盤、たった一艦でアメリカ海軍と戦い続けてきたつよつよ潜水艦は、しかしついには敵戦艦の砲撃を受けて倒れる。その際に搭乗していた軍医が砲撃で潜水艦に空いた穴から空を見上げ、一瞬だが青空が見えたときに、「ほら、こんな素晴らしい青空が見えたりするもんだから、こんな人生でもまだまだ捨てたもんじゃない」とボヤいてその直後打ち込まれた魚雷の爆発にのまれて散るシーンがある。アメリカ海軍との戦いの中で撃沈を避けるため延々と潜水走行を続け、補気もままならず、ずっと酸欠と排ガスと撃沈の恐怖に苛まれ続けた最後の最期に、致命傷を食らった艦底から青空が一瞬だけ見えたことの喜びを表現するセリフなのだが、俺はなぜかこの物語の中で本論とは一切関係がないこのシーンが好きであり、「終戦のローレライと言えばこの場面」と頭の中にいつもイメージしていた。
 
俺たちが海岸線から見た夕日も、「ほら、こんな素晴らしい夕日が見えたりするもんだから、こんな人生でもまだまだ捨てたもんじゃない」と思わせてくれる何かがあった。苛烈な百数十kmを経てきて、まだまだこれから長い地獄の2晩目が待ち構えていて、ありとあらゆる余裕がない。しかし、何というか、「ああ、綺麗だな」と素直に思わせてくれた夕日だった。俺以外にも、エンディもヒロポンも少なくない程度に感動していた様子だった。マッキーは、「あ!夕日だ!」と見ればわかることを大声で叫んでいた。静かにしてくれよ。

「ここ絶景!写真撮ろうぜ!」というタイミングでいつもいない古間木選手ことマッキー


 

これ以上ないぐらいくだらない内紛


150.9km高野崎キャンプ場から161.9km道の駅たいらだての間は、前述の通り偉大な夕日を別とすれば記憶がほとんどない。多分、痛みと疲れで朦朧としていたんだと思う。あとさすがに眠くなってきていた。唯一眠気が覚めたのは、道の駅たいらだてまであと2kmというところで、ヒロポンとマッキーが真っ向から対立したときであった。ペースは俺が握り、地図管理はヒロポンに任せていたのだけれど、ある分岐を右側に行ったところで、後ろにいたマッキーが「そっちじゃなーい!」と叫び始めた。ヒロポンに、「どうなん?」と聞くと、マップを見ながら「いや、こっちで合ってます」とな。じゃあそうなんだろう、マッキーが間違っているのだろうと思ったが、マッキーは全然譲らない。横を見ると、「俺は間違ってない」という顔のヒロポン、後ろを見ればずんずんと「別の道」を進むマッキー。両方を見比べながら、念のために俺もGoogleMapで道を調べたら、なんと間違っているのはヒロポンの方だった。間違ってはいたもののあとで合流できる道だったのでそのまま進む。ヒロポンは目が合ったらOK、という努力のない恋愛を過去にしてきているため、思い込みが先行し、Factに対するこだわりが弱いようだ。

そういえばこの2人は、中山道ジャーニーラン126kmに出場したときも、結構な勢いで衝突していた。1日目からフル出場していた俺、エンディ、マッキーに、仕事の関係で途中から加わったヒロポン。夜になり、ヘロヘロな状態の我々にヒロポンが合流した瞬間、「こっちの道はコンビニがある!」「いや、ない!」という、別にどうでもいい内容でお互いに譲らない舌戦を繰り広げていた。中国人は声がデカいため普通にしゃべっていても日本人の我々からしたらまるでケンカをしているみたいだ、とはよく言われていることだが、そんなような風景だった。俺やエンディにはすぐに謝るヒロポンは、しかしマッキーには謝りたくないらしく譲らない。俺やエンディには舌戦を挑んでこないマッキーは、ヒロポンになら勝てると思っているのか、これまた譲らない。この時はヒロポンが正解でマッキーが間違っていたのだけれど、この時の勝利で傲慢になっていたのだろうか、ヒロポン。もしくはリベンジを誓っていたのだろうか、マッキー。あとからヒロポンに聞いたら「いや、全然ケンカしてないですよ、マッキー大好きですよ」とは言っていたが、そういえばこの2人だけで走っているのは見たことがない。まぁ、そういうことなのかもしれない。SMAPもお互いの連絡先知らないとかいうし。横を見ると、あまりにもくだらない戦いをしている2人の愚者を見て、エンディが空条承太郎になっていた。

Source:ジョジョの奇妙な冒険第3章


なんやかんやでたどり着いた161.9km道の駅たいらだて。マッキーも正しいルートを経由して合流。ただいま21時35分。スタートから28時間35分。もう眠気も限界だったため、一通り補給とロキソニンを処方した後は、20分ほど爆睡。この頃には、もう寝ても寝ても眠いという、至極当たり前の状態になっていた。ここでしっかり寝て、そしてふるさと体験館へ。そう思っていたら、マッキーが「ちょっとキツイから先いってますわ」と行ってしまった。マッキーなりに自分が末期であることを悟っていたんだと思う。今ここで寝て体力を回復させるよりも、皆に遅れを取らないように少しでも先に進むことが、ゴールにつながる、と思っての行動だったらしい。結果的に、これがマッキーと過ごす最後の瞬間となった。


***
退かぬ、媚びぬ、省みぬ!
我が生涯に一片の悔いなし!

羅王
 



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