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美術と映画と読書。ときどき懐メロも交えながら、ちょっとイイ話、ちょっとタメになる話をお届けします。

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    映画を観て感じたことを綴った記事をまとめました

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    本を読んで感じたこと、思い浮かんだことについて書いていきます。 ネタバレはあるかもしれないですが、あらすじは書かないつもりです。

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クールなのか野暮なのか~「ヘイル、シーザー!」

とりあえず、U-NEXTで配信されているコーエン兄弟監督作品の最新作はこちら。2016年公開「ヘイル、シーザー!」 バイオレンスもないからか、ストレスなく視聴できる。 が、とっかかりもないということなのかもしれない。 いろいろと風刺しているのかもしれないけど、ややドタバタの方に偏っている印象。言ってみれば少し野暮というか洗練されていないんだよね。「こういう外し方ってクールでしょ?」と言っている感じがして、なおさら。 主演のジョシュ・ブローリン、「ノーカントリー」では終盤

    • マジメに生きていても災難ばかり~「シリアスマン」

      今週もまだコーエン兄弟作品を視聴中。 今日は2009年公開「シリアスマン」 主人公が大小さまざまな災難に見舞われていくというお話。 不条理系とも見えるが、その災難のどれもがあってもおかしくないようなものばかり。ただそれが一度に降りかかってくるというもの。 この主人公の責任ではないものも多いのだが、なんとなくそのキャラクターから同情心が起きてこないのも我ながらおかしい。それはコーエン作品特有の”共感を呼ばないキャラクター”ということか。 それでユダヤ教信者の彼は、その助け

      • ちゃっかり妻と必死な夫~「オー・ブラザー!」

        ただいま、コーエン兄弟・集中視聴期間。 と言いつつ、あまりコーエン兄弟らしくないかもしれない作品を紹介してしまう。2000年公開「オー・ブラザー!」 コーエン兄弟というと(ここまで観た作品は)ヘンな登場人物と独特の間と不思議なテンポなどが特徴なのだが、本作は登場人物はヘンではあるが全体的に見やすい仕上がりになっている。 原案はオデュッセイア。そう聞くと本家「ユリシーズ」が思い出される。 本家と違うのは、妻が夫の帰りを待っていないというところ。 また物語の序盤からちょいち

        • ポルノ映画と侮ること勿れ~「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」

          タランティーノのお気に入りの作品とのことで、こちらを鑑賞。 1973年公開「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」 たまーにこうゆう映画も見たくなってしまう(笑) 見た後ほぼ100%後悔すると分かっているのに、見る前の期待感に引きずられて見てしまう。そして、案の定ガッカリするところまで、もうお決まりですな。 そうは言っても、なかなか見るべきところもあり。 主演の池玲子、当時20歳とは思えぬ貫禄。目力が良い。エロだけでなくちゃんと演技もしてるし、殺陣もそれなりにこなす。今日日の20歳のセ

        クールなのか野暮なのか~「ヘイル、シーザー!」

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          これぞタランティーノ~「デス・プルーフ in グラインドハウス」

          タランティーノ祭りも終盤に入り、あまり知名度の高くない作品を鑑賞。 2007年公開の「デス・プルーフ in グラインドハウス」 アクションものが好きなタランティーノ。そのアクションになくてはならないのがスタントマンの存在。そのスタントマンにまでスポットをあてるのが本作。 とはいえ、スタントマンの大変さを顕彰しようというマジメなものではなく、ただただおかしな人間とおかしな言動のシーケンスで埋められている。 大きく前後半に分かれていて、それなりのオチもあるのだけれども、上映時

          これぞタランティーノ~「デス・プルーフ in グラインドハウス」

          新たな映画の可能性を示した?~「ジャッキー・ブラウン」

          今はタランティーノ強化月間。 1作目から鑑賞中なのだが、あまり語られることのない3作目が地味に良い。 1997年公開「ジャッキー・ブラウン」 タランティーノというと、どうしても「レザボア・ドッグス」や「パルプフィクション」のようなバイオレンスや時間軸入れ替えや無意味なトークが売りと思われがち。これらの作品に比べると、本作はだいぶ派手さが控えめ。その分落ち着いて観られる作品である。 内容は2時間ドラマ的でもある。でも細かいこだわりや個性的な俳優陣のおかげでとてもクールに見え

          新たな映画の可能性を示した?~「ジャッキー・ブラウン」

          両女優だけでなくリチャード・ギアもね~「シカゴ」

          ミュージカルが苦手、という人は一定数いるようだ。それは普通の場面でいきなり登場人物が歌い踊り出すところに違和感がぬぐえない、という理由が大きいとのこと。たとえば「ウェストサイド物語」なんかはその類だと思う。 そういう意味では、本筋と歌やダンスの場面が何かしらの区切りがつけられているのであればまだ見やすいのだと思う。そんなミュージカル映画、2002年公開「シカゴ」 この作品での歌やダンスは、ロキシーの脳内の場面?心情や場面をミュージカルで表すことで観ているものに分かりやすくス

          両女優だけでなくリチャード・ギアもね~「シカゴ」

          グランプリ女優を堪能~「雨月物語」

          動画配信されてなくてなかなか観る機会がなく、やっと視聴できた作品。 1953年公開「雨月物語」 同時代の黒澤とも小津とも趣きを異にする溝口健二の作品。 ストーリーは、日本人ならさほど真新しさはないもの。きっと世界各地の民話にも同種のものはあったことだろう。そういった口承文学を映像化したのが新しかったのだろうか。 夢とも現ともわからない展開が珍しかったのかもしれないけど、本作の白眉はなんといっても京マチ子の妖艶な演技であろう。この人は当時の女優としては大柄でどちらかというと

