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連載:城東の奇跡~大激戦!東京15区選挙レポート 第10節:電話

 選挙戦も2週目に入り、激戦が伝えられている中で、私はギアをあげることにした。
 その一環として、いよいよ電話かけに参入することにした。

 電話かけは2年前の参議院選で少し行ったものの、その時は誰もいない四ツ谷の事務所でひとり慣れない通話を行っては殆ど手ごたえがなく周りに仲間もおらず徒労感を覚えるばかりで長続きしなかった。

 他方で今回は、事務所にボランティアや自治体議員が詰めかけてフル稼働している。そして、みな真剣な顔つきで次の1軒のダイヤルを入力している。

 私が初めて電話に加わった日はすさまじかった。初めて電話が通じた方が用件を伝えるなりものすごい剣幕でまくし立ててきたのだ。
「あのね、政治家とかほんといい給料もらってね、何やってんのって。もっと子育て支援とかそういうところに金を使ってって話よ。言っといてね?」
 受話器が吹っ飛ぶかと思うほどの口ぶりに私もひるみそうになったが、そこですかさず、
「でしたら、酒井なつみは江東区議時代に子育て支援政策に力を入れてきたんですよ?」
と返した。すると、
「あら、そうなの?」
 先方は意外そうな声色だ。しめたものだ。
「はい、太鼓判を押します!」
 そして電話相手は、
「わかったわ。とにかくさっきいったことは伝えてちょうだいね。」
 とまあこんなスリリングな滑り出しとなり、隣にいた事務所のスタッフも(おそらく党職員だろう)苦笑いするほどだった。その方が果たして実際に酒井さんに託してくださったかは知る由もないが。

 しかし、この経験は3つの意味で私にプラスになった。
 ひとつは、区議を務めていたとはいえ、酒井なつみの名前と実績がそもそも江東区の中で知れ渡っていないこと。前々から予感していたが、やはり酒井さんが区議の時に子育て支援や医療福祉の整備に力を入れたことは知られていない。その分、その事実を紹介すれば大いに受ける可能性があるということで、酒井さんにはやはり伸びしろがあると確信した。
 ふたつめは、政治家に対する不信がすさまじく高まっていること。件の方の激しい口ぶりは、まさに江東区で相次いだ不祥事による政治への不満と怒りを凝縮しているようだった。江東区の暗黒時代を終わらせ、もう二度とこのような選挙のドミノを招かないために、国政は酒井なつみを選べば間違いはないということを政策や真摯な人柄と共に伝えねばならない。
 3つ目。子育て支援に対する関心は間違いなく高い。政治家に求められているのは、自分のためではなく、将来のために投資をしようと志す人だ。それには、酒井なつみは適任だ。
 以上の3点から、私は酒井なつみさんこそが、汚職の相次ぐ江東区を変えてくれる、こどもまんなかの安寧な日本への道しるべとなると確信し、その良さを伝えることに注力することにした。

 電話かけをしている中では、厳しい声もあったし、話も聞いてもらえないこともあったが、それ以上に応えたのは留守電にメッセージすら残せないことだった。これでは下手をすると選挙が行われていることも周知出来ない。その分、電話越しに酒井なつみの魅力を伝えた末に、「がんばってください」「応援しています」という声をもらえた時には何にも代えがたい達成感があった。後半の1週間は街宣や用事の合間を縫って、酒井なつみを江東区じゅうにアピールしていた。最後の1日は20分あまりの中でも1軒「がんばってください」と温かい声援をいただき、わずかな時間の中でも成果をあげられた喜びをかみしめた。
 他の方の電話かけの様子を目の当りにできたのも心強かった。好意的な反応があちらでもこちらでも観測されると、留守電だらけで骨が折れそうでももう少し頑張ってみようか、という気になったし、自民党の衆議院議員が2人連続で不祥事で辞職する中で、「今なら話を聞いてもらえるんだ」という確信にもつながった。

 しかし、そんな現場の状況とは裏腹に、インターネット上ではどこからともなく東京15区への懸念が広がっていた。


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