【小説】神隠しの庭で、珈琲を 創作大賞2024 プロローグ
闇が最も深くなるのは、夜が明けるほんの少し前だ。瀬名朝来は、深い眠りの中で、夢を見ていた。真冬の雪嵐の夢だ。風が、ごうごうと鳴っている。分厚いダウンジャケットと、スノーブーツ、手袋を身に着けても、指先と足先が痛いほどに冷たい。両腕を交差して、顔を殴りつける風をよけながら、吹き溜まった雪を踏みしめ、吹雪の中をゆっくりと進んでいく。子供であれば吹き飛ばされそうな強さの風が、体全体に刺さるようだ。朝来の腰まである黒髪が、吹き付ける風で巻き上げられる。
朝来の二、三歩先を、一