樹立夏 | 小説•エッセイ|

樹立夏(いつき・りつか)と申します。 文筆業とは全く関係のないお仕事の経験を活かし、兼…

樹立夏 | 小説•エッセイ|

樹立夏(いつき・りつか)と申します。 文筆業とは全く関係のないお仕事の経験を活かし、兼業作家を目指しています。 エッセイや小説など、色々書きます。 夏ピリカグランプリ2022にて、『ピリカ賞』、春ピリカグランプリ2023にて、『Marmalade賞』を頂きました!

マガジン

  • 連載小説 白夜の海

    #シロクマ文芸部の企画として書いた、連載小説をまとめています。生きづらさを抱えた少女と青年のラブストーリーです。ぜひご一読ください。

  • あなたのための短編小説、書きます。

    お題を提供して頂き、提供者様のためだけの短編小説を書く企画、「あなたのための短編小説、書きます」にて執筆した記事をまとめています。

  • 小牧幸助文学賞応募作 二十文字の小説

    小牧幸助文学賞への応募作をまとめています。

  • #シロクマ文芸部 投稿作品

    小牧幸助様の企画「シロクマ文芸部」への投稿作品をまとめました!

  • 辻井伸行さんのピアノに恋して

    3分で読めるエッセイ【辻井伸行さんのピアノに恋して】をまとめております。大好きな辻井伸行さんのピアノを言葉で表現することを試みました。

最近の記事

  • 固定された記事

【小説】神隠しの庭で、珈琲を 創作大賞2024 プロローグ

 闇が最も深くなるのは、夜が明けるほんの少し前だ。瀬名朝来は、深い眠りの中で、夢を見ていた。真冬の雪嵐の夢だ。風が、ごうごうと鳴っている。分厚いダウンジャケットと、スノーブーツ、手袋を身に着けても、指先と足先が痛いほどに冷たい。両腕を交差して、顔を殴りつける風をよけながら、吹き溜まった雪を踏みしめ、吹雪の中をゆっくりと進んでいく。子供であれば吹き飛ばされそうな強さの風が、体全体に刺さるようだ。朝来の腰まである黒髪が、吹き付ける風で巻き上げられる。   朝来の二、三歩先を、一

    • 【小説】神隠しの庭で、珈琲を 創作大賞2024 第一話

       朝来とフサヱさんは、「常庭」の屋敷の玄関に立ち、森を見つめている。屋敷から十歩の距離にある桜の老木が、森からごうごうと吹いてくる風に、枝をしならせた。過ぎ去る風には、桜の香りが乗っている。桜の木の枝が、柔らかに風を受け流す様子は、フサヱさんの生き方と重なると、朝来は思っている。  常世の入り口であるこの常庭は、深い森に囲まれている。森は、現世に暮らす人間の往来を制御するための結界だ。フサヱさんは、森の神であり、結界の主である。  フサヱさんの視線の先には、「木の門」があ

      • イングリッド・フジコ・ヘミングさんに捧ぐ言葉【エッセイ #シロクマ文芸部】

         子供の日を前に、自分がどんな子供だったかを思い出してみる。我ながら、起伏の激しい登山道を歩むような半生だった。道を歩く上で、私の伴走者となった存在が、音楽だった。断言できる。音楽が無ければ、今の私はない。  去る4月21日。私の人生にずっと寄り添ってくれた、大好きなピアニストが、神様のもとに召された。    彼女の名は、イングリッド・フジコ・ヘミングという。  時を遡り、私と音楽との出会いから、暫し語らせてほしい。  私が子供だった時。あれは、10歳ころのことだったろ

        • noterの皆さんを呼ぶとき、コメント欄や本文に、「○○さま」と書いておりました。最近心境の変化があって、これからは皆さんを、「○○さん」とお呼びすることにします! 多少雰囲気は変わりますが、どうぞお見知りおきくださいね。  

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        【小説】神隠しの庭で、珈琲を 創作大賞2024 プロローグ

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        • 連載小説 白夜の海
          6本
        • あなたのための短編小説、書きます。
          16本
        • 小牧幸助文学賞応募作 二十文字の小説
          6本
        • #シロクマ文芸部 投稿作品
          22本
        • 辻井伸行さんのピアノに恋して
          4本
        • 城久間高校文芸部活動日誌
          3本

        記事

          昼休みに、心は微熱を帯びて、空へ羽ばたく#あなスパ

           すまいるスパイス、3周年、おめでとうございます!いつも私の耳と心を優しくもみほぐしてくださり、本当にありがとうございます。  下記企画に、心して参加させていただきます!  ③ゲスト、その他企画部門への応募作となります。  #あなスパ  さて、今日も昼休みがやって来た。 「樹さん、昼だよ~。実験終わった~?」 「いえ、今待ち時間で、昼明けの13時15分くらいから次の工程を始めます」 「よかった。樹さんいっつも昼休み潰しちゃうから。ちゃんと休んでよ~」 『ハンボウキダカ

          昼休みに、心は微熱を帯びて、空へ羽ばたく#あなスパ

          note創作大賞2024、今年は万全を期して応募したいです。以前書いたものをリライトするか、新しい物語を書くか、迷いどころです。

          note創作大賞2024、今年は万全を期して応募したいです。以前書いたものをリライトするか、新しい物語を書くか、迷いどころです。

          白夜の海 Episode 6 最終話 【#シロクマ文芸部】

          小説・エッセイを書いています、樹立夏です。 生きづらさを抱えた青年と少女の恋物語を書いています。 小牧幸助さまの下記企画に参加しております。  今回は、最終話となります。  引き裂かれた不器用な二人は、それでも歩き続けました。  この物語の結末を、どうぞ見守ってくださいませ。  これまでのお話はこちらから↓    花吹雪の中、深呼吸をした。風に舞う桜の花が、今年も光の季節の始まりを告げる。いつもより少し早く家を出て、私は会社に向かった。奏汰と出会った日から、十年が過ぎ

          白夜の海 Episode 6 最終話 【#シロクマ文芸部】

          職場がついにWi-Fiに対応しました!真っ先にnoteを開いて、すまスパに癒される至福の昼休みです。すまスパにはストレス緩和作用がありますね〜。仕事のストレスや緊張感もどこへやら。 ホッとするひとときをありがとうございます。

          職場がついにWi-Fiに対応しました!真っ先にnoteを開いて、すまスパに癒される至福の昼休みです。すまスパにはストレス緩和作用がありますね〜。仕事のストレスや緊張感もどこへやら。 ホッとするひとときをありがとうございます。

          まっさらな部屋とギフト #新生活20字小説

          封を切ると、君の香りが僕の時を巻き戻す。 <終> この20文字の小説は、小牧幸助さまの下記企画に参加しております。 #新生活20字小説 嗅覚は、視覚、聴覚よりも原始的な感覚なのだとか。 君の部屋で詰め込まれた封筒。 封を切ると、そこには、君が。

          まっさらな部屋とギフト #新生活20字小説

          白夜の海 Episode 5 【#シロクマ文芸部】

          小説・エッセイを書いています、樹立夏です。 生きづらさを抱えた青年と少女の恋物語を書いています。 小牧幸助さまの下記企画に参加しております。 今回は、物語の重要な部分となる回です。 かなり重めの描写となっておりますことを、ご承知おきください。  これまでのお話は、こちらからどうぞ!  風車を巨人と勘違いして突進したドン・キホーテの頭の中のように、この光景が全て妄想だったらいいのにと、願った。灰色の取調室は、朝なのに薄暗い。小さな格子窓から入る光は、空気中に舞う埃をちらちら

          白夜の海 Episode 5 【#シロクマ文芸部】

          激推ししていた、「成瀬は天下を取りにいく」が、本屋大賞を受賞しました!! ノミネート前から大好きな作品だったので、本当に嬉しい!! 受賞をきっかけに、より多くの人がこの作品の虜になるでしょう。 成瀬、最高!!

          激推ししていた、「成瀬は天下を取りにいく」が、本屋大賞を受賞しました!! ノミネート前から大好きな作品だったので、本当に嬉しい!! 受賞をきっかけに、より多くの人がこの作品の虜になるでしょう。 成瀬、最高!!

          ふたたび #新生活20字小説

          もう惑わないよ。春の一閃に瞳が震えても。 <終> この20文字の小説は、小牧幸助さまの下記企画に参加しております。 一つ前に作った20文字の小説の、続編となります。 #新生活20字小説

          ふたたび #新生活20字小説

          さいたさいたさくらがさいた【500文字のエッセイ】

          尊敬する画家、三岸節子さんの「さいたさいたさくらがさいた」という作品を初めて見てから、ずっとその虜になっています。 三岸節子さんが描いたのは、むせび泣くような、桜の老木です。 今、私は旅をしています。 旅先は、花盛りです。 奇跡的に様々な偶然が重なり、桜の季節の真っ只中に旅をすることができました。 しばし、私が見た桜の風景を共有させてください。 桜は、太古の昔から、人間に、「綺麗だね」と言われ続けて来ました。人間に植樹され、人間のそばに寄り添ってきた生き物です。 桜

          さいたさいたさくらがさいた【500文字のエッセイ】

          白夜の海 Episode 4 【#シロクマ文芸部】

          小説・エッセイを書いています、樹立夏です。 生きづらさを抱えた青年と少女の恋物語を書いています。 この小説は、小牧幸助さまの下記企画に参加しております。 物語も山場を迎えております。 これまでのお話は、こちらからどうぞ。  変わる時だ。今こそ、私は変わらなきゃいけないんだ。自分を制御する装置が働かない。私は、暴走していた。お小遣いは手つかずのまま、数か月分を財布の中に持っている。私たちは、電車に乗り、空港を目指した。このまま、どこか遠い所に飛ぶ。奏汰と二人で、綺麗な海を

          白夜の海 Episode 4 【#シロクマ文芸部】

          幾度目かの春 #新生活20字小説

          春の匂いがまた、錆びついた心の扉を叩く。 <終> この20文字の小説は、小牧幸助さまの下記企画に参加しております。 #新生活20字小説

          幾度目かの春 #新生活20字小説

          白夜の海 Episode 3 【#シロクマ文芸部】

           こんばんは、樹立夏と申します。今週も小説を書けました。  生きづらさを抱えた少女と青年の物語を書いています。  もしよろしければ、お付き合いください。  過去のお話は、このマガジンに収録しています。    始まりは、必ず終わりへとつながっている。六月二十一日金曜日。夏至の太陽を、雨雲が覆い隠している。教室の窓を流れる雨滴を、ぼんやりとした目で、ただ追っていた。遠くに稲光が見えた。この梅雨空のように、気持ちはどんよりと落ち込む。二週間前の日曜日から、奏汰は図書館に来なくなっ

          白夜の海 Episode 3 【#シロクマ文芸部】