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「こんなに手作りでやってるの!?」ー松本のカレーの名店「メーヤウ」店主が語る「りんご音楽祭 」【ココが変だよ、りんご音楽祭vol.2 前編】

長野県松本市で毎年開催される音楽フェス、「りんご音楽祭」。14年目となる今年は5ステージに拡張し9月23日−25日に開催決定。

そもそも、「りんご音楽祭」って?他の音楽フェスと何が違うの?フェスのHow toとは?……etc主催者のdj sleeperを中心に、その他の運営メンバーや、出演者へのインタビューなどを通じて、りんご音楽祭について紐解いていきます。お相手を務めるのは、2001年生まれのフェス初心者、長崎航平。根掘り葉掘り、りんごの魅力を探ります。

今回は松本のカレーの名店、「メーヤウ」の店主小山さんをゲストに迎えての収録。「りんご音楽祭」に長年出店者として関わりながら、近年は運営中心メンバーとしても関わりを持つ小山さん。運営側ならではの苦悩や、この「りんご音楽祭」にかける想いを伺いました。

▽カレーの名店「松本メーヤウ」

長崎:今回は松本で「りんご音楽祭」を作り上げている運営チームの方をゲストに迎え、それぞれの「りんご音楽祭」について語っていただこうと思います。

小山:よろしくお願いします。「松本メーヤウ」というカレーの専門店を経営しています、小山と申します。

長崎:「松本メーヤウ」はどういうお店なんですか?

小山:もともとは東京・信濃町にあるエスニックカレーの名店です。松本出身の全オーナーがそこで修行をして、暖簾分けとしてまず早稲田にお店を出して。それから松本に帰ってきて、できたお店が「松本メーヤウ」です。今からかれこれ30年前の話ですね。

長崎:へー!歴史が長いですね。

小山:元オーナーさんが店を譲る人を探していて、俺の親父に白羽の矢が立ったわけです。当時長野にはまだエスニックなカレーを扱うお店はほとんどなかったんじゃないかな。松本のカレー文化の先駆け的なお店ですね。

メーヤウのカレー

長崎:なるほど。そうしてお父さんが始めたお店を、小山さんが継がれたわけですね。

小山:そうです。高校卒業後に松本を出て関西に進学してから14年くらいは関西で暮らしていました。11年前松本に帰ってきて、親父の店を手伝い始めました。

▽「りんご音楽祭」主催者・dj sleeperも学生時代から通っていた

長崎:なるほど〜。それで、どうして「りんご音楽祭」のポッドキャストにカレー屋の店主が登場したかなんですが……。

小山:「りんご音楽祭」との関わりは、たしか7年前に「りんご音楽祭」にフードで出店したのが始まりですね。

長崎:「りんご音楽祭」が今年で14年目だから、始まってから半分くらいはもうずっと関わっているんですね。

小山:そうそう。そもそもなんで「りんご音楽祭」に出店したかというと、もともと主催のsleeperが信州大学に通っていた頃から、「松本メーヤウ」によくカレーを食べに来てくれていたんですよ。

長崎:へー!

小山:sleeperには、「りんご音楽祭」に地元のお店に出店してもらって、全国から集まる人に松本のお店を知ってほしいっていう想いがあったんですよね。もともと親父に出店のアプローチはしてたみたいなんですが、親父は「フェスに出店する」感覚がわからず、いい返事がもらえなかったみたいで。

それから、俺が松本に帰ってきて。もともと音楽が好きだったので松本で遊べるお店ないかなーと探しているうちに、sleeperのやってる「瓦レコード」に辿り着いたんです。

長崎:あぁなるほど、そういう出会いを。

小山:sleeperと話をしていくうちに、「えっ、メーヤウの方なんですか!?」ってね。それで、「りんご音楽祭」の話をされて、「出店しましょうよ」ってその場で誘われたんです。

長崎:その場で(笑)

小山:松本に帰ってきて間もなかったし、イベント出店の経験もなかったのでその場で判断はできなかったんですが、瓦レコードに通ってsleeperと話すうちに出店してみるのも面白そうだなと思うようになりました。

▽出店を決める前の年、お客さんとして「りんご音楽祭」に初参加

長崎:小山さんは、それまで「りんご音楽祭」に行ったことはあったんですか?

