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アカデミック読書会(第38回)- なぜ地中海で帝国主義は始まったのか -

読書会概要

1月27日(木)、20:00~21:30、Zoom(オンライン)にて、アカデミック読書会(第38回)を開催しました。課題本は、前回に引き続き、フェルナン・ブローデル『地中海I 』、「環境と人間との関係とは何か?」をテーマに、「第4章 自然の単位 ― 気候と歴史」を読みました。

ブローデルが言及した長い16世紀から、資本主義や資本主義の理論をたどる読書会となりました。16世紀の地中海では、人々は、明日のことにも不安を感じるような生活をしていましたが、交易と技術の革新で、環境の過酷さに適応し、世界帝国・世界経済を築いていったことがわかりました。そして、資本主義の本質を知るには、マルクスを始めとした、過去の思想家・歴史家の仕事を、一度振り返ることが必要であることも、今回の読書会でわかりました。

読書会は、参加者2名、ファシリテーター1名の合計3名で開催しました。今回からご参加くださった方は、noteで公開しているアカデミック読書会の開催レポートをご覧になって、参加をお決めになったということでした。ご参加されたお二方は、資本主義や歴史に関する知識が豊富な方で、対話中に様々な本をご紹介くださいました。(このレポート後半の【読書会で紹介された本】で、本のタイトルを紹介しています)

ご参加くださったみなさまには、厚く御礼申し上げます。

読書会詳細

【目的】

  • ブローデルの研究がどのようにすごいのか感じたい

  • 気候が人間に与える影響を、ブローデルのガイドを得て、考察する経験を得たい

【問いと答えと気づき】

■Q

  1. 古文書にどうやってアクセスしたのか?

  2. この論文のすごさとはなんだろうか?

■A

  • 年代記がヨーロッパ中にあるらしいことがわかった(p.620)

  • 諸々の人物の行列(マトリクス:コルテージュ)に分解してしまう(それまでの歴史書と違う)

  • ブローデルが博士論文として書いたあと、フェーブルがフェリーペ2世にアクセントをおくように示唆した(p.624) ※ウォーラーステインが言っていた

■気づき

  • (2の問いに対して)地中海を主人公にしたのがすごいところ(人ではなくて)


■Q

  • 気候が人間の歴史に与えた影響とは?

■A

  • 自然の過酷さは、平和という副産物をもたらすことがある

  • 自然の穏やかさは、戦争をもたらすこともある

  • 収穫(農繁期)に、戦争は止む

■気づき

  • ものごとには、いいも悪いもある

  • 農繁期に戦争が止むのは、日本も同じ

【対話内容】

■地中海で帝国主義はなぜ始まったのか

  • 常備軍はいつ始まった?
    →ナポレオンの国民軍か?
    →トルコのイエニチェリは?

  • スペインだと、常備軍はいつ活躍するのか?
    →テルシオ(Wikipediaより)

  • マルクスがブリュメール18日について書いたもの
    →フランスのまとまりとして、中央集権体制を表したもの = 軍隊と官僚
    →フランス:地方地主→王朝(絶対王政)→革命→中央政権

  • 常備軍の維持にはお金がかかる→維持できるのは、官僚機構がお金を集められるから

  • 私有財産を認めたから、世界経済システムは続いた
    →緩めていったほうがいいのではないか

  • 帝国主義が生まれたのは、地中海が貧しかったから(p.406)

  • 帝国主義は、ときには、日々のパンを必要とすることにほかならない

  • ヴェネツィアは比較的裕福だが、どうしてなのか?
    →ルネサンスは中東から知識を得た。そこから来たのか?
    →十字軍の前から栄えていたが・・

  • ヴェネツィアが商売のために十字軍をけしかけた

  • 地中海の東側は、まだましだったのかのかもしれない

  • マルコ・ポーロは、ヴェネツィアの人。ヴェネツィアは昔から中継で栄えていた

■技術の発展と資本主義

  • 一定の照明を得るために、どれくらいの労働時間が必要なのか? 技術の発展が必要なのか?
    →(ポール・ローマー)効率がよくなっている、思っているよりももっと経済は発展している

  • ポール・ローマーと経済成長の謎:土地・労働・資本→人・アイデア・モノ

  • 地中海の時代は、土地・労働・資本(有機経済)。本来は、人・アイデア・モノ(無機経済)

  • サステイナブル→太陽エネルギー→有機経済では?

  • 工業社会以降は、人・アイデア・モノ

  • アダム・スミスは、有機経済の頃の話(無機経済のことは、一応書いている感じ)

  • 有機→無機→有機になった。螺旋階段のイメージ

  • 技術の進歩で、無機から有機的になった
    →チェーン店:味が保証されているのが強み
    →地元の店:食べログで入れるようになった

  • 規模なくても勝負できるところが出てきた

  • 地中海は、環境・気候に翻弄されていた
    →自然に調和している、循環している

  • 自然に調和している、循環しているから切り離されて、お金を稼がないと食べ物が買えなくなる
    →マルクスは資本主義を悪者に書いている

■思想家・歴史家たちは、資本主義をどのように捉えたか

  • ウォーラーステイン:中核、半周辺、周辺

  • モキイア(知識経済の形成):家内制→工場制(生産性が上がる)、工場に努めていないと食べられない

  •  ドラッカー(ポスト資本主義):マルクスのあとから、資本家と労働者との関係はよくなった(労働者でも稼げるようになった)

  • マルクスを知るのが必要になるかも

  • マルクスの失敗(革命は起こらなかった):『資本論』を資本家が読めたから(福祉をちょっとだけ増やした) →多少は労働者を幸せにした

  • 100分de名著(マルクス):労働者が自発的に労働するように仕向ける

  • オーウェル:スターリン批判(『動物農場』『1984』)

  • ウォーラーステインの著作には、マルクスが多く言及されている

  • マルクス主義的な歴史観

【気づきと小さな一歩】

■気づき/学び

  • 自然の過酷さが平和をもたらすこともある

  • 自然の豊かさが戦争をもたらすこともある

■小さな一歩

  • 気候が人の行動を変えることを具体的に発見する→旅先に行って地元と比べる

  • 会津:雪が降っているが、泉佐野とどう違うか、考える


■気づき/学び

  • 環境との人間との関係:環境の中に人間がいる
    →環境の中に人間がいるということが、経験(体で感じるもの)から意識(頭で感じるもの)になった

■小さな一歩

  • 自分で経験する(インターネットで情報はあるが)

  • 丸山圭三郎(『文化のフェティシズム』):「海に行こう→テレビで海を知っている」の怖さ

【読書会で紹介された本】


次回の読書会のご案内

  • 開催日時・場所:2022年2月10日(木)20:00~21:30 @ZOOM

  • テーマ:環境と人間との関係とは何か?

  • 課題本:フェルナン・ブローデル著、浜名優美訳『地中海I 環境の役割』「第5章 人間の単位 ― 交通路と都市、都市と交通路」


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