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【おすすめ本】北畑淳也『世界の思想書50冊から身近な疑問を解決する方法を探してみた』(フォレスト2545新書134)

■はじめに

思想の本なんて自分とは関係ない。そう思っている人は多いのではないでしょうか?

かつて私もそう思っていました。思想書といえば、

・難しそう
・暗そう
・説教臭そう

という感じで、なんとなく敬遠していました。

でもこの本は違います。難しい言葉をまくし立てて、わかったようなわからないような議論で読者を煙に巻いたり、これを知らないあなたはだめ、と高飛車に読者に説教してくることもありません。むしろ、身近な問題について、名書を通じて読者に問いかけをしている本だと言えます。

■この本のおすすめポイント

この本をおすすめする理由は3つあります。

・題材が身近
・文章が平易
・著者の姿勢

「思想書」を紹介する本ですが、本を紹介するだけにとどまらず、読者を主体に考えていて、読者が自分の答えを探すのを促してくれる感じです。

昨今、「教養」「哲学」が雑誌の特集でも取り上げられるようになり、「ビジネスで使える/優位に立てる」という文脈で語られることも多いです。しかし、著者はその立場を取りません。

著者がこの本を書いた目的は、

・思想のエッセンスを伝える
・思想書を手にとってもらうきっかけをつくる

であり、思想・哲学・教養自体に価値を見出し、「役に立つ」「目的がある」というような「功利主義」の立場をとらないというスタンスをとっています。

「確かに、功利主義に依拠した物事の価値判断は、多くの人のコンセンサスを得られる見解でしょうし、非常に深く浸透しています。
 しかし、「役に立たない」ものや「目的がない」ものにこそ、我々の人生に「意味」を与えてくれる可能性があることに気づく必要があります」(p.7)
「哲学書や思想書を読むことこそ、何らかの形で人生を豊かにしてくれると考えています」(p.9)
「非常に教条的かつ抽象的に感じるかもしれません。しかし、「哲学や思想の知識を得られれば、知的マウンティングで有利に立てる」といったメリットを語るのは、「教養」を矮小化した、あまりにセコくて貧困な発想だと思うのです」(p.9)

また、著者は独りで読むことよりも「対話」することを勧めています。

「心が折れそうな難解な書籍でも、他者との対話を重ねると、楽しく読むことができるという点もあります」(p.12-13)

思想というと、「独りで黙々と読む」というイメージが強いのですが、対話を通して書籍を理解するという方法も教えてくれます。

そして、読者に対して

・原著を読んでもらいたい
・この本を読んだだけで「理解」した気になってほしくない
・じっくり時間をかけて読み、考える機会を増やしてほしい

と促してくれます。

読者に思想を真に理解してほしいという著者の姿勢に対して、筆者は共感を持ちました。

この本は身近な問題を振り返って考えるきっかけを与えてくれる本です。書店で見かけたら手にとって読んでみてください。自分のすぐそばにある問題の本質とはなにか、気づきを得ることができます。


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