転職ほやほや夫婦がマンションを買った話⑥

前稿ではついに人生初の内見が決まり、いざマンションに足を踏み入れようとするところまで書きました。

マンションのエントランスに着くと、某不動産販売会社の営業マンさんが声をかけてくださいました。
個人的に不動産の営業マンには日焼けしたツーブロゴリマッチョのイメージがあったのですが、この方はIT系の技術職にもいそうな雰囲気の方でした。
私たち三人はしばらく約束の時間までエントランスで時間を潰したあと、営業マンさんに連れられてマンションの中に入りました。
小規模物件ゆえ、部屋の前まではものの1〜2分。
営業マンさんがインターホンを押すと、思わず唾をごくり、と飲み込みました。

応対してくださったのは売主のご夫婦の旦那様でした。
まずはリビングに向かいます。
さすが大手財閥系デべ分譲のマンション、土地柄もあってか、部屋中の至る所からアッパーミドルの薫りがムンムンします。
リビングイン部屋に目をやるとエレクトーンまで!
小中学生の頃、ちょっとお金持ちっぽい女の子の家にお呼ばれした、あの時の記憶が勝手に捏造されていきます。ん?捏造?
リビングを一通り確認したあと、お手洗や浴室も見せていただく流れになりました。
私が知る中で三番目に広い浴室!
ちなみに一番は静岡で逆玉の輿に乗った友達の家のお風呂です。何の話?
「浴室サイズは1418ですか?」という異世界の言葉が飛び交いますが、とりあえず知った振りをしてその場をごまかします。

綺麗で高級感あるお部屋に感動するばかりだったのですが、一方で恐らく私の部屋になるであろう部屋(間取り図では4畳半)はやはりちょっと幅が狭く、ここで仕事をするのは独房に入った気分かもしれないな…とも思いました。
当時から来るべき分譲マンション生活に備える意味も込めて、6畳の自室を半分、滅多に使わないシングルベッドで埋めていた私ですが、このときにそもそも狭い部屋は壁が近いので圧迫感があり、思っていたより狭く感じるということを学びました。
一通り見学を終えたあと、「内見の最後は売主様に質問をしておいた方がいい」とインターネットで見たので、前日に考えてきた質問をいくつか売主様に投げかけ、質疑応答をしました。

そういえば、未だに思い出して恥ずかしくなることがあります。
質疑応答もつつがなく終わり、さあ帰ろう!というタイミングでリュックサックに手帳をしまおうとしたそのとき、事件は起きました。
リュックサックが手から滑り、売主様の目の前で床にガサッ!と落ちてしまったのです。
その場の空気が一瞬固まったのを感じました。
私も思わず固まってしまいましたが、気を取り直し、言葉にならない「すみません」を数度連発しながら床を見ました。
幸いリュックサックにはほとんど何も入っておらず、傷がつくこともなかったのですが…人生屈指の絶望した瞬間でした。
皆様はどうか、内見の際には床に物を落とすことのないよう、お気をつけください。

部屋を出て営業マンさんと挨拶を交わしたあと、私たちは地場のそば屋さんに向かいました。
実は、内見後にそこで、すんで埼玉(現すんで)の営業さんともお会いすることになっていたのです。
(つづく)


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