見出し画像

人生

よく「何が怖いって、人間ほど怖いものはないよ」と聞く。このドラマを見ていると、つくづくそう思う。「ハンドメイズテイル〜侍女の物語〜」、わたしは3話まで見た。HULUのオリジナルドラマで、今はシーズン3まで公開されているらしいが、わたしはWOWOWで見ている。(ちょっとネタバレします。ごめんなさい)

未来の話だが、そう遠くはない気がする。すでに地球は放射能や化学物質によって大気汚染、土壌汚染、海洋汚染が進み、何かしらの戦争か紛争が繰り返し起こって、アメリカの首都はアラスカに移り、星条旗に星は二つしかない。かつてアメリカ本土だった場所は、原理主義勢力によって宗教国家と化してしまった。

汚染のせいで、人が住める場所は少ないし、子を産むことができる男女も少なくなっている。子どもを授かることができる女性はレッドセンターに集められ、然るべき教育を受けたのち「侍女」として高官の家に配属される。その家の子を産めば任務完了だが、いわゆる代理出産ではなく、『儀式』による妊娠を強いられる。つまり、その家の妻の脚の間に横たわり、家主と交わる苦痛を経なければならない。

そこには人権などないし、ましてや女性の権利などは皆無。例えばレイプされても、女性の方に落ち度があったとして罰せられるのだ。男性社会で、たとえ高官の妻であったとしても「男の世界に口出しするな」と厳しく咎められる。また、同性愛はもってのほかで「性の反逆者」と呼ばれ、除染工場に送り込まれ、やがて体が毒に侵されて死ぬまで働かされる。

着るものも統一され、侍女は赤。高官の妻も緑の服しか許されていない。さらに侍女は個人名を名乗ることは許されない。その家の主人の持ち物として
「of 〜」と呼ばれる。主人公ジューンは、フレッドという高官の持ち物だから、「オブフレッド」。人間扱いではないのだ。だから、本を読むことも、文字を書くことも許されない。ジューンはまだアメリカがアメリカだった頃、編集者として働き、夫と娘がいた。それなのに、一夜にして過酷な日常が始まってしまった。

監視社会で、機関銃を持った「目」と呼ばれる見張りの男たちが路上にくまなく配置され、侍女たちもまた二人一組になってお互いを監視する。国家の決まりを破ったものは、男女関係なく死刑になる。子を産める女性は、命だけは奪われないが、性器切除などの過酷な罰が待っている。

1話目からおぞましい描写が次々と映し出され、オットは「なに?この気持ち悪いドラマ、見続ける気?」と嫌悪感を隠さない。わたしもこの世界観に当初は「なんですってー!?」」と叫び出したいくらい頭にきた。

ドラマの中の支配者に、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせてやりたい気持ちになったが、見続けるうちに、自分もまた、その社会で生き延びるにはどうしたらいいかを考えるようになっていった。息を潜め、ルールに従うことだけに注意を払う。しかし、ジェーンは違った。賢く生き延び、叛逆の意思を貫こうとしている。

自由が全くない世界で、どうやって生きていくのか。人生をどう考えるのか。いつそんな世界になってもおかしくないような、この時代の空気を感じながら、ドラマを見ている。

やっぱり、人間が一番こわい。

サポートいただけたら、次の記事のネタ探しに使わせていただきます。