小山:出店を決める前の年に、はじめてお客さんとしてりんご音楽祭に行きました。会場のアルプス公園は、幼い頃から馴染みのある場所で。当時僕は二児の父だったので子供を連れていくこともあって。まず、見慣れた風景がこうやってフェス会場に変わるんだ!って衝撃がありましたね。

長崎:僕もこの間はじめてアルプス公園にいったんですが、本当に「気持ちのいい公園」で。あの場所がフェスの会場になるイメージが湧かなかったです。

小山:いい公園なんだよね。それから、僕の行った年はUAが出ていた年で。松本でUA聴けるの!? って衝撃でした。ORIGINAL LOVEの田島貴男も、ソロ名義で出演していたんですよ。学生の頃によく聞いていたアーティストが、松本の、アルプス公園でステージ立って歌ってる!すごい!って。

長崎:それはアツいですね……。

小山:実際に行ってみて、県外からのお客さんが多く、地域密着を目指しているフェスなのに、まだ地元からの出店者が少ないのもわかったんですよね。これはもったいないな、と思って。イベント出店の経験はほとんどなかったんですが、出店を決めました。それからは毎年出店しています。

▽コロナ禍の最中、深夜の電話「今から来れますか?」


長崎:なるほどー。小山さんは、今では出店どころかがっつり運営に関わっているんですよね?

小山:そうですね、気づいたら巻き込まれていたというか(笑)

長崎:他には何をされているんですか? 

小山:運営に関わるようになったきっかけは、2020年のゴールデンウィークですね。コロナが流行り出して営業自粛ムードになった頃です。「松本メーヤウ」も、全然お客さんが来なくなってしまって。市内で2店舗直営で営業していたんですが、1店舗は閉めちゃおうかと。そんな頃にいきなりsleeperから電話がかかってきて。

長崎: おお。

小山:「小山さーん、実はちょっと企画してることがあるんですけど、手伝ってくれませんか?」ってね。もう夜の11時で、俺は歯も磨いパジャマに着替えて、もう寝るだけ!ってところだったんだよ。「おお、いいよいつでも」って答えたら、「じゃあ今から来れますか?」って。

長崎:sleeperさんのその感じは想像つきますね(笑)

小山:「今から!?まぁいいよいくよ」って深夜に瓦レコードに行ったんですよ。それで話を聞いたら、「今、営業自粛で飲食店が通常の営業をできなくなってるし、外出そのものがダメみたいな空気になってるから、なんとかしたい」って。

▽「松本の飲食店をなんとかしたい!」テイクアウトマルシェのはじまり

小山: それで、当時金沢で「テイクアウトマルシェ」っていうのをやってるって情報をsleeperが掴んできてたんですよ。

長崎:テイクアウトマルシェ?

小山:空いている駐車場に飲食店のテントを集めて、ドライブスルーのお弁当屋さんをやるんです。金沢の「テイクアウトマルシェ」主催者が、全国でぜひやってくださいってそのフォーマットを公開していてね。

もともと自分は「松本カリーラリー」っていう松本のカレー屋さんを集めたスタンプラリーを5−6回企画していて。それの参加店が90店舗近くあったから、sleeperは「小山さんに頼めば飲食店を集められるんじゃないか」って思ったんだろうね。俺も、もうお店も閉めようとしてたし、面白そうだしやろっか!ってそれに乗っかって。電話があってから5日後には開催してました。

長崎:5日で!すごいスピード感!

小山:すごかったっすね。今やらなくていつやるの?みたいな勢いがあって。

▽「困っている人をなんとかしたい!」想いを形にしていく推進力


小山:ちょうどコロナでイベントもなかったから、市の体育館が空いていてね、駐車場を借りて、飲食店を集めて告知して、ドライブスルーの車の導線を作って……。それで当日会場に行ってみたら、運営しているのが「りんご音楽祭」のスタッフだったんですよ。

長崎:へー!

小山:たぶん、当時sleeperの頭の中では、瓦レコードのイベントもできないし、そこに出てたDJやスタッフの仕事も無くなっていたから、そういう人たちに働く場を提供しようっていう想いもあったんですよね。

長崎:なるほどなぁ。

小山:告知のデザインやポスターを作ってるのも、「りんご音楽祭」のデザインチーム。会場の設営もそう。それから、FMのトランスミッターを使って電波飛ばして「りんご音楽祭」も出演してるDJが音楽流す、みたいなね。

長崎:うわぁ、それめちゃくちゃいいっすね。

小山:コロナでなくなっちゃったイベントだとか音楽周りのアーティストやスタッフを使って、こんな形でなにかを一緒にできるってすごいなって思いましたね。

長崎:テイクアウトマルシェのことはsleeperさんからなんとなく聞いてたんですけど、音楽やってる人がなんで飲食のイベントを?って思ってたんです。そういう背景だったんですね。出店していた人、運営の人、困っている人をなんとかしたいっていう思いがあったんだ。

小山:sleeperと、遊び以外で仕事として一緒になにかやるのはそれが初めてだったんです。発想もそうだし、時間もない中で、どうせなら人が集まるGWにぶつけたい! っていう推進力。アイディアを、ぐっと形にしていくパワーを感じました。

▽出店者から運営側へ。関わり方が変わっていった

小山:もともと自分も関西では広告系の仕事をしていたので、スキルやノウハウもあった。培ってきたスキルを生かして形にできたのもなんだか嬉しかったし。これからもなんかできそうだね、って運営に関わるようになっていきました。

長崎:なるほどなぁ。

小山:それから、せっかくこれだけいろんなお店も集めたし、他にも何かできないかなって「デリバリーマルシェ」も始めたんです。

「テイクアウトマルシェ」で市役所の人たちと関わりができたんですが、当時市役所の人たちがコロナの対応ですごく大変だったんですよ。ご飯食べにいく暇すらないって。だったら、今度はデリバリーのサービスをできるんじゃないのって。せっかくだから、近隣住人の方向けにもお弁当をデリバリーするサービスを立ち上げました。

長崎:小山さんは、コロナがきっかけで「りんご音楽祭」との関わり方が変わっていったんですね。

小山:コロナ前までは、「りんご音楽祭」の運営は半分以上東京のスタッフがやっていたんです。でも東京⇆松本の往来がしづらくなった。でもコロナがきっかけで、飲食店をはじめ松本の中でいろんな人と繋がりができた。規模は小さくせざるをえないけど、松本のスタッフでなんとかできないかな、という流れができましたね。

▽大規模でありながら「手作り」のフェス。チャレンジできるチーム編成

長崎:もともと出店者だったけど、そうして全体の統括もやるようになったと。「りんご音楽祭」って、日本の中でもわりと大きい音楽フェスなのに、なんというか運営は「内輪感」がありますよね?

小山:僕は他のフェスに関わったことないので詳しくはないですが、こういう大規模なフェスって専門でやってるイベント会社の人がやるんだと思うんですよね。実際関わるようになって、「こんな手作りでやってんだ!?」っていうのをはじめて知りました。

スタッフの人たちに初めてお会いしてわかったのは、みんな普段瓦レコードで遊んでる人たちなんですよね。それが中心になって「りんご音楽祭をやってる。あの規模のものを、それぞれに仕事をもってるイベントのプロじゃない人たちが、その時だけぐっと集まってやってるってすごいなぁと。

長崎:チームメンバーはみんな別の仕事もしてるから、全員が集まれるのは当日しかないって聞きました。

小山:それぞれやることがありながらも、「好きだから」やってるんだよね。みんな他に仕事を抱えてるから、言っちゃえば「りんご音楽祭」ができなくてもそんなに困らないんだよ。だからこそ、コロナ禍でも続けられたのかも。ちっちゃくやってもなんとかなるし、チャレンジできちゃうチーム編成になってる。

長崎:なるほどなぁ。今年は、「メーヤウ」は「りんご音楽祭」には出店するんですか?

小山:出店したほうがいいよね(笑)? やることがいっぱいあって、正直ちょっと悩んでるんですけどね。お客さんの多くは県外からくるから、「りんご音楽祭」でメーヤウのカレーを食べるのを楽しみにしてくれてるお客さんもいるんですよね。 だから朝一で「今年も食べ来ましたー!」とかね。アーティストでも楽しみにしてくれてる人もいるので。フードもフェスの一部なんですよね。……なんとか頑張って出店します!

長崎:ぜひ、カレーも食べにきてもらいたいですね!それでは後半では、小山さん目線の「りんご音楽祭」についてお話伺えたらなと思います。

後編はコチラ!



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