短編小説「透かしても見えない」第九話 そして、見えなくなる
和田先輩の家から出ると、真っ暗な空の下、私もよく知っている街並みが目に飛び込んできた。同じ大学の人だから、家が近くても不思議じゃない。川を渡る必要はあるけれど、よかった。ここからなら下宿先まで15分もかからないだろう。
みじめな思いを抱えたまま、私は自宅へと続く鴨川の橋を渡ろうとした。でもなんとなく、橋を渡る前に河原を歩きたくなって、下へと降りる。すぐ目の前で流れている水の音が不安定だった心を少し落ち着けてくれた。
そのまま川辺に腰を下ろし、体育座りのように膝を抱え込んだ。当