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【Dontae Winslow】カマシ・ワシントン×ドンテ・ウィンズロウ【対談】

カマシ・ワシントンの新作でトランペットを吹いている、いま要注目のミュージシャン、ドンテ・ウィンズロウ。

今回はカマシのyoutubeチャンネルで公開されているドンテとの対談をすこし翻訳していこうと思います。


ドンテって誰?という方はまずこちらからどうぞ。


以下、カマシとドンテの対話です。


カマシ(以下K): 今日は素晴らしいブラザーであるダンテに来てもらいました。ダンテは教育者でもあり、体系的なミュージシャンでもあり、常に自分自身のやっていることを理解していますよね。まずは少し自己紹介してもらえますか。

ドンテ(以下D): オーケー。ドンテ・ウィンズロウ、作曲家でトランペッター、夫であり父、愛に生きる人間で結婚生活は24年続いている。第一目的はいつだって楽器を通して愛を広めることだ。

ボルティモアでジョン・ホプキンス大学を卒業してLAに移った。クラシック音楽をやっていたけどLAではポップやR&Bのバンドでツアーもした。カマシと出会ったのはクラシックのオーケストラで。それから一緒に演奏するようになって、俺のバンドに加わってもらったりしたね。

カマシから一番に感じたのは愛、ブラザーフッドで、東海岸から西海岸に来た俺にとっては大きかった。カマシと一緒に演奏するっていうのは創造的な自由を解き放つことで、アンサンブルの中にジャッジがないから自分を開放することができる。

カリフォルニアに20年住んで一緒に演奏してツアーしてファミリーとして共に過ごしてきた。小さなクラブでも世界的なヴェニューでもやった。俺たちは一緒にローリン・ヒルとツアーもしたしラファエル・サディークともたくさんやった。

世界中いろんな人たちの前で音楽をやってきて、いま自分で演奏したり曲を書いたりするっていうのはどこにいっても楽器を通じて愛を広めるっていうことなんだ。第一の目的はいつも誰かに触れて、癒すこと。トランペットを通じて息を吹き込んで、誰かが影響を受けて鳥肌が立つようなことがあったらそれがベストミュージックだよ。

K: 初めてドンテを聴いたのは、ゲイリー・バーツのステージで演奏してた時でしたね。

D: そうそう、何歳だった?

K: 14とか15かな。違う、15か16だ。その頃にはもうサックスを吹いていたけど、それより前はクラリネットでしたから。

面白いのは、ぼくが一緒に演奏するようになる人たちっていうのは、まず知り合ってからその後で一緒に音楽を作り始めるようになるっていうことです。音楽よりも先にまず人として出会う。ローリン・ヒルの時もそうでしたし、ゲイリー・バーツの時も「ちょって待って、あの時ゲイリー・バーツの横でトランペットを吹いてラップしてたやつか」って感じでしたよね。

D: あれはワールドステージだったよな?(*LAの有名なライブハウス)あの夜のことは覚えてる。俺はボルティモアから出てきて新しい音楽を学びたかったのに1940年代のビバップなんか!って思ってたよ。

K: また別の夜にぼくたちは偉大なるアストル・ピアソラの曲「Prologue」を演奏しましたね。キャメロン・グレイヴスとスタジオで試した時はゆっくりやってたんだけど、ブランドン・コールマンが入ってきてドラムンベースを流し始めてそれだって思ったんです。

それで今度はマイルス・モズレーの友達のタンゴダンサーと一緒にやることになってタンゴ音楽のオーガナイズもやってくれたんです。この曲はピアソラが書いたより大きな曲の一部分なんですが、メロディを聴いた時にとてもクールだと思って。わかるでしょ、よりきちんと作曲された楽曲だとメロディが際立って聴こえる瞬間があるんです。マイルスも体系的に学んだミュージシャンで何を忘れることもない人だから、これをやろうってなった時に彼しか書ける人がいなかったんです。

それでトニー・オースティンとロナルド・ブルーナーをスタジオに連れてきてドラムを叩いてもらってドラムンベースっぽく聴こえるようになって、ドンテに吹いてもらおうと… あなたはまずこの曲のリズムを聴きますよね。曲に取り掛かってソロを吹く前に、何を考えますか。ぼくに何か尋ねたかったか、そんなことは関係ないのか…

D: 俺はいつもオープンにしてる。ソロを吹く時にどんなリズムが来てもいい。だけど、あのドラムンベースはボルティモアクラブを思い出したよ、グッグッグッって感じでテンポも130で。俺は(*ボルティモア出身だから)高校の頃からそういうテンポとヴァイブでソロを吹いてきたんだ。即興でやる音楽のほとんどはこんな速いテンポでやらないから、チャンスがあったらやってやろうと思ってたんだよ。

K: こういう感じで16分の3連符で… それともうひとつ好きなのがこうタッタッって…

D: アンダーラインだね。

K: この曲を演奏するのが好きなのは、半分のテンポでも倍速でもドープになるからなんです。

D: 俺のソロも半分にスローダウンするところがある。ぜんぶ速くやるわけにはいかない。

K: 面白いのはそれが自然に起こったっていうことですね。すべて事前に計画した通りですって言えればよかったんですが。ダンサーも半分のテンポで踊ってるんですよね。半分か、1/4くらいで身体を揺れ動かしているんです。それを見た時にダンサーにはぼくたちと同じように時間に対する流動性があるんだと感じました。

リズムといえば、あなたが曲にアプローチする時、リズムっていうのは学んだものなのか、それとも祖先からの遺産であるブラックネスから来るのか…(笑)

D: (笑)俺は10歳の頃からラップを書いてるんだけど、好きなラッパーはビギーやナズで、彼らは小節をまたいでラップすることもあるし、それと同時に俺はストラヴィンスキーやマーラー、ムソルグスキーがオーケストラで小節を分割していくやり方も学んだ。だから常にオーケストラの音楽とラップミュージック、それに即興的な黒人音楽を比較しているんだ。みんながどうやってビートを捌いていくかを見ているし、(*ストラヴィンスキーの)「春の祭典」にはブンッカッブンブンカッみたいなぶぶんがあるけど俺には「Planet Rock」に聴こえるし…

K: 「Still D.R.E.」みたいなところもありますよね。

D: 間違いないよ。そうやって比較をしていくことで、音楽には分割されているものよりも共通しているもののほうが多いって気づいたんだ。気づいてない人もいるけれど、俺には分割線は見えない。それで自分に課しているのは、ソウルフルなリズムとインド音楽のように複雑なリズムを聴いて、そういったものをどうやって即興するスペースに当てはめていくかを考えることなんだ。俺のメンターであるロイ・ハーグローヴが言っていたんだ、「トランペットを吹いている時、おまえはドラムを叩いてるんだ」って。ジェイムズ・ブラウンがそういってたって誰かがロイに教えてくれたらしいんだ、ホーンを吹いている時はドラムを叩いているんだって。

K: トランペット奏者とドラマーにはスピリチュアルな繋がりがありますよね。もちろん違う存在ですけれど、同じ石材から彫られている像だと思います。偉大なトランペッターからは偉大なドラマーのスピリットを感じることができる。


以上、いかがでしたでしょうか。個人的にはピアソラの「Prologue」のビートアレンジにドンテがボルティモアクラブを感じていたり、ストラヴィンスキーの「春の祭典」からヒップホップを聴いていたりしたエピソードが興味深かったです。

それと、カマシ・ワシントンは新作に関するインタビューの中で結婚して子供ができたことの影響を語っています。直接言及しているわけではありませんが、愛妻家であり父親としても先輩であるドンテの存在はカマシにとって大きかったのではないかなぁと想像します。

これで訳したのはだいたい半分くらい。内容が気になる方はぜひ動画本編を見てみてください。


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