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住宅の構造

今まで、多くの木造住宅で、構造計算が審査対象外となっていたことをご存じですか?
4号特例と呼ばれ、一定規模以下の木造建築物(2階建て以下の住宅はほとんど該当しています。)について、建築士が構造計算を行い、建築基準法に適合していれば、建築確認申請の際に、審査が省略されていました。
でも、一応、建築士が計算してくれていたんでしょと思うじゃないですか!?
審査が省略されるということの意味をはき違えて、構造計算をしなくてもいいと思っている建築家もいたようです。(私は、このような建築士に出会ったことはありませんが。)

建築基準法上の壁量計算

そもそも構造計算といっていましたが、正しくは、壁量計算。
壁量計算とは、木造住宅において、全体の壁(耐力壁)の配置のバランスを見る計算です。
建築基準法上の耐震強度は、現代で言う耐震等級1のことで、大規模な地震が来た際に最低限、家が倒れない、住んでいる人の命を守ってくれる性能だと言われています。
これだけ聞くと、十分な強度がありそうな気がしますが、実際は、大規模な地震が来ても、倒れていないだけで、壊れてしまう強度しか持ち合わせていないのです。
また、壁量計算って、壁量の配置のバランスを確認するものなので、全体のバランスが整っていれば、建築基準法の耐震基準に適合してしまうのです。
例えば、壁量計算のソフトがあれば、全てエラーを解消するだけで、パズルのように計算は完了してしまいます。
これって大変な問題で、構造を知っている建築家は、「上下で壁と柱の位置を揃える」とか「構造区画の四隅に柱を入れる」とかしっかりと考えて、間取りを設計しますが、営業さんが間取りを作成するハウスメーカーとか、勉強をしていない建築家が作る家では、最低限のルールを守っていないことが多いです。

構造計算の知識を持たない者が設計するとどうなるのか

壁量計算の結果は同じでも、構造設計の知識があるものが設計したよりも、壊れやすい家が出来上がります。
当然ですよね。
力の流れが理解できないと、一部の柱や梁に力が集中してしまい、壁量計算上問題がなくとも、強度不足になっているということが起こりうるのです。
木造住宅の4号特例の前提として、構造計算をある程度理解している建築士が壁量計算を行うということだと思います。
しかし、現状、構造計算の知識を持たない者が間取りを作っていることが多いです。(特にローコスト系ハウスメーカー)
現代においては、木材を手刻みすることはなく、梁の太さの計算もプレカット業者の丸投げしていることが多いので、多少、構造的におかしくても、ある程度の耐震性能は確保されていると思います。

変わる構造への意識

ここまで、建築基準法における木造住宅の4号特例について、話しました。
しかし、最近では、記憶に新しいところで言えば、能登半島地震。
私の住んでいる南相馬市でも東日本大震災やその後にも、大変大きな地震に見舞われています。
日本は、地震大国で、震災の度に、構造に関する議論されてきました。
ようやく、2025年の建築基準法の法改正で、木造住宅も構造計算所の提出が必須になります。(平屋等の一部は、従来通り、提出不要のままです。)
まだ、概略しか出ておらず、詳しい内容は、わかりませんが、審査の対象になるということです。

しかし、まだまだ構造に関する認識が低すぎるということを訴え続けている人がいます。
構造塾を運営する佐藤実さん。(勝手に構造の師匠と呼んでいますが、あったことはありません。)
構造塾という構造設計者を育成する会社を運営して、ユーチューブなので、構造の大切さについて訴え続けています。

全件、許容応力度計算を必須にすべき

と佐藤実さんは、訴え続けています。
私も建築にかかわる人として、この人の意見には、賛成です。

そもそも、許容応力度計算とは、簡単に言うと、梁や柱、1本ずつに対して、計算を行い、必要な太さや長さ等を計算する方法です。
ここで、少し疑問に思いませんか?

木造住宅って、梁や柱の太さは、計算していないの?

その通りです。

壁量計算では、梁や柱の太さを計算していません。
スパン表というもので、だいたいの太さを選びだしているだけです。
急に不安になりますよね?
でも、安心してください。
先ほども申し上げましたが、現代、構造材は、プレカットなので、プレカット図面を作成する際に、構造計算を行っています。

ちなみに、住宅の基礎(べた基礎や布基礎)については、建築確認申請の際に、提出すらしない書類です。
住宅の基礎って、家を支える大切な部分ですよね!?
ちゃんと計算すると、強度不足の基礎が多いだろうなと。

最後に、2025年の建築基準法の改正で、建築士が行う仕事が増える、言い方を変えれば、面倒な仕事が増えることになります。(構造だけでなく、断熱や消費エネルギーに関する計算も増えます。)
これに対して、反対する建築士もいるようですが、ちゃんと構造計算をしていない今までがおかしいと思いませんか?

本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
構造って、難しくて敬遠されがちですが、是非、皆様に知っていいただきたく、書かせていただきました。
今後、新築住宅を建てる方は、参考にしていただけたらと思います。

RIOアーキ南相馬

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