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みちのく津軽ジャーニーラン266km完走記 その5 断固たるゴールをするためのダンコたる作戦

ダンコたる勝利を呼び込む作戦はコレだ


ついにスタートした。読者の皆さん、前置きが長くて済まんかった。幾人からも「まだスタートせんのか?」という問い合わせがあったが、ご存じの通りすべて無視してここまで来てしまった。この完走記を完走するには10話ほどを要するつもりなので、食べかけのカップヌードルカレー味をそっと置いて、気長に付き合ってほしい。長いレースなので、完走記も長くなるのは当然だ。

スポーツエイドジャパンがウェブ上で公開した大会概要が以下。弘前市から始まり、晴れていれば北海道が遠くに見える龍飛崎を回り、なんだかんだと弘前市に戻ってくる。序盤になだらかな坂、中盤に激坂があり、それ以外はわりと平坦な道が続く。道中、地元の人に「どこから来たの?どこまで行くの?」と聞かれることはよくあるのだが、「弘前市から龍飛崎までの往復です」と言うと、「はぁ?」と返ってくる。大丈夫、俺たちもそう思っている。

コース概要および高低図
関門一覧

なお、上記は事前に公開されていたウェブ上の資料であり、実際に送られてきたものは関門時間が少し変わっていた。当初記載されていた関門が厳しすぎるとのことで、幾人かの参加者女史が館山会長に吼えまくったらしい。その姿はさながら、ジュラシック・ワールドに出てくる最大最強最狂の肉食恐竜、インドミナスレックスのようだったという。。。
※インドミナスレックス=最強の肉食恐竜、ティラノサウルスを母体に色んな恐竜のDNAを交配して作られたキメラ型恐竜。当然、ティラノサウルスより強い。

館山会長に関門時間の変更を要求する女史達のイメージ図 実際の姿とは多分異なります

具体的には下記の変更があった。

(拠点名、関門時間)
49.5km 日本海拠点館 0:50(30分繰下げ)
95.5km 鰊御殿 9:10(20分繰下げ)
125.9km 龍飛地区コミュセンター 16:10 (20分繰下げ)
181.7km ふるさと体験館 2:50(20分繰下げ)
245.6km スポーツプラザ藤崎 16:10(20分繰下げ)
266.4km ゴール 20:00(変わってねぇ!)

結果、前回より3km増えた分に関しては、関門時間は間を調整したものの合計時間は変わらないという、ギリギリランナーには死活問題中の死活問題がそのまま残ることとなった。3kmってね、普段走る分には大した距離じゃないの。でもね、こういうレースの最終盤の3kmって、山王工業のフルコートゾーンプレスを受け続けて後半開始3分で20点差をつけられてボロボロにされた湘北の三井君が、そこからディフェンスのスペシャリストの一之倉君にスッポンディフェンスを受け続けるぐらい疲れるのよ。


断固として51時間で266kmを完走するためには、なるべく前半に貯金を作らねばならない。そして、少しでも多く睡眠をとらねばならない。どこかの大レストポイントでは90分程度寝たい。とすると、とにもかくにも前半をいかに計画的に前倒しにできるか、が勝負となる。微分と積分、線形代数、量子物理学を駆使して導き出したダンコたる作戦は、以下の通りとなった。

22.4km 嶽温泉:3時間(1日目20時)
49.5km 日本海拠点館:7時間(2日目0時)
95.5km 鰊御殿:15時間(2日目8時、40分休憩)
125.9km龍飛地区コミュセンター:21時間(2日目14時、90分休憩)
それ以降:気合!

決まった。どーん。龍飛コミュニティセンターまで21時間で到着、22時間半で出発できれば、残り141kmを28時間半(キロあたり12分7秒)使える。一般参加者は大レストポイントとなっている95.5km鰊御殿と181.7kmふるさと体験館で睡眠を取ることを想定していると思われる。が、鰊御殿後の龍飛崎が激坂なので、休んでても休んでなくてもどうせ走れないであろうことと、ホテルを延長してスタート直前まで寝る作戦を採っていたこともあり、20時間程度であれば動き続けることができるのではないかという算段が立っていたことから、

第1睡眠:125.9km龍飛地区コミュニティセンター
第2睡眠:181.7kmふるさと体験館

とすることに決定した。この作戦は、振り返れば大当たりだったと思う。何があっても125.9km龍飛コミュニティセンターまではみんなで一丸となって21時間で!!!これだけを合言葉に、俺たちはスタートした。



運営側からのメッセージ


運営側からのメッセージも添えておこう。彼らが「こう走れば完走できますよ」という言葉を直接くれるわけではないが、関門設定にはそれが如実に表れている。数字から見えるメッセージを分析してみよう。

266km、51時間=全く寝ずに休憩もしなければ、キロ11:30で走れば(歩けば)ゴールすることができますよ、という風になっている。これを関門別に見てみると、「大体これぐらいのペースで走ってね」という推奨ペースが分かる。もちろん、下記ペースより速く移動しなければ、休むことは出来ないし結局完走にも至らない。なお、カッコで太字になっている部分は、俺が微積と一般相対性理論を使って導き出した、運営側からのメッセージだ。本当にそう思ってるかどうかは知らない。

0-49.5km 日本海拠点館 49.5kmを7時間50分
→キロ9分30秒
「スタート直後だし体力余ってると思うからこれぐらいのペースで頑張りや。てかこれぐらいで走れないとゴールなんかでけへんで?」

~95.5km 鰊御殿 46kmを8時間20分
→キロ10分52秒
「ゆうて、日本海拠点館までよう頑張ったのう。ちょっとゆっくりさせたるわ。鰊御殿でゆっくりしたいならもうちょい速く頑張ってな?」

~125.9km 龍飛地区コミュセンター 30.4kmを7時間
→キロ13分48秒
「最大の難所、龍飛崎への道や。ここはゆっくり進んでもろてかまへんで!どうせ走れんやろしな!Hahaha歯!」

~181.7km ふるさと体験館 55.8kmを10時間40分
→キロ11分28秒
「龍飛崎を終えて平坦な道が続くぞよ。ふるさと体験館でしっかり休みたいならちょっとギア上げてな?」

~207.5km 津軽中里駅 25.8kmを5時間30分
→キロ12分47秒
「ふるさと体験館で寝坊するヤツもおるやろ。そんなヤツがおっても関門を諦めなくて良いようになってるから、きばりや!」

~245.6km スポーツプラザ藤崎 38.1kmを7時間50分
→キロ12分20秒
「ここまで来たら気合や、気合。このペースなら歩いてもなんとかなるやろ。そう、ここまで頑張ったあんたにはどうしてもゴールしてほしいねん。」

~266.4km ゴール 20.8kmを3時間50分
→キロ11分3秒
「前回263kmだったのが今回266kmになってんけど、増えた3kmの分、吸収できへんかったからここのタイム減らすわ、ごめんな?しゃあないやん、インドミナスレックス女史達が序盤の関門きつすぎるて吼えまくったんやから、後半削るしかないやん。ここまで来たらあとちょっとやからなんとかなるやろ?てへぺろ。」

我ながら、一言も発していない運営側のメッセージをここまで読み取れる自分が恐ろしい。さぁ、行こうか。まだ慌てる時間じゃない。
 
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退かぬ、媚びぬ、省みぬ!我が生涯に一片の悔いなし!

羅王


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