見出し画像

連載:城東の奇跡~大激戦!東京15区選挙レポート 第3節:始動

 4月のある日、私は江東区の東陽町へ向かった。

 東陽町の江東区民センターでは、地元の市民連合によるキックオフ集会が開かれていた。酒井さんの支部長公認から数日しか経っていなかったと思うが、私は酒井さんにもう一度お目にかかりたくて、そして地元の共闘体制がどのように整えられているのかも立憲民主党支持者としては知りたくて、集会に向かった。

 この市民連合にはひとり、大物が携わっていた。
 2012年と2020年の都知事選にも出馬した宇都宮健児弁護士である。2022年夏の参議院選挙では、同じく弁護士の松尾明弘候補(現立憲民主党東京7区総支部長)の応援に来ていたこともあったが、この宇都宮さんが市民連合の幹部を務めていた。酒井なつみさんの長妻昭都連会長、宇都宮健児弁護士との3連はこうした意味を持っていたのである。こうした宇都宮さんらの仲介もあってこそ間際ながら立憲野党側が候補予定者をひとりに絞れたことは想像に難くない。

 会場には、立憲民主党の酒井なつみさん、高野はやと江東区議、共産党江東区議団、諸派の区議団のほかに、共産党から立候補を予定していた小堤東さんも出席していた。そして、酒井さん、宇都宮さんによる政策協定の調印が行われた。項目としては、立憲主義の堅持、憲法や国民生活を無視した軍事力増強への対峙、物価高などの生活を直撃する経済問題への対処、基本的人権およびジェンダー平等の尊重、エネルギー政策の転換、江東区の防災問題への取り組み、湾岸エリアのIRカジノ誘致への反対、というところである。これらは、我が立憲民主党とこの場に集まった他党諸派の皆様で大きくベクトルが異なるところはない。特に私は、防災問題の取り組みという共通項はこの地区に住む人であればどなたも直面しうる問題だけに、共通政策としては最適なものであるという印象を受けた。野党共闘に当たっては、「大同小異」(小さな違いにこだわるよりも大きな一致点を模索すること)が大原則だが、この市民連合においてはこの共通項の設定が非常に絶妙になされていると感心した。
 こうして、協定が調印され、酒井なつみさんは東京15区の立憲野党の統一候補として4月16日に告示される衆議院東京都第15区の補欠選挙に臨むことが決まった。集会の後半では、集まった市民から政策や野党共闘について様々な意見が出された。私からは、「ボトムアップ型野党共闘の実現」が重要であるとお話した。野党共闘というのは、結局現場の努力によるところが大きいからだ。最大の課題というのは、立憲民主党の支持母体である「連合」との関係で、特に現会長になってからは野党共闘に対する風当たりは一層強くなっていた。だが、現場が自発的に始めてしまえばそれは止めようがないし、連合の組合員は政治を変えようと志す方ばかりである。東京でも、連合推薦の自治体議員は多いが、野党共闘に理解のある方もいらっしゃる。政治家自身には多方面への配慮が求められ動きが制約されがちな中で、その下地はまさに市民が主体となって整えるべきではないか。そしてそれこそが「草の根からの民主主義」ではないか。集会を通して私はそう感じた。

 「草の根からの民主主義」とは、枝野幸男立憲民主党前代表が2017年の立憲民主党結党時に訴えた台詞である。当時選挙権がなかった私も、このニュースを見て、日本で最も志ある政治家は枝野幸男であると胸が熱くなった。それを立憲民主党内で体現した制度が、「パートナーズ制度」である。このネットワークには私も2022年より参加しているが、パートナーズの中で熱心な方が主体となり、政策の学習会や選挙応援の呼びかけを行っていた。
 東京15区に関しては、告示前の週末の2日で、パートナーズ有志による市民街宣が行われることが決まった。私は今までの選挙ボランティアの中で、選挙カーのコールは行ったことがあったものの、街宣のスピーチは経験がなかった。キックオフ集会で「草の根からの民主主義」の重要性を実感していた私は、選挙区外ではあるが、その一員に加わることとした。

 告示前最後の土曜日、私は豊洲へと向かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?