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YUKIのWAGONに乗って

 
 ずっと好きだったけどなぜか今まで行こうと思わなかった、YUKIのライブに行きました。半年前、日本武道館で行われる20周年ツアーの最終日のチケットをふと思い立って取り、とうとうその日がやってきました。ライブに行くのは最終日の1日だけでしたが、今日と明日有給を取り、九段下にホテルの予約を取りました。そしてライブに行く日のお昼には初めてネイルの予約も取りました。1人で行きます。本気だったからです。

 当日を迎え、池袋でネイルをしてから神保町でカレーと焼きりんごを食べました。ネイリストさんは18年飼っていた犬が昨日死んでしまったらしいです。カレー屋の店員さんはドラゴンボールの天津飯みたいでした。カレーは頼んで5秒くらいで出てきました。本気です。

 そして17時30分、開場と同時に武道館に入場しました。YUKIのファンの人達を見るだけでも泣きそうでした。席はスタンド2階の真ん中あたりでした。
 ここで気が付いたのですが、私はYUKIのライブ映像すら見たことがありませんでした。Mステと紅白に出たら見るくらいでした。10周年のアルバムでライブの音源のCDは聞いていましたが、ライブを見るのは本当に初めてでした。

 18時30分ジャスト、会場の電気が落ちてアニメの映像が流れ始めました。アニメでYUKIの20年を振り返るというやつでした。私はもうすでに泣いていました。みんながステージに向かって手を上げています。手を上げたりお客さんが叫んだりするライブに来たのは本当に久しぶりでした。映像が終わりYUKIが登場しました。

 YUKIが歌っていました。YUKIは変だけどかわいい衣装を着て、本当に大きい声で歌っていました。最高でした。YUKIが両手を伸ばしてアラレちゃんみたいなポーズをして歌いました。それがなぜか琴線に触れて泣きました。ていうかずっと泣いてました。もう、途中で泣き疲れて帰ろうかと思いました。でもプリズムで、YUKIの声がデカ過ぎてちょっと笑いました。凄すぎです。

 星屑サンセットあたりで思い出したことがありました。それは、私が今よりもっと寂しく惨めに生きていた10代前半、居場所はYUKIだけだった時期があったということです。YUKIの曲に、誰かや自分を投影することはありませんでした。ましてやYUKIになりたいなんて思ったことはありませんでした。YUKIの曲を聞いている時、そこにはYUKIと私しかいませんでした。
 YUKIの曲は、不安を分かち合ったり、共感できて悲しみを癒してくれたりというものとは少し違いました。YUKIは愛に満ちて、ありのままに、強く生きる様を見せてくれる、母であり姉であり近所のお姉さんであり、美しいモンスターでした。(ちなみにYUKIはうちの母親と全く同じ生年月日でした。)
 私にとってYUKIは、「好きな歌手」「かわいい人」という生ぬるい言葉だけで言い表せるような人じゃありませんでした。   
 megaphonicというアルバムの曲を聞くと、中学の時に無料だからみたいな理由で、駅前の塾の夏期講習に行かされていたことを思い出しました。今思えばたいしたことないし無料な訳ないと思いますが、その時はもう人間関係が出来上がってるクラスに1人で行かなきゃいけないのが本当に嫌でした。塾に行く車の中、何回もmegaphonicのアルバムから曲を再生しました。自分に劣等感がずっとあったからか、この頃友達と心の底から笑いあうことも出来なかった気がします。この世でこんなに寂しく1人で生きているのは自分だけだと思っていました。多感です。家族も友達もいたのに、ヘルプミーとずっと叫んでいました。清竜人です。そんな中、私はYUKIに救われていました。

 ライブの話に戻りますが、メランコリニスタの「メソメソしてる君に歌う」という歌詞の時、YUKIがこちら側のスタンドを見て歌っていました。その時私はすでに泣いていましたが、さらに鬼のように泣きました。まさに今までの人生、メソメソしてる私にYUKIは歌を歌ってくれました。ふくろうずの内田万里が同じ傷を負って一緒に落ちて泣いてくれる人だとしたら、YUKIは地の底に落ちている自分を笑って引っ張り上げてくれる人でした。ちなみに、私が死ぬ瞬間に聞きたいのは「あおぞら」という曲です。
 ライブ中、YUKIは何度も自分のことを「スーパースター!」と言いました。「みんな、スーパースターに会いにきたんでしょ!?」そして「YUKIのワゴン、乗りたい!?」とYUKIが叫び、WAGONが始まりました。スーパースターのYUKIはずっと昔から、私やファンの人たちみんなのことをワゴンに乗せて走り続けていました。

 最後のMCでYUKIは「みんなこの日のために現実頑張ってるよね。YUKIにはわかる。みんながどんな顔してるのかわかる。見えてるよ」と言ってくれました。優しい声でした。泣きました。本気で泣きました。物心ついてから、多分この夜が一番長時間連続で泣いてました。一人称が「YUKI」なことに、本当にグッときました。最後に「鳴り響く限り」という曲をやってライブは終わりました。泣き過ぎて、帰り道も鼻水が止まりませんでした。ローソンでからあげクンとビールを買ってホテルに帰りました。そこで今これを書いています。

 YUKIの20周年を一緒に祝えて本当によかったです。私はこれからもYUKIのワゴンに乗り続けると思います。このライブのDVDも買います。20周年本当におめでとうございます。そして今まで、本当にありがとうございました。心の底から大好きです。

おわり

 次の日の朝、ホテルを出ると晴れていました。顔がすごい浮腫んでいました。昨日のネイリストさんも、泣き過ぎて目が腫れたと話してくれたのを思い出しました。死んでしまった犬の火葬が今日らしいので、晴れてよかったなと思いました。

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