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【part1】 どうも。27年遅く生まれた女です。

生意気にも「彼氏いるの?」と聞かれたその回答は「YES」なのだけど、「彼氏」と形容するにはちょっとくすぐったい。

だからしっくりくるという理由だけで私は、細川貂々さんのエッセイ「ツレがうつになりまして」から拝借して、彼を人に紹介するときは専ら「ツレ」という表現を使っている。

LGBTQ「G」?

タイトルの通りツレは私よりも27歳年上な訳だが、世の中にある他のパートナーと何か違う部分があるかでいくと、そんなことは全くない。普通に食事や趣味を共に楽しみ、普通に行きたいところに出かけ、普通にセックスだってする。常套句で表現するなら、「好きになった人がたまたま年上だっただけ」という話。

ただ、残念なことにツレと私の関係を人に共有した時に、少なからず嫌悪感を表す人はいる。
まあ「自分の子供が3歳のときに相手は30歳」とかそういう想像をされたら違和感を感じるのも分かる。オブラートに包まず言うなら「キモチワリッ」ってとこだろう。

付き合いたてのころ、前職の上司たちからも「愛人ってこと?」「実は不倫とか?」「遺産狙いなの?」とかいう不躾な言葉をさんざん浴びせられたものである。

実際違うし「ほっとけよオヤジども」と内心思わなくもなかったが、それまで「仕事と結婚します!」と豪語して勤怠時間度外視で土日も働いていた私が、いきなり「ツレができました!」と報告したのだ。ようやくできたそれが世の中に事例が少ない組み合わせとあっては、多少なりとも心配になるのも頷ける。



並べるのもおこがましい話だが、私が気にも留めていないこの年齢差について、周りの人々の反応はLGBTQをカミングアウトした時のそれとよく似ている。「私は気にしないよ」を取り繕うまでの、一瞬の目の見開きとその「間」。

本来、本質さえ知ろうとできるのであれば「LGBTQ」なんて言葉、個人的には本当は必要ないと思っている。それはまるで「そうじゃない人」が「そういう人」をカテゴライズするための言葉みたいに感じてしまうから。

でも普段そう考える私でさえ、カミングアウト後のこの反応をされたときばっかりは、「頼む『generation』の『G』も仲間に加えてくれ」、とアホなことを考える。


距離感

ツレと付き合うに至った経緯はここでは触れないが、この年齢差で付き合えているのには、お互いに、他人と関わる時の「モノサシ」がよく似ていたことが影響している気はする。
ツレも私も、基本的に他人に興味がないのだ。

「興味がない」と一括りにすると語弊が生まれそうだけど、正確に表現するとしたら「他人の本質にしか興味がない」。

年齢・性別・職業・身分などはあくまでその人を解説するただの状況でしかなくて、その人がどんな経験を経てどんな価値観を持つようになり、何が今のその人に影響を与えているのか、何がこの人を構成しているのか、という核の部分にしか基本的に興味が湧かない。

極論、一緒にいる人が有名企業の社長だろうと犯罪者だろうと、多分同じように接すると思う。そんな環境にいたことないから分からないけど。


目的と手段

ツレと出会ってからはかれこれ6年、付き合い始めてからは3年以上経つ。一緒に住んではいないし、これからも特に住もうとは考えていない。
結婚に関しても私は基本的に「してもしなくてもどっちでも良い」と思っている。

でも、三十路手前の私が「まあ結婚願望もないし出産願望も無いもんで」とかいう話をすると大抵、私の上司たちは「実際のところはどうなのよ?」「結婚はした方が良いって」とか言ってくる。

正直私は、綺麗事でも何でもなくツレと一緒に居ることができるなら何でも良いので、「ご心配ありがとうございます。でも、結婚は手段であって目的じゃないと思ってるんですよね。」と、毎回言うのだが、正直「結婚してもらえない女の単なる強がり」としか捉えられないことについては、少々残念だと思っている。

そしてこういうときに、ツレとの年齢差があることで「私はもっと稼げるようにならないといけない」という焦燥感は生まれていく。

私が経済的に「自走」するだけではなく、「この人の面倒まで見ることができる」という事実がないと、いつまで経っても「愛人だ」とか「遺産狙いだ」とかいう腹立つ言葉は消えてくれないから。アンバランスさは拭えないから。誰からも認められるパートナーにはなれないから。

並び立てればいくらでも書き連ねられそうだけど、つまるところ、気にしないと言っていたツレの年齢に、一番「縛られに行っている」のもまた、私だ。


この辺り捉え方変わってきたので、追記



ツレをエッセイの題材にすること

文章を書こうと思ったきっかけは些細で色々あるけれど、最終的なトリガーとなったのは、「俺は体調を崩さないし医者には世話にならない」と言っていたツレが健康診断で高血圧を注意されるようになったことだった。

それを境に「好きなものを好きなだけ食べる」主義のツレが、食事では塩分を抑えるようになった。これまで飲んでいなかったトマトジュースを箱買いするようになった。私に改めて「この先」を考えさせるには、少し、十分すぎた。

どんなに私が「他のパートナー同士と何ら変わらない」と殊勝なことを言ったって、ツレが老いていくことも、同年代と比較して一緒に居られる時間が短いことも、ひとつの事実なのである。


周りに同じような境遇、年の離れたツレがいる方はいなかった。だからこそ、2人の「普通」に対して自分が思うことや、ツレの考え方を、私の生意気さ込みで、静かに、それでいて確実に、記録に残していこうと思った。

いつか読み返した時に、ツレ自身か、私自身なのか、はたまた同じような年の差のペアに対して、届いたらいいなと考えている。

森逸崎海、29歳。
これからよろしくお願い致します。


ツレについて
・年齢:56歳(2021年時点)
・好きなもの/こと:作ること全般(野菜/陶芸/会社/組織/etc.)、鉄道(乗り鉄)、昭和アイドル(特に岡田有紀子)、大瀧詠一(はっぴいえんど)、寿司、海老、テニス、ポイ活
・得意なもの/こと:人間観察(特にその個人がどう組織に関わろうとしているのか)、カイゼン
・苦手なもの:不機嫌なときの森逸崎



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