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【part9】今時小学生でももう少しマシな言い訳考えるけどね。

歩くことに関しての目的は人それぞれで良いんだけど、やっぱりツレはそこんところしっかりしてた。

そう思えばそれが一番の健康法

「おー。今日は12,000歩。」

スマホの歩数カウントアプリを見て、ツレは嬉しそうに報告する。その日どのくらい歩いたのか、毎日確認しているらしい。

「へーすごい。割と歩いてるもんだね。」
「そうだねえ。今日は特に一駅分歩いたからな。一日8,000歩が目標なんだよ。今のところほぼ毎日達成してる。」
なんだか嬉しそうだ。私は思わず感心してしまった。

なぜならこれまでは、ダイエット期間中の私がウォーキングに誘っても筋トレに誘っても、最初から最後まで一緒にやることはなかったからだ。

その上、「日中頭をフル回転させてたら、太るわけないんだよ。会議するだけでも毎日ものすごいカロリー消費量なんだから。」という持論を毎回展開してくる。

まあ健康法なんて流派みたいなもんで、人それぞれ考え方もフィットする方法も違うから、あえてこちらのやり方を強要はしないけど。


そのツレがウォーキングアプリのカウントを見ては、顔をほころばせているのだ。何だかいい傾向だと思った。


実際にそのアプリのおかげで、その後私とツレは一緒に歩きに行く機会が少なからず増えた。

「今日は何歩いった?8,000歩まで全然足りてないから、もう少し散歩行こう」とか、そういう会話も増えた。
よしツレよ、このまま一緒に健康な体を維持しようではないか。

と私はここ半年くらいずっと思っていたのだけど、やはりツレは期待を裏切らない。


えヘヘヘヘ

先週の夜のこと。いつも通り2人ソファに並んでテレビを見ていたら、ツレがいきなり貧乏ゆすりを始めた。
それがあまりに大げさな動きだったので、私は思わず声をかけてしまった。

「何、イラついてんの?」
「いや、ちょっと。」
「?」

不思議に思いながらよく見ると、揺れているツレの膝の上にはくだんのウォーキングアプリが開かれたままのスマホ。

そう、この男、とうとう座ったまま歩数を稼ぐ方法を見つけたようである。

「ねえ、ちょっと、待って。」
「ん?なに?」
なんだその顔は。悪いことを自覚しながらイタズラする猫か貴様。

「ウォーキングとは、何ぞ。」
「え?えへへへへ。」
えへへちゃうねん。今時小学生でも、もっとまともな言い訳ストックしとるぞ。

ツレは私から目を逸らし、引き続き手でスマホを支えながら「右、左、右、左」とテンポよく交互に足を上下する。


聞くところによると、そもそもツレは健康維持のためにそのアプリで歩数を計測しているわけではなかった。
なんとなく予想はしていたけど、歩数に応じて付与されるポイント目的で利用しているらしい。この男はどこまでいってもポイントマスター(part2参照)だ。楽天に魂を売った男は違う。

返せ、私の感心を。

とは言えその後もツレのウォーキング習慣は続いているようだし、まあ、多少のズルはあったとしても、「結果オーライか」とポジティブに考えることにした。



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