真夏の日、たった一人で地上から徒歩でメキシコのティファナから入国をしようと列に並んでいた。 当時の彼はアメリカの現地日本企業に勤めていた日本人で、私は夏休みを利用し遊びに行っていたのだ。そして、その日は夕食をトルティーヤとケサディーヤが美味しいメキシコのお店に行こうと入国したのだった。 車ですんなりと入国。急にガタガタな道になり、隣国なのにこんなに経済力の差を感じてしまったのを憶えている。お目当てのお店に行って彼の自慢を少し聞き、サンディエゴに戻ることにした。 入国ゲ
真っ青に晴れたある真夏日の昼下がり、大学の帰りに祖母に家に寄った。ちょっと様子を見に行って欲しいと両親の思いと裏腹にお小遣い欲しさで引き受けた。駅ビルで普段買わないようなちょっとお高めなケーキを買い、大岡山小学校行きのバスに乗り込んだ。いつものバス停でおりて、木塀に挟まれたひと一人分の細い道を、日傘が塀にあたらないように腕を伸ばしながら通り抜け、ヒールの音がコツコツと響き渡った静かないつもの住宅街の道のりを歩いていた。 家に着き玄関のインターフォンを鳴らした。 (あれっ、
ある春の日のこと 祖母は、お寿司が食べたいと母や伯母や叔父にしつこくしつこく伝えてきた。伯母は”おいなりさん”と”かんぴょう巻き”を買ってきたのだが、「ちがぁーーーーう」とキレて怒り気味に差し戻した。それらは、完全に飽きたらしい。 次に、叔父が”マグロの握りずし”を買ってきたが、「この間と食べたのとちがうのが食べたいの!!」とちゃっかり全部食べたくせに、顔から滲み出るくらい不服そうだった。 ある日、久しぶりに時間ができたので、祖母に会いに行った。母から、”握りずし”と
大正生まれなのに珍しく恋愛結婚をした祖母。 高等女学校専攻科を出て、同じ職場で教師をしている祖父と出会った。職場恋愛をしたことない私に、毎日めっちゃ楽しんだろうなと妄想に悶えながら、ちょっと羨ましいと感じてしまっていた。恋愛している頃はとっても輝いていたのだろう。70年連れ添うとやはり変わるのであろうか。 爽やかに真っ青に晴れた、僧侶である祖父の葬式の日。 お寺のイベントみたいになっていたので、疲れすぎたのか、もう訳わからなくなったのか、式後、 「わたし、本当はおじい