まちづくりに突飛なアイディアは必要ない
とある町の役場職員を10年近く勤めた中で、最も尊敬に値するビジネスパーソンは、残念ながら同じ職場にはいなかった。
隣の隣のそのまた隣のさらに隣の町、最小でも3つの町を経由しないと辿り着けない遥か彼方にその人はいる。
名を、真田さん(仮名)という。
きっかけは、担当美容師さんが同じことだった。
僕が就職した年、その美容師さんが「別の町の役場に真田さんって人がいるんだけど、すごく面白い人だよ」と話してくれた。同時期、真田さんにも「アルロンくんっていう面白い子が○○町役場に入ったんですよ」と話してくれていたらしい。
ちなみに、聡明な読者である貴台ならばわかっていると思うが、“面白い”というのは人を笑わせる能力に長けていることを指すのではない、ということを一応付け加えておく。
そんなわけで、真田さんと僕とは互いに認知していたわけだが、会って話す機会に恵まれず、実際に顔を合わせるまでに5年の歳月が過ぎていた。
初対面以降、会う頻度が劇的に増えたわけではなかったが、SNSでやりとりするなどの交流は続いた。
僕の退職後も、note記事を読んでくれたり、僕を自宅に招いてたくさん話したりと、以前にも増してお世話になっている。
とどのつまり、真田さんは、人柄も能力もコミュ力も抜群に高いイケオジなのである。
そんな真田さんの努力の甲斐もあって、真田さんの町の取り組みが全国ネットで放送されるなど、成果が広く認められるようになってきている。
もしかしたら新たな取り組みが評価され、他の自治体から一目置かれるようになったのかもしれない。
どうしたら、そんなに実績をつくることができるのか。
シゴデキな真田さんのことだ、誰にも思いつかなかったことをパッとひらめいたり、斬新なアイディアに挑戦したりしているのだろう。
凡人には到底成し得ないことなのだろう。
…と、僕は思っていた。
しかし、そうではなかった。
自身のSNSで、真田さんはこう語っている。
「まちづくりに突飛なアイディアなんて全く必要ない」
そう言い切れるのが、僕はとてもカッコいいと思う。
アイディアをぽんぽん生み出すのではなく、人の話をしっかり聴く。
できない理由を並べるのではなく、できる方法を探す。
そういった一見非効率なことを地道にやっていくことで、自ずと新たなステージに上がっていくのだろう。
なぜなら、まちづくりはそこに住む人々のためであり、ということはまちづくりの答えは住民がすでに持っているから。僕はそう考える。
「どんな町にしたいか」という目的がしっかりはっきりしていないと、なにをすればいいのかがわからなくなる。無暗に他の自治体の政策をまねても、住民ニーズに沿っていなければ意味がない。むしろマイナスにすらなり得る。
だから、確固たる目的を設定し、その目的に沿って行動することが大切なのだろう。
最終的に辿り着いたのが“突飛な”アイディアだったとしても、それは結果論に過ぎない。その過程は、地道な思考や傾聴といった行動の連続である。
全国の自治体職員各位には、ぜひとも真田さんの仕事ぶりを参考にしてみてほしい。退職した僕が言うのもなんだが。
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