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連載:城東の奇跡~大激戦!東京15区選挙レポート 第5節:共感

 この人なら、江東区の政治を変えてくれる。

 宣伝カーから降りてきた酒井なつみさんを目にして私はそう確信した。私にとっては2023年12月の江東区長選以来、4か月振りにお目にかかる酒井さん。区長選の際にお会いした時よりも、心無しか覚悟と自信に満たされているように見えた。
 酒井さんの人生は、平坦なものではなかった。看護師・助産師として昭和大学高等豊洲病院に勤務していたが、28歳で子宮頸がんを発症。闘病の末、完治を経て、不妊治療も経験後、一児の母となる。この経験から、がん患者や子育ての支援を政治の世界から強化したいと2019年に江東区議選に出馬。2期4年半あまり務めたのち、2023年12月の江東区長選に区政の立て直しを掲げて出馬したものの、次点惜敗。
 そんな酒井さんがもう一度立ち上がった。改めて演説を耳にしてみる。語り口が優しい。そして、政治家に得てしてありがちな自己顕示欲や権力欲が一切なく、自然体である。決して言葉巧みなところはないのだが、一切飾るところのないその姿勢、そして他人への共感の強さに惹かれるものがあった。誠実そのものという人である。

 酒井さんが掲げたスローガンに、「がんばるあなたを独りにしない」という台詞がある。まさにこれは寄り添い、対話、共感である。
 他の候補予定者の中には、「がんばった人が報われる世の中に」という旨を掲げる人もいた。それもそれで間違ってはいないようにきこえる。しかし、「がんばった人」という言い方で、対象を限定化してしまっている。裏を返せば、「がんばっていない」と判断された人は報われなくていいという風に読み取れてしまう。それは、一種自己責任論に通じるところがないだろうか。
 それに対し、酒井さんは、「がんばるあなた」と表現している。人間、生きている限りは努力を余儀なくされる。そして、一生懸命にやっていても報われないことだってある。そんな時に、政治は手を差し伸べる存在であるべきだ。酒井さんのそんな志が垣間見える。それこそが、「経世済民」ではないか。私は、このスローガンの意味について考察した際に胸が熱くなってきた。

 豊洲での演説が行われたのは告示前最後の土曜日であったが、そこまで反応が良いわけではなかった。通行人からは街宣活動を煙たがるそぶりも見られた。
 しかし、ビラ配りをしていた際に目の前を通りかかった人が、「おれ区長選、あの人に入れたわ」と家族に話しかけている様子が聞こえた。見ている人は見ている。どれだけ酒井なつみさんに注目してくれる人を獲得できるかだ。私は、静かに関心が蠢く豊洲で、必死にビラを撒いた。

 街宣の最後に、パートナーズの有志や酒井さん、長妻さんら政治家の皆さんで記念撮影をした。2年前の参議院選以来久しぶりにお目にかかった方もおり、懐かしかった。立憲民主党はそれ以来、紆余曲折を経て、今ようやく追い風を受けている。そんな中で、共感に満ちた政治家、酒井なつみさんが東京15区総支部長に就任した。まさに、立憲民主党が掲げる「支え合い」の精神を体現する政治家、是が非でも国会で働いてもらいたかった。

 4月16日の告示が、間近に迫っていた。


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