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20代、一人暮らし、女。ただの日常。



6時

今日は天気が良い。

ベランダで洗濯物を干して、ベランダでコーヒーでも飲みたい気分だ。

でも、決してベランダには干さない。

都会で一人暮らしをするようになってから