(読書感想文)「黄色い家」
川上未映子著「黄色い家 (Sisters In Yellow)」読了。
600 ページある長編だったが、ほぼ一気に読んでしまった。
読みながら苦しくて悲しくて。頭が痺れるような感覚になった。
登場人物の生い立ちが悲しい
花、黄美子、蘭、桃子、琴美、映水 (ヨンス)。皆、出自に決して幸せではない事情があり、数ある選択肢ではなく、選ばざるを得ない道を生きている。
社会的にどうこうではなく、生きるため。生き抜くため。
いくら社会に福祉や支援する仕組みがあっても、そこには届かない。届きようがない。
銀行に口座を作ることさえ、身分を証明することさえ、学校に行くことさえ困難になってくると、そこに手を差し伸べるルートはなく、あるのはそのような人を狙って犯罪に誘う道があるのみ。
映水さんは言う。
その中で、花は同居人や同年代の友人を作っていくわけだが、そこの関係性も変化していく。
同じ痛みを抱えた者同士が寄り添って生きていけるほど甘くはなく、その中でも嘲り罵る場面が出てきて、女子同士のマウンティング含め、3人組ってこうなるよなと読んでてしんどかった。
経済的貧困
たまたま生まれた場所、時代、家族、周りに恵まれていたことは、自身でコントロールできるものではない。
そこの環境差異があるうえで、下剋上を為せるのは、それすらも恵まれた立場であると、主人公とその周りの事情を鑑みて思う。
必死に働いて貯めたお金を盗まれ、母親や友人の借金返済に使うことになる。母や友人自身はちょっと迂闊ではあっても大きな悪人のようには描かれず、彼らを追い込んで罠にはめる真の犯罪者や組織がある。
宮部みゆき著「火車」も思い起こされた。
フィクションとノンフィクション
出し子などの詐欺やカード偽造などは完全にフィクションの話ではなく、実際の詐欺や、花の母(愛さん)が嵌められたようなネズミ講のような組織絡みの犯罪は現在でも横行しており、より巧妙になっている。
SNS やインターネットの未成年の入口も多様になった。
まずは知識を付けて自衛する。そして自分の子供や親に伝える。
自分のリーチできる範囲で伝える。
そのうえで、社会構造として、経済的貧困に手を差し伸べる方法はあるのか、それにどう自分が寄与できるのか、考え続けていきたい。
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