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【連続note小説】日向食堂 小日向真司7歳

誠司はたまの日曜日くらいが真司の相手をしてやろうと思った。
誠司は文枝と二人の息子を連れて近所の公園に出掛けた。
 
「真司、キャッチボールをするぞ」
家から持ってきたゴムボールを真司に投げてやった。
「ぼくはいいから、歳之と遊んであげていいよ」
「今日は真司とキャッチボールがしたい気分なんだ」
“俺といる時は気を使わなくていいんだぞ、真司”
誠司は心の中でそう思った。
 
二人はゴムボールでキャッチボールを始めた。
この頃は巨人の長嶋や王の全盛期だったから、親子はたかがキャッチボールにも熱が入る。
それに真司が意外にいい球を投げる。
“こいつ、筋があるぞ”
誠司も親バカの一人だった。
 
文枝に抱かれていた歳之はボールを目で追っていた。
ただボールを投げてそれをキャッチする。
こんな単調な遊びなのに、楽しくて仕方がない。
 
二人は時間を忘れてキャッチボールに没頭した。
これが真司と父の最初で最後のキャッチボールになった。


真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

<続く……>

<前回のお話はこちら>

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