時空警察 【二話】
キャラクター/登場人物
赤倉三來《あかくらみくる》
男。主人公。元々は山に捨てられていた孤児の施設育ち。
どこか捻くれていて、けれども根はまっすぐでわかりやすい性格。
16歳の高校一年生。
超能力 赤色(せきしょく)使い
赤色のものを操り、変形させることが可能。
琥珀島黄惺《こはくじまおうせい》
男。準主人公。中性的な顔立ちをしている。
警察庁対異時空対策 東京本部捜査第1課対異次元生命体第2班班長。
Aランクレンジャーで、いわゆるエリート。
17歳で赤倉の一つ年上。
超能力 黄金使い
黄色、または金色のものであれば創造、変容、操ることが可能
御蛇本白奈《おじゃもとしろな》
女。警察庁対異時空対策東京本部長。48歳。 Sランクレンジャー。
曰く、全盛期はSSランクレンジャーにも劣らない程の実力だったという。
追稲茶野芽《おいいなちゃのめ》
男。今年でアラフォー突入。37歳。オジサン。
警察庁対異時空対策東京本部に所属している事務員。
二話
2日前。
場所は警察庁対異時空対策東京本部本部長執務室にて。
時空規模の未来を少し先だけ予知できる機械こと未来観測探査機によって、今から2日後に時空の狭間から時空の狭間と現世が一瞬だけ繋がるという観測結果が出た。
ただこの探査機は異次元からの空間が現世に繋がるか、こじ開けられるか、もしくは閉まるしか分からないため何が起こるかは分からないし、そこにどれだけの異次元生命体がいるのかも分からない。
「いいか、今回空間が繋がる場所は長野県私立嵐山上高校、そして・・・また時空の狭間からの介入だ。」
「はい。・・・時空の狭間を使っていいのは時の力を自分で制御出来るか、コントロール出来る者だけ。それでも一般レンジャーが時空の狭間を使わねばならない時は、Aランクレンジャーからの承諾が必要。何故なら、我々が存在を認識して領域にしている唯一の異次元空間なのですから。」
・・・とはいえども、完全に領域しているわけではないのだが、と補足する。
異次元空間とは基本的に未知の空間だ。
それは時空の狭間もとい時止まりの空間でも同じこと。
そしてこの人類がいる地球は、異次元生命体にとって餌場のようなもので、時空の狭間は異次元生命体が唯一普通の人間を連れてこようとすれば連れて来れる異次元空間でもある。
こちらから時空の狭間に連れて行かれてしまった人を助ける手段はほぼ存在しないため、事前に空間が繋がるところを探知するぐらいしか出来ないのだが。
それでも例外がない限り、過半数の異次元生命体にとっては、己の身に馴染んだ次元から直接来る方が負担がないとされる。
「・・・琥珀島のコントロールが悪いとは思っていない。だが、最近はどうにも異次元空間から直接介入されるより時空の狭間からこちらへやって来る方が多い。」
真剣な顔をして真っ直ぐ見つめるこの女性は、現代における時空警察のトップ、御蛇本東京本部長。
部長椅子に座っている御蛇本に向き合う琥珀島は、その若さながらに既にAランクレンジャーだ。
そうしてその2人の茶湯にお茶を注ぐのがこの俺、追稲茶野芽(おいいなちゃのめ)。
今年でアラフォーになったオジサンだ。
普段は何をしているのかと聞かれれば、さっきの未来観測探知機の運用者である。
ついでに本部長こと御蛇本さんの小間使い。
内心苦笑いをするも、ただの事務員だというのに給料は高いからやめられないのは仕方ない。
俺の茶を飲んで、少し考えたフリをした琥珀島は口を開いた。
「ローグが時空の狭間に介入している・・・?」
「可能性はあるかもしれないな。とはいえ現代にいる一介のローグだけで出来るようなことではないだろう。」
ローグ、というのは超能力を持って悪事を働いている者。
一般的に超能力を持つ存在がこの国に1000人ほどいるとしたら、その4割がローグだ。
大半がそれほど強い超能力を持っているわけではないが、指名手配されている十数名はAランクレンジャーにも及ぶとされる。
「では過去か未来で、名が知られているほどのローグによる可能性がありますね。」
「それもそうだが・・・通常、時空の狭間は分からないことが多いが、分かっていることとして、ある程度の時代の間隔をもっている。お前も過去に行ったことがあると思うが、精々幕末までだろう?これによって絶滅した恐竜がこの時代に来ることはないし、超未来の人間がここへやってくることもない。例外を除けばな。」
「ですが、異次元生命体もそうだとは限りませんよね。アレは時空を飛び越えてやって来る。」
「・・・・・それはそうだな。」
渋い顔をした御蛇本に、琥珀島はもう一度お茶を啜る。
飲み方からお上品さが溢れ出ていて、流石は貴族出身のエリート様だと思った。
それにしてはやっぱり大人振っている節があって、そこが可愛らしくもあるのだが。
「もしかしたら、予言の時が近づいているのかもしれませんねぇ。」
ついつい口を挟んでしまったものの、2人ともこっちを見てくれて、御蛇本は険しい顔をする。
当たり、ってところだろうか。
「・・・一理あるかもな。」
「予言、というのは過去予言者トロワの?」
「ああ。そして私は茶野目の案によって一つ浮かんだ。」
「と、いうのは?」
「魔の三地域の護符が弱体化しているのかもしれない。」
「「!!」」
魔の三地域、通称ジャパニーズトライアングル。
有名なところだと世界ではバミューダトライアングルというものがあるが、いわゆるそれの日本版。
30年前にとあるSランクレンジャーが施したとされる護符の前に、江戸時代初期にとあるレンジャーもといその時代では巨獣討伐者と呼ばれる者が術を施していたが、それも弱まってきたのではないかと推測したらしい。
過去予言者トロワの書記はこの界隈じゃ有名だ。
世界の根幹に関わる未来の災厄がぎっしり書かれてある。
これは少なくとも平安時代からあるものであり、しかしトロワ自身は未来のレンジャーらしき推測がされている。
数秒の沈黙の後、一つ咳払いをした御蛇本は、改めて琥珀島に目を向ける。
「とりあえず、琥珀島はこれから2日後に着くよう長野県私立嵐山上高校に任務だ。」
「了解です。・・・では失礼します。」
そう言った琥珀島に扉を開けてあげれば、ぺこりとお辞儀をする琥珀島。
それがなんだか可愛らしくて、最近の若い子は礼儀正しいなあと俺の世代のレンジャーを思い出しては首を振ったのだった。
(アレと琥珀島を比べるのは可哀想だ。)
「どうかしたのか、茶野目。」
「いーえ、なんでもありませんよっと。」
そう言いながら茶湯を片付けていれば、御蛇本はむっと眉を顰めるも、再び書類仕事に戻った。
難しそうな顔をしている彼女がどんなことを考えているのか、俺には分からない。
そうしてやれやれとため息を吐いた俺もまた茶湯を持って執務室を出る。
「・・・過去予言、なぁ。」
そう呟いた俺は、東京本部のビルの誰もいない最上階の廊下を歩いて行ったのだった。
2日後、長野県私立嵐山上高校のとあるクラスで1人を残して生徒全員が行方不明となる。
そして同時に、警察庁対異時空対策東京本部に新人レンジャーが1人加わった。
「よろしくおなしゃーっす!」
続
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