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つながり続ける、オンラインでも。

震災直後の2011年に玉川大学に着任し、今年で10年目になりました。毎年色んなチャレンジがありますが、今年は特に前例のないチャレンジになりました。
6月、感染が拡大していた東京から感染者0の岩手県を訪問するわけにはいかず、例年9月に行っていたゼミ合宿も今年は諦めざるを得なくなり、学生たちの失望感は大きかったです。特に陸前高田でのゼミ合宿を楽しみに、このゼミを選んできてくれた3年生10人はとてもがっかりしていました。授業はオンラインでキャンパスにも行けない、陸前高田にも行けない……

そんな中、陸前高田の方々はどうしていらっしゃるんだろう?例年なら合宿準備でやり取りを開始している時期だから、ご様子だけでも聞いてみよう、とこれまで合宿でお世話になった方々に、去年からのつながりがある4年生がお電話することにしました。

「飲食店やイベントの営業自粛等で注文が全くないから大変!仕事がなくなっちゃった。毎日家にいてもやることがなくて…」という生産者。「今年は修学旅行生も一切来ないから、寂しいよ。思い出してくれてありがとうね」という民泊先のご家庭。「こっちは3密なんてないから大丈夫よ!東京のが大変でしょう?気をつけてね」と逆にこちらを気遣う声。

様々な声を聞き、2011年来先輩たちが築いてきてくれた陸前高田とのつながりを、ここで絶やしたくない、現地に行けなくてもできることを、と考え始めました。これまでどおり、陸前高田の魅力を発信して、特に困っている生産者さんたちのお役に立てるようなことをしよう!と、SNS等でのPRを思いつきました。

そのためには、現地の最新情報を知りたい、皆でその情報を共有して発信方法を工夫したいという思いから、「オンラインゼミ合宿」を企画しました。PRする牡蠣やリンゴ、海産物おやきなどの特産品を取り寄せて、その生産秘話を伺ったり、地域づくり関連団体にその成果や課題を伺ったり、民泊でお世話になった家庭とつないで郷土料理を一緒に作ったりと、Zoomでできることを学生が企画し、連絡調整を始めました。

私たちにとっても、陸前高田の方々にとっても初めての試みだったので、様々な課題もあり、叱咤も激励も受けながら陸前高田の皆様の温かさに支えられて何とか実施することができました。それでもこのプロセスで、22人のゼミ生をまとめること、担当となった役割を期日内にきちんと全うすること、高田の方との連絡調整には誠意をもって臨むこと、報連相を徹底すること…様々な課題がありました。「もう本当に大変だった!」という学生の声もあり、ということは、よい意味で学生にとっては例年通りのゼミ合宿プロセスを体験する機会になったといえるのかもしれません。

コロナ禍では様々な制約があり、学生活動らしいことが何一つできない今年、それでもあきらめず、ゼミの皆で力を合わせて一つのことに取り組むことができ、そしてその体験をこのNoteに綴ることができました。「大変だったけど、やってよかった!」と学生たちがふりかえられるようになったらいいなと期待しています。

オンラインであってもつながり続けることができたのは、大変ありがたいことだと思っています。このオンラインゼミ合宿で話者としてご協力いただいた方々だけでなく、多くの方にこの企画を陰で支えていただきました。特産品の取り寄せにご協力いただいたマルゴト陸前高田様、Zoom接続にご協力いただいたトナリノ様、三浦尚子様、SET様。皆様のご尽力なしにこの企画は実現できませんでした。心よりお礼申し上げます。

卒業旅行で陸前高田へ!来年こそは陸前高田へ!学生たちのこの思いが早く実現できる日が来ることを願っています。

太田美帆