【春弦サビ小説】春を待つ。
鏑木さんの詩とまくらさんの歌からの二次創作です。
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どこかよそよそしくて無機質なダンボールだらけの部屋。僕はそのドアを開け、一歩足を踏み入れた。
窓を開けてテキパキと掃除をすると、片っ端から荷物を解いては部屋に並べていく。自分のもので埋められていく空間にようやく居場所を感じた頃、すでに夕陽が窓辺に差し込んできていた。
窓を開けた二階から地上を見下ろすと、心地良い風に乗って行き交う人々の騒々しい息遣いが聞こえる。
「せっかく東京に行くのなら、もっと綺麗なところのほうがいいんじゃない?」
そんな母の声を押しのけて、僕はどこか慣れ親しんだ雰囲気のある下町で一人暮らしを始めた。
窓辺には、家から持ってきた花の鉢植えが一つ。
君は憶えているだろうか。君と仲良くなったきっかけとなった、あの青いネモフィラを。
あの頃何度も萎れさせてしまった僕に丁寧に育て方を教えてくれた君の柔らかな声が、今も脳裏に焼きついている。
まだ夕飯の買い出しに行くには少し時間があった。
僕は持ってきたギターを取り出して、控えめに音を出してみた。久しぶりだが指は覚えているようだ。
🎵
「いつだって迷路のような毎日だ
地図がなくても 旅は続くから」
君もまだ同じ空の下で、
旅を続けているのだろうか。
君のいた花屋はここからそう遠くはない。
だけど、まだ足がすくんでしまう。
たとえすれ違ったとしても、壁にぶつかって進めなくなったときも、この歌が君の空へ届くことを願っている。
どんな未来だって掴めるように、
いつまでも歌い続けるって約束したから。
君との約束があれば、このどうしようもない平凡な日々さえたまらなく愛おしいんだ。
ギターの音と歌声が夕闇に溶けていき、ネモフィラの花弁がほんの少し風に揺れた気がした。
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全然読み切れてない💦
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