須木本りく

須木本りく(すぎもとりく)です。 初小説【連作短編|揺られて(前編・後編)】各話さくっ…

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須木本りく(すぎもとりく)です。 初小説【連作短編|揺られて(前編・後編)】各話さくっと読める短い恋愛小説です。🍀創作大賞2024 🍀恋愛小説部門 参加します。 なかなかフォローができずごめんなさい

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    『連作短編|揺られて』前編7話・後編9話 🍀創作大賞2024 🍀恋愛小説部門 参加作品  各話さくっと読める短さの恋愛小説です。 読んでいただけたら嬉しいです😊

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連作短編|揺られて(前編)①|貴也

「いってらっしゃい」 朝の見送りが習慣になっている妻は、いつもと変わらず美しい。頬がほんのり赤いのは昨夜の余韻か。 妻は朝食の用意をする前には、ブラウスとスカート…

須木本りく
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エッセイ | 鼻から抜けるように

今朝、家族が唐突にこう言った。 「鼻から抜けるように話すといいんだって」 「なんのはなしですか?」 その言葉が口から出てしまった自分に驚き、ひとり笑ってしまった。 …

須木本りく
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エッセイ | またまた燕の子

ようやく燕の巣から小さな頭が見えるようになりました。 燕の子たちは、親鳥が餌を運んでくると大きく口を開けるので、その姿がよくわかるのですが…… 子どもたちだけだ…

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連作短編|揺られて(後編)❶|麻里

前編⑦はこちら ある日、応接室にくるよう支店長に呼び出された。職場の全員が耳をそばだてている。 何か失敗したかしら…… ◈ 「忙しいところ申し訳ない」 支店長がに…

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連作短編|揺られて(前編)⑦|吾輩はみた(特別編1)

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須木本りく
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連作短編|揺られて(前編)⑥|明日へ

前編⑤はこちら 月の半ばは融資の取り引きも比較的落ち着いている。ここ数日は外出予定もほとんどない。自席でコーヒーを飲みながら今期収支を確認していると、固定電話の…

須木本りく
10日前
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連作短編|揺られて(前編)⑤|桜子

前編④はこちら 急に強く腕を掴まれ一緒に死のうと言われた時は、あまりの驚きと腕を振りほどく勢いでベッドから転げ落ちてしまった。 慌てて洋服を着てバッグを掴み取り…

須木本りく
11日前
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連作短編|揺られて(前編)①|貴也

連作短編|揺られて(前編)①|貴也

「いってらっしゃい」

朝の見送りが習慣になっている妻は、いつもと変わらず美しい。頬がほんのり赤いのは昨夜の余韻か。

妻は朝食の用意をする前には、ブラウスとスカートに着替え髪を整え薄化粧をする。当たり前だと思っていたそれは、他所の家では違うようだ。

白くきめの細かい肌、ほっそりした腰つき、艶やかな黒髪は、とても二十歳の子がいるようには見えない。

銀行頭取のひとり娘である妻は働いたことがない。

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エッセイ | 鼻から抜けるように

エッセイ | 鼻から抜けるように

今朝、家族が唐突にこう言った。

「鼻から抜けるように話すといいんだって」

「なんのはなしですか?」

その言葉が口から出てしまった自分に驚き、ひとり笑ってしまった。

聞けば、鼻から抜けるように話をすると、相手からの印象がよくなるという。

それははじめて耳にしましたよ。

YOUさんのような感じかな?
瀬川瑛子さん?
声優さんに多いかな?

家族はある講義(発声とは関係ない)でその説明を受け

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エッセイ | またまた燕の子

エッセイ | またまた燕の子

ようやく燕の巣から小さな頭が見えるようになりました。

燕の子たちは、親鳥が餌を運んでくると大きく口を開けるので、その姿がよくわかるのですが……

子どもたちだけだと、その色は巣と同化してしまい、わかりずらいです。

敵から身を守るためと思われます。
(当たり前か…😅)

人の流れに乗らず、ひとり立ち止まり、
燕の巣を見上げます。

彼らの姿を見ると心がほっこりします。

燕に限らず、この季節は

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『連作短編|揺られて』の投稿を急ぎ、ようやく先ほど最終話の投稿が終わりました。お読みいただけたら嬉しいです。この間に見ないようにしていた、noterさまの企画を考えます❣

連作短編|揺られて(後編 )❾|未来へ (最終話)

連作短編|揺られて(後編 )❾|未来へ (最終話)

後編❽はこちら

矢田麻里になる

今日は大安だから、式を挙げる組数が多い。控室フロアにはウエディングドレス、白無垢、フォーマルスーツの男性、黒留袖の母、仲人、同じ格好の人間が入り混じる。

友人たち、同僚たち、親戚の大勢が次々と控室へやってきた。

「おめでとう!すごく綺麗!」

「ありがとう」

同じ言葉を何度も聞き、同じ言葉を何度も言っていたら段々と気分が悪くなってきた。披露宴中に具合が悪く

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連作短編|揺られて(後編)❽|麻里

連作短編|揺られて(後編)❽|麻里

後編❼はこちら

まさか支店長宅にまで押し入ってくるなんて、お見合いはぶち壊しにされたと諦めかけた。

あきらくんは、勢いよく入ってきたが、支店長の娘さんに出ていくように言われたらすんなり帰ってくれた。何だったのだろう。驚きすぎて全身の力が抜けてしまい座り込んでしまった。

あきらくんとの長い付き合いを説明はしたが、別れた理由であるマッチングアプリでのママ活のことは言えなかった。深く詮索もされずに

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連作短編|揺られて(後編)❼|吾輩はみた(特別編2)

連作短編|揺られて(後編)❼|吾輩はみた(特別編2)

後編❻はこちら

朝からパパさんもママさんも忙しそうだ。
いつも休みの日のパパさんはソファーでごろごろしているのにね。

「今日はお客さんがくるのよ」

キョウハ オキャクサン ガ クルノヨ



玄関のベルが鳴り、知らない人間の男がリビングに通された。

よくわからないタイプの男だけど、おもしろそうだから足元に近づいてみると、ボクのことを撫ではじめた。

気持ちよくてごろごろ寝転んびながらこい

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連作短編|揺られて(後編)❻|桜子

連作短編|揺られて(後編)❻|桜子

後編❺はこちら

就職率97%の大学だから当たり前に就職できると思っていたのに、一般企業へ就職はできなかった。自分は3%のうちの一人になってしまった。

卒業してからは『大学生です』から『フリーターです』に自己紹介の一言も変わり、世間から外れてしまった疎外感を抱えて生活している。

家族には就職していないこと責められたが、仕方ないじゃないの。だって企業が内定をくれなかったのだから。エントリーシート

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連作短編|揺られて(後編)❺|江上

連作短編|揺られて(後編)❺|江上

後編❹はこちら

大学生のときに、ルナちゃんと出逢った。

女性と知り合う機会が欲しくてマッチングアプリをやり始め、最初は食事をするだけで満足していたのだが、だんだん食事だけでの出費が馬鹿らしく思え、女性と会う回数は減るけれど、その分いい思いができるならと、勇気をだして『大人あり』にしたときの最初の相手だ。

こんな綺麗な娘がパパ活をしているなんて信じられなかったが、車や土地、ブランドの服にバッグ

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連作短編|揺られて(後編)❹|彩乃

連作短編|揺られて(後編)❹|彩乃

後編❸はこちら

都内の平日ランチタイムはどの店も混雑している。このオムライス専門店も予約なしでは入れない。

ちょっとフェミニン寄りのオフィスカジュアル、憧れだったフェラガモのハイヒール、勝ち組ともいえる有名企業の同僚たちとのランチタイム。理想としていた人生は始まっていた。



大学三年生の終わり頃から就職活動を始めた。大学の就活支援センターでは、この成績では絶対に無理だと言われたけれど、と

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連作短編|揺られて(後編)❸|矢田

連作短編|揺られて(後編)❸|矢田

後編❷はこちら

入社試験は簡単だったから成績は良かったはずだ。今は支店に在籍だけれど、いずれ本店へ行くことになるさ。まずは副支店長、支店長の椅子に座らなければならない。このままいけば、それも難しくはなさそうだ。

支店長の肩書には、それに見合う連れて歩くのに恥ずかしくない美しい妻が必要だ。彼女が新入社員で入ってきたときから決めていた。顔、容姿ともに美しく頭もいい、控えめなところも妻に相応しい。

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連作短編|揺られて(後編)❷|アキラ

連作短編|揺られて(後編)❷|アキラ

後編❶はこちら

知られてしまった。

麻里だけには知られずに、いつか必ず就職してプロポーズするつもりだった。取り返しのつかないことをしてしまったと後悔してももう遅い。

もっと麻里に伝えることはあったはずなのに、言い訳になってしまうと思うと言葉がでなくなってしまった。

あの時、なぜ正直に認めてしまったのか、しらを切ればそれで済んだかもしれないのに。



配送のアルバイトを辞めて何年になるか

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連作短編|揺られて(後編)❶|麻里

連作短編|揺られて(後編)❶|麻里

前編⑦はこちら

ある日、応接室にくるよう支店長に呼び出された。職場の全員が耳をそばだてている。

何か失敗したかしら……



「忙しいところ申し訳ない」

支店長がにこにこ笑っているので少し安心したが、わざわざ応接室に呼び出すなんて、何か無理なことを頼まれそうな予感がして構えていると、予想もしていなかったことを言われ驚いてしまった。

この行員たちの中でも優秀で将来の支店長と噂されている矢田

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連作短編|揺られて(前編)⑦|吾輩はみた(特別編1)

連作短編|揺られて(前編)⑦|吾輩はみた(特別編1)

前編⑥はこちら

この家にきて三年になるボクは、外の世界のことはあまり覚えてない。
たまにカーテンに潜り込み、人間や紐に繋がれた犬や自由な野良猫たちを窓越しに観察している。

ボクのお世話はママさんがしてくれる。
毎日のごはん、お水やトイレの石の取り換えは本当にありがたい。
ブラッシングはママさんの力の入れ具合が優しくて好き。パパさんのやり方はちょっと痛くて苦手。



朝、いつものように出かけ

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連作短編|揺られて(前編)⑥|明日へ

連作短編|揺られて(前編)⑥|明日へ

前編⑤はこちら

月の半ばは融資の取り引きも比較的落ち着いている。ここ数日は外出予定もほとんどない。自席でコーヒーを飲みながら今期収支を確認していると、固定電話の液晶がぱっと明るくなり相手が表示された。

『 頭取 』

義父からの電話でよい知らせは滅多にない。重い気持ちで受話器をとると、何やら電話向こうで怒っているのだが、何を言っているのかさっぱりわからない。

「とにかく!今すぐ来なさい!」

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連作短編|揺られて(前編)⑤|桜子

連作短編|揺られて(前編)⑤|桜子

前編④はこちら

急に強く腕を掴まれ一緒に死のうと言われた時は、あまりの驚きと腕を振りほどく勢いでベッドから転げ落ちてしまった。

慌てて洋服を着てバッグを掴み取り、そのホテルの部屋を飛び出した。息が切れてぜぃぜぃ言いながらも走った。

駅まで走ってなんとか人混みに辿り着き立ち止まると、道行く人たちにジロジロ見られていることに気がついた。

セーターの肩はずり落ちているし、コートは片腕だけ通して、

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