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アカデミック読書会(第28回) 開催レポート - 「世界経済システム」の誕生と未来の世界 -

読書会概要

7/22(木)のアカデミック読書会では、イマニュエル・ウォーラーステインの『近代世界システム I』を課題本とし、「「世界経済」の生まれる素地とは何か?」をテーマに対話しました。

世界経済システムが誕生したのは16世紀ヨーロッパであるとウォーラーステインは書きます。封建制(土地を媒とした主従関係を結ぶシステム)の崩壊、ヨーロッパが農業的資源に恵まれていなかったゆえの「交易」の発達などが、世界経済のシステムの素地になったようです。

対話は未来の話にも及び、資本主義と民主主義からテクノロジーに支えられた全体主義と監視社会が訪れるのかもしれないという話になりました。競争や自己決定に疲れた人々の行き着く先が「全体主義」「監視社会」なのでしょうか。

世界経済システムの歴史から、未来の世界の在り方まで対話できた読書会でした。

読書会詳細

【目的】
・この本を読んで発見ができたらよい
・近代世界システムを理解したい

【問いと答えと気づき】
■Q
・近代世界システム、世界経済、文化や価値観が影響したのでは?
■A
・文化の影響は書いていない
・経済的な面からの説明がメイン
■気づき
・文化の影響は論証しにくい
・経済面での変化も単純に叙述しているのではないか、何を書けば変化の説明になるのか

■Q
・世界経済が16世紀のヨーロッパで生まれたと考えるのはどうしてか?
■A
・16世紀のヨーロッパでは資本主義が生まれた=市場経済が生まれた
→経済的に発展した(p.15)
■気づき
・経済自体は大昔からあった
・仕組みが整ったのは16世紀のヨーロッパ
・経済はものの交換、交換のためにお金は生まれた、管理のために国は生まれた
・経済を中心に考えるのは正しい方法

■Q
・世界システムとは何か?
■A
・政治・法を超えたシステム
・近代の発明物
・資本主義
■気づき
・ナショナリズムと似ているが、発展の過程は似ているのか? 影響はあったのか?

【対話内容】
・世界経済システムとは?
→世界に広がる経済
→物と物との交換(需要があって欲しい人が買い付ける)
→ヨーロッパ人が世界規模に広げた
→仕組みができあがったのが16世紀のヨーロッパ

→地球上の全世界を言っていない
→「地域ごと」を超えた
→一定の役割に組み込まれたのが「世界経済システム」
→開発される国と、低開発される国が同時に起こる
→時代によって変わる

・会社の法人の始まりと関係するのか?(例:東インド会社)
→東インド会社は17世紀に設立
→資本家が生まれた

・法人は何が原因で生まれたのか?
→儲けるために、みんなでお金を出し合って出資した
→リクスが不確定(冒険家的にハイリスク・ハイリターンを求める人(最初)と限定された中リスク・中リターンを求める人(リスクの程度がわかってきたあと)がいる)
→ヨーロッパの富裕層がお金を出し合った

・封建制の限界
→封建制:余剰生産物を無益に消費する、次の投資をしない
→作物が実らないと崩壊してしまう、経済が安定しない、増える人口を支えられない
→資本主義:次の投資をする
・16世紀:中核は西欧、周辺は東欧

・通貨操作によって国が儲けた
→為替
→悪鋳:銀に不純物を混ぜた(実質的な価値を下げた)

・農業の利潤率が落ちた→通貨操作(悪鋳)
・金や銀は山から取らないといけない
・メキシコ銀が一気に流入し、ストック量が増えたが…、
→交易量が増えて足りなくなった

・ヨーロッパは農業から得られる収入が低かった、通貨のストックも少なかった(自国で富を生み出せなかった)
→交易を拡大しようとした
・ヨーロッパでは経済は自国でまかなえないので外へ出ていった(市場を拡大せざるを得なかった)
・オーストラリアなど自国で完結する豊かな国は経済は発展しなかった
・『父が娘に語る経済の話』ギリシャの経済学者の話

・ウェーバー、プロテスタンティズムの倫理
・ウォーラーステインは反ウェーバー

・共産主義とはどう違うのか?
→世界システムでまるっと語っている(共産主義が1国)

・マルクス主義とウェーバー主義の両方から叩かれた
・何が斬新な見方なのか?
→1国の経済で見ない
→一直線の発展的なモデルで見ない

・資本主義:市場経済を取り入れ、発展した、うまくいった。搾取するシステム
・最近の資本主義は格差を拡大させている
・国家が資本を集中して管理するのは限界がある
・中国はテクノロジー発展に依っている
・中国が中心となる経済圏を作ろうとしているが…、『1984』の世界が展開されるかも
・中国には経済と軍事の力がある
・テクノロジーで低コストで管理できる

・中国は新しい力を得た
・転換期が来ているのかもしれない
・中国が覇権をもったらシステムが変わるかもしれない(データで監視など)
・データのスコアリングでさまざまなことが決まる
・ウォーラーステインの議論には、監視国家に対する反論がない
・監視国家では自由に発言できない

【気づきと小さな一歩】
■気づき
・世界経済の発展の中で、システムだけでなく人の動機のようなものも影響したのではないか
■小さな一歩
・資本家の冒険心はすごいが、横暴になるときになる。健全な労働運動の歴史を勉強したい

■気づき
・過去の資本主義の時代から、全体主義の時代になる恐れがある
・強大なところ(GAFA、中国)があると、健全な競争が行われなくなる、発展がなくなる
■小さな一歩
・民主主義とかを考察したい

■気づき
・人は選択の自由に耐えられない
・フロム(自由からの逃走)、ハイエクの著作に触れる

次回の読書会

【開催日時・場所】
・2021年8月12日(木)20:00~21:30 @ZOOM
【テーマ】
・新たなヨーロッパの分業体制はどのようにして確立したか?
【課題本】
・イマニュエル・ウォーラーステイン著、川北稔訳『近代世界システムI ― 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立 ―』 ※「岩波現代選書(岩波書店)」「岩波モダンクラッシックス(岩波書店)」「新版(名古屋大学出版会)」どれでもOK
【詳細・申込み】
お申込みはPeatixよりお願いいたします。


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