          グランプリ女優を堪能~「雨月物語」

          ”ヒロシマ!ナガサキ!”と燥ぐのではなく~「オッペンハイマー」

          リアルタイムの作品を観ることは少ないのだが、本作は劇場まで足を運んできた。朝から飲まず食わずで3時間耐え抜いた! 様々な方がその解釈や感想を多く書いているので、細部には触れない。 豪華出演陣とのことだけど、最近の映画を観ない身としてはほぼ知っている出演者もおらず、やや浦島状態。 やはり3時間という長さは感ぜざるを得ない。が、それでも中盤からドライブがかかってきて、引き込まれていった。 オッペンハイマーや原爆の話題となると必ず耳にするのが、彼やアメリカ人が自責の念をどれだ

          ”ヒロシマ!ナガサキ!”と燥ぐのではなく~「オッペンハイマー」

          ”からまわり野郎”では?~「からっ風野郎」

          若尾文子を辿っていくと避けて通れない作品がある。 三島由紀夫主演・「からっ風野郎」である。1960年公開。 当時の三島はすでに文壇の寵児、彼の主な作品はこのころまでに著していたというから実に早熟な作家だったのだと思う。 そんな彼が、ある作品の評価が芳しくなく、心機一転映画界に飛び込んだのがこの作品だとか。 内容は、当時流行りのギャング・ヤクザもので特にどうということはない。三島の演技は、意外とサマになっている。と、見始めのころは思った。 でも、次第に違和感を覚えてくるのだ

          ”からまわり野郎”では?~「からっ風野郎」

          人間という種に対する問いかけ~「まあだだよ」

          黒澤明の最後の作品、「まあだだよ」 なんとなくいまいちな評判しか耳にしていなかったのだけど、配信が終わりそうということで今回視聴してみた。 レビュ―のいくつかにあったように、たしかにやや説教臭く感じる点はある。それにこの「先生」と「教え子」という関係も強調しすぎでは、と思わなくもない。 でもどこか懐かしく、羨ましくもある。なぜだろう。 やはり人間って集団じゃないと生きていけない。 ひとりひとりは違うとはいえ、それを互いに認めつつも一つの方向にまとまって進んでいかないと、た

          人間という種に対する問いかけ~「まあだだよ」

          屈折したアメリカ人~ジャック・ニコルソン「ファイブ・イージー・ピーセス」「さらば冬のかもめ」「恋愛小説家」

          U-NEXTの配信終了が迫ってきている映画をせっせと視聴しているのだが、奇しくもジャック・ニコルソン主演映画が続いたので、その紹介を。 1970年「ファイブ・イージー・ピーセス」、1973年「さらば冬のかもめ」、1997年「恋愛小説家」 ジャックの演技は、よく言えば一貫していてブレがない。悪く言うと、キャラがほぼ同じ。こうありたいという思いはありつつそれができず悪態をつく、癖のつよい、鬱屈したキャラである。 彼がその名をあげたのは「イージー・ライダー」の弁護士役あたりから

          屈折したアメリカ人~ジャック・ニコルソン「ファイブ・イージー・ピーセス」「さらば冬のかもめ」「恋愛小説家」

          昔々ハリウッドでこんなことがあったとさ~「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

          タランティーノ監督は次の作品が10作目となり、それで監督引退を表明しているのだが、現時点での最新作がこちら。2019年公開「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」 ”ワンスアポン~”は、「昔々、○○であったところでは・・・」という決まり文句なのだが、似たタイトルの作品もいくつかあって。 これは”~アメリカ” これが”~チャイナ” ほかにもまだまだあるようだが。 いわゆるシャロン・テート殺害事件の頃のハリウッドの空気感を描いている映画になる。 60年代終わりと

          昔々ハリウッドでこんなことがあったとさ~「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

          やっぱり松田聖子しか思い浮かばないよね~「青い珊瑚礁」

          昔の歌謡曲で映画のタイトルを拝借していていて当時の人からはバレバレなのだけど、今となっては曲だけが記憶に残っているというものも少なくないようだ。松田聖子がスターダムに駆け上がることになったきっかけが「青い珊瑚礁」なのだが、これも元ネタとなった映画があった。1980年公開「青い珊瑚礁」 若い男女が無人島に流れ着いて、そこでたくましく成長していくというお話。最後は無事に助けられるのだが、10年以上も無人島で生活をするというタイヘンなお話なのだ。その間に男女はお互いを意識し始めて

          やっぱり松田聖子しか思い浮かばないよね~「青い珊瑚礁」

          若尾文子にメロメロ~「青空娘」

          1950年代、日本でもオードリー・ヘップバーンの人気がすごかったとのことだが、いやいや日本にもこんなキュートで清楚な女優がいたではないか。それは若尾文子。今回鑑賞したのは、1957年公開「青空娘」 この作品の彼女に、オードリー・ヘプバーンを観るのは自分だけだろうか。沢口靖子にも似ているかも。 ストーリーは、ほぼシンデレラ。 継母や姉たちもほんとに憎たらしくて、観る者も主人公に同情をそそられる。何て言うんだろう、本当にありがちなシチュエーションなのだけど、それだけに心底憎た

          若尾文子にメロメロ~「青空娘」

          案外しっくりくる邦題~「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」

          どこかにも書いた気がするけれど、日本ではもはや廃れているが海外映画では文芸モノで何年かに一度ヒット作が出てくる。若草物語、ももはや何回映画化されたことだろう。現時点でその最新作がこちら。 2019年公開「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」 なお原題は、Little Women である。Story of My Life ではない。どこから出てきた言葉なのだろう。若草物語でいいじゃないか!と思っていたら、どうもこの「若草物語」という邦題に対しても批判の声があるとか

          案外しっくりくる邦題~「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」