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こういう映画をコンスタントに観たい...(ザ・クリエイター感想)

『ザ・クリエイター』(2023)ギャレスエドワーズ監督

ギャレスエドワーズ監督、高低差のあるものえお撮るのがうまい、平原の中に間隔を空けて聳え立つ岩山とその上を飛ぶでか飛行体、それを見上げる人。でかいものが際立ち方がとてもうまい。考えてみれば、ゴジラや特にローグワンから印象的だった。ニューアジアのロケーション、草原はローグワンに似ている。監督がでかいものを際立たせるにはどのようなロケーションが適切かをおそらく理解しているのだろう、でかいものが映っているカットは特に魅力的に見える。後半のノマドの中に出てくるよくわからんタコみたいな機械とか余りにもただの趣味っぽくて良かった。怪物とかでかい機械とか好きなのだろう。草原のシーンとても良い。
SF映画オマージュも見ていてとても楽しかった。あからさまなブレードランナー車(空飛ばせばいいのに)、ニューアジアの風景は80年代レトロ近未来的な東京ベースの街並み(というか建造物の並び方が渋谷...)。実際の街をベースに作っていることが伝わるし日本好きなんかなあとか思う。(パンフレットより、日本でロケ撮影したらしくこれも極端なとんでも日本にならなかった要因なのかと思う。「モンスターズ」では少人数で動きながら撮影地を見つけて撮るみたいなことをしていたそう。)記憶を思い出していく際の映像イメージもラ・ジュテ感があって良い。というか記憶から発言を再現したりする辺り、(ラスト演出のためのものかもしれないけど、)ごちゃつく原因になりかねない設定だけど多分SF好きだからいろんなことやりたかったんだろうなあというのが伝わってくるから良い。所々出てくるロボットは明らかにスターウォーズというか、隠す気なくて良かった。(パンフレット冒頭でもいきなりスターウォーズに触れている辺りもはやイメージが刷り込まれてるんだろうなあと思う。明らかにスターウォーズだけどあからさまでは無い、不自然なく溶け込んでてとても良い)
完全オリジナルSF企画をフランチャイズ企画が蔓延る昨今作るの難しいだろうなあと思いつつ、1本の映画の中で映画世界の奥深く、起こった出来事の真理まで辿り着く単発SFならではのスピード感とワクワク感を最近映画館で体験していなかった気がする。ラストの宇宙船の中の農地のカット、展開は容易に想像はつきそうなものだったが、一つの壮大な世界での壮大な物語の終わりが壮大なカットで壮大な音楽でそれを2時間ちょっとでやる!っていう余りに素直なパワー演出で良かった。
AIものではあるものの、明らかにAI、ロボットが人間的。寝ている時近づかれて(そもそも寝てるというのがなんか面白い)電源落とされたり、普通に壊されたら埋葬したり(「レディプレイヤーワン」のような非肉体的、メタバースのような世界が既に描かれているのにも関わらず壊れたら記憶も残らない)。(AIの話じゃなくても良いという批判もありそうだが)ここまでわざとらしく描写することで非人間的なものの人間性に強く愛着が湧く(猿や犬の描写もきっとそうでは)。冒頭でも書いたようなギャレスエドワーズ監督の機械や怪物に対して感じている愛着が物語から湧き出ているようでとても良い。単純にA Iものとしては物足りない部分もあるが、非人間的とされるもの達の物語(劇中でも「人間ではない機械だ」と言うシーンがあるが)として良い。これが結果として今の世界情勢と上手く結びた物語だと受け取ることもできる。2001年以降のアメリカ視点の反テロ系映画(もちろん好きな映画は沢山あるが)への批判性を結果として内包しているようにも取れてしまう。
ともかく映画館で観る壮大単発SFとしてとても良かったと思います。


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