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ティアーズ・イン・ヘヴン/エリック・クラプトン Tears In Heaven / Eric Clapton

F原さん(俺の名字になったので今後は「妻」と表記)と結婚してアパートを借りて、一緒に住んでしばらくすると子供ができた。
二人で大喜びして産まれてくるのを今か今かと待っていたが、ある時病院に呼び出された。
どうも気になる影があるという。
地元の大学病院で検査を勧められた。
検査の結果、お腹の赤ちゃんの腎臓に水が溜まっていることが分かった。
医者が言うことにはちゃんとお腹の中で育たないかもしれない。
もし育っても産まれてこれないかもしれない。
産まれてきても重度の障害が残る可能性があると伝えられた。
ショックで言葉が無かったが、とにかく見守るしかなかった。

出産予定日近くなり、入院して出産に臨んだが残念ながら死産だった。
赤ちゃんはお腹の中で亡くなっていた。
二人ともかなりダメージを受けた。

しばらくは友達や家族が様子を見にきて慰めてくれたが、立ち直るのには時間がかかった。

一週間ぐらい経って、お腹の中の赤ちゃんの腎臓に溜まった水を開腹しないで抜く手術が日本で初めて成功したという新聞記事が掲載された。
どうやらウチと同じ症状の子が助かったようだ。

良かった。

医学の進歩は同じ苦しみを抱える人たちを間違いなく救ってくれている。
ウチはタッチの差で間に合わなかったが、こんな悲しみを味わう家族が減るのはいいことだ。

妻はどうしても子供が欲しくて次の年にまた妊娠した。
前回のことがあったので少し怖かったが二人で見守るしかなかった。
今度は無事出産できた。

嬉しかった。

俺はちゃらんぽらんに生きてきたけど
「この子だけはどんなことがあっても守ってやらなければならない」
と強く思った。

その後しばらくして、クラプトンがティアーズ・イン・ヘヴンを発表した。
彼もまた子供を失っていた。
静かでアコースティックな曲が胸に刺さった。


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