(和台詞?)「私が居なくなったあとは…」(掛け合い?)

「私にはわかりません。瞳子(とうこ)姉上は許嫁であった、日向 重泰(ひなた しげやす)殿を先の戦で亡くされたばかり。なのに父上の命(めい)で直ぐに嫁ぎ先を決められ、それを承知なさったなんて。」

「彰子(あきこ)、私も武家の娘。女は家のために動かなくてはなりません。重泰様の事は確かに辛い事。でもね、彰子、私は武家の娘としての道を選んだの。政治の道具として嫁ぐとしてもそこでもしかしたら幸せな人生を切り開けるかもしれない。愛情もまた、生まれるかもしれないでしょ。」

「でも、姉上…私にはやはりわかりません。愛情のない婚姻から愛情が生まれなければ道具としての妻でしかない。そんなの幸せなわけがないもの。」

「そうね…。彰子の言う通りかもしれない。それでも私は、行くわ。彰子、幸せか、幸せでないかは自分の心根次第でかわると思うの。道具としての妻にだって幸せを見つけることはきっとできると思うから。 」

「姉上…」

「彰子。そんなのは嫌だと言うのなら、彰子は好いた人と一緒になるという思いを貫きなさい。今の世ではとても難しいことかもしれないけれど、きっとあなたならできるわ。私も力を尽くしてあげる。私が出来なかったぶん、あなたにはそういう幸せを掴んで欲しいから。」

「姉上…。」

(抱きつく)

「泣かないで、彰子。大丈夫よ。私は大丈夫。彰子、私が居なくなったあとは、父上、まだ、小さな五郎の事、頼んだわね。母上が亡くなって、今まで私がしてきたこと、彰子に任せたわよ。」

「はい…はい…姉上…。」

゛優しく、ふわりと抱きしめて、私が泣き止むまで
背中を暖かな手で擦ってくれた瞳子姉上は二月後(ふたつきご)、嫁いで行った。゛

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