見出し画像

ホテル・カリフォルニア/イーグルス Hotel Carifornia / Eagles

高校に進学したお祝いに親戚のおばさんがエレキギターを買ってくれた。
楽器屋で選んだのはヤマハの8万円のレスポール・スタンダードタイプ。
チェリーサンバーストで美しい色をしていた。(この頃にはジミー・ペイジが好きだったのでこれ以外考えられなかった)
それからヤマハの15ワットのギターアンプ。
当時はギブソンなんていうメーカーは知らなかったし、楽器はH市駅前のヤマハ楽器店で買うものと思っていた。
とにかく嬉しくてしょうがない。

家に帰ってさっそく弾こうとしたが何もわからないのでアンプのボリュームをフルテンにした。
ものすごい大きな音が出てびっくりした。
部屋のガラスがビリビリと音を立てた。
これじゃ近所の人たちに「あそこの息子はエレキを弾いて不良になった」と言われてしまう。田舎だからね。そういう配慮は必要なのだよ。
少しボリュームの調整をして自分の部屋の中がいっぱいになるぐらいの音量で弾くことにした。
ベッドに寝転ぶ時もギターを持ってペンペン弾いた。
夜は愛おしくて抱いて寝た。
なんだか知らないけどすごいぞ俺。
自信みたいなものが湧いてくる感じだった。
俺は無敵だ。
この世界は俺の物だ。

当時はオール・ジャパン・ポップス20でせんだみつおがDJをやっていた。
「今週の〇位もこの曲!長いなーイントロが!でもいい曲、これで〇周連続の〇位です。ホテル・カリフォルニア、イーグルス!」

どこで手に入れたのか忘れたが、音楽雑誌で楽譜を見つけてきて弾きまくった。
カポ7のイントロとギターソロ。
ソロを弾いていると父親が
「お、得意のやつが出たね!」
などと言って冷やかしてきたりした。
誰かと二人で最後のフレーズをハモりたい。
でもまわりにエレキギターを弾くやつがいない。
だって田舎だからね。
いつしかそれが夢になった。

当時家にはステレオとモノラルの2台のラジカセがあった。
モノラルのラジカセにギターを弾いて録音し、その録音を大きな音で流しながらギターを弾き、もう一台のステレオのラジカセで録音する。
この多重録音を自分で開発し、初めてレコーディング(笑)したのが「ホテル・カリフォルニア」だ。
このころはMTRなんて無かった。
みんな自分で工夫してなんとかしてきたのだ。
ただし2台のラジカセのテープスピードが微妙に違ったらしく、音程が少しづつずれていき、コーラスエフェクトがかかったような変な音になっていた。
しかもリズムは無いのでタイミングも合わず、少しづつズレてしまい、わけのわからないボワーンとした感じになった。
けど俺は大満足だった。
いっぱしのミュージシャンになったような気がしていた。

いつかカリフォルニアに行くぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?