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あなたのものさし

【ものさしを考える】

私が営業をしていたころ、
会社主催のセミナーでお話ししてくださった
講師の方から聞いたお話です。
大型家具店で、学習机を売られていたAさんの
販売の仕方について紹介してくれました。

Aさんは、他社の学習机がヒットしてこぞって購入されているときに
まったく違うタイプの自社商品の販売ででトップの成績をたたき出していた営業マン
でした。

みんなが目を向けていない商品の販売で、
なぜ他社商品を上回る営業成績を打ち出せたのでしょうか。

Aさんは、ある家具メーカーの社員だったのですが、
当時、自社商品である学習机を販売するために
大型家具店の店頭でお客様に直接セールスをしていました。

Aさんの会社の学習机は机上のライトがスライドし、
手元を明るく照らすことで、
勉強するお子さんの視力を守るということがセールスポイントでした。

一方で、この頃、
お子さんの成長に合わせて
机の高さを自由に変えられるという商品が大々的にCMされ、
その年のヒット商品になっていました。

小学校の入学前に学習机を購入に来る大多数の親子が
店頭に来ると「机の高さが変えられるアレはどこですか?」
と店員に尋ねるくらい、みんながその商品を目的に家具屋さんへ来ていました。

Aさんは営業成績のいい社員でしたが、
この状況ではなかなか厳しい。
ところが、Aさんの営業成績は以前と全く変わらないどころか、
前年よりもよくなっていたのです。

なぜなら、、、

Aさんも、机の高さが変えられる学習机が欲しいと言われれば
そちらの机を案内します。
そして、親御さんたちと世間話をし
「そういえば、最近眼鏡をかけるお子さんが増えてきていますよね」
と、話題を振るのです。
お子さんの健康は親の願いですから、
「そういえばそうね」
「御覧の通り親も眼鏡なんでうちも心配ですよ」
「最近は小さいころからゲームやパソコンですからね」
「昔はこんなにメガネの子どもっていなかったような気がするね」
などなど…
親御さんたちもいろんな反応を返して来られたことでしょう。

「子どものうちからメガネをかける必要が出てくると、
例えばサッカーしたり野球したりという時も、
メガネが邪魔になって集中できませんよね。
女の子だと、おしゃれじゃないって気にされることもあるみたいですね」
「そうならないように、宿題したり勉強するときにも
適切な位置に照明が当たるようにして
手元を明るくすることが大切ですよ」
と照明の大切さを伝えます。

それまでは成長とともに高さが変わるものに価値観を置いていた
親御さんたちが、
今度は子どもの視力を守ることに意識がいきます。

するとAさんはすかさず、
「学習机でも視力を守るために照明は大変重要ですから、気を付けてあげてくださいね」
など、親御さんにとっては気になる言葉を投げるのです。
「なるほど…照明も確かに大切ですよね」
と返ってきたら、
「例えばこういったスライド式の照明であれば、
どんな作業の時でも、利き手や採光のことを気にせず、
照明をスライドして調節することで、いつも手元を明るく照らすことができます」
と自社商品の机を目の前に、
視力を守るためにどういった照明が必要なのか
ということに耳を傾けてもらえたら、
そこからはAさんの土俵=Aさんのものさしの世界です。

そして、
Aさんは前年を上回る営業成績を収めることができた、というのが
セールスパーソンに対してのセミナーのお話の一部です。

私はその話を聞いたときに、
目からうろこ!と思いました。
実際、この講師の方の引き出しは素晴らしくて、
次から次へと合理的で人間の心理を活用した営業の技術というものを
伝えていただけたので、
聴いているだけでアドレナリンが出てきそうなセミナーでした。

さて、皆さんはいかがですか?

私はすでにセールスパーソンを卒業して、
今コーチという感覚でこのお話を思い出すと、
客観的に
人の価値観が変わった、
優先順位の入れ替えかな、
でもそっちでよかったのかな
姿勢を守るための、高さ調節できる机もよかったんじゃない?
と、考えるようになってきました。

”ものさし”というのはつまり
その人の持っている価値観です。

多分、心の中には人それぞれたくさんのものさしがあって、
必要に応じてそれが出てくるようになっていますよね。
ただ、
このお話を違うほうから眺めると、
学習机という選択に対して
CMなどを見た多くの人が、
自分の中の価値観から
「子どもの成長に合わせた高さというのは重要」
という”ものさし”を取り出された形になったのではないでしょうか。

ひとつのテーマに対して、
何で判断したらいいか迷う時に、
テレビでこれがあなたのものさしですよ!
と与えられる。
ヒットしているということはどうやら
他の人たちもそのものさしが正しいと思っているようだ。
そこで、みんながその机を求めて家具屋さんへ買いに行く。

ところが、
家具屋さんへ行ったら、
こういうものさしもありますよ、と言われると、
なるほど、それだ!となって、そちらを選ぶ。

人は、実はたくさんのものさしを自分の中に持っていると思うんです。
でも、
その中の何を取り出して
どう使ったらいいのか
は、
あまりやっていない。
だから、
人から言われてたくさんのものさしを取り出しているうちに、
どれを使ったらいいのかわからなくなってしまう。

余談ですが、
昔の日本人だって1寸とか1尺を単位にしているものさしが正しいと思って
測っていたのに、
今度はセンチメートルの定規で測りますって言いわれたら、
もしくは、
外国へ行ったらインチだとかフィートだとか知らないものさしがあって、
こちらのセンチメートルが全く通じなかったりすると、、
混乱しますよね。

いや、
本当のものさしの話ではなくて、
目の前の判断をどのものさしでしていくか、ということになると
本当に人それぞれ、
その人の持っているものさしでしていかないといけないんですから。
自分の中のどのものさしを使ってどう判断していくかを決めるのって難しいときもありますよね。
知らず知らずに人から与えられたものさしで、
それが自分の判断だと思うのも怖いし、

そして、
もっと怖いのが
ものさしがひとつしかない人。少ない人。
差別とかではないです。
そうなったら、大変だな、ということです。

特に、
そのものさしで測れるものしか信じられなかったり、
そのものさしで計測不可能なものを認めなかったりする
こと、
これをすると
とても生きにくいことになっちゃうし、
それがあらぬほうに行くことが差別になったり、
テロ行為になったりしてしまう。
そう思いませんか?

それから、自分で何かを判断していく”ものさし”、
それって本当に自分の”ものさし”ですか?
誰かに使うようにって言われて渡されたものではないですか?

例えば、人から渡された”ものさし”、
なるほどこういう測り方は自分も持っている、
というものならいいのですが、
強い立場の人から無理やり渡されたものだったりすると、
仕方なしにその”ものさし”に合わせていることが出てくる。
それって、いいのでしょうか?
もしくは、自分のものさしが見つからないから
人のまねをしていたり、
なんでもいいから言われた通りのものさしを使っていたり
そんなことはないですか?

私が今日皆さんにお勧めしたいのは、できたら、
自分の中にあるものさしを洗い出して、
どんなものさしを持っていたっけ、と眺めてみてほしいんですね。

自分の中にある価値基準を
いくつか取り出して、
あー私って、こんな基準で友達を選んでいたんだ、
とか、
私のものさしでいくと
「こういう人を尊敬するけど、こういう人とは行動したくないんだな」
と測ったり、私自身にものさしを当ててみると、
「これができたときには最高にいい一日だな」とか、
もっともっと、
「私の中ではこれがベストの神対応っだたな」とか。

そして、日常の中で感じるいいことも悪いことも
こうなったらこんなに気分がいいんだ、
とか、
こういう時にへこむんだよね、
とうことを感じたら、
しっかりメモリに落としておくこともいいんじゃないかなと思うんですね。
「こうなったら」ということも含めて敏感になれば、
あ。これはいいことが始まる兆しが来てる、とか、
この雲行きは怪しいからこの辺でひなんしないと、とか。
意外と、日常でもうしているかもしれないですが、
それをもう一度意識するようにすると、
もっと使えるようになるかもしれない
ですよね。

さて。

あなたのものさしは、
どんな単位のどんな基準のどんな種類のものが
その胸の内に隠れている
のか、週末を利用して、
洗い出して磨いて眺めてみてはいかがでしょうか。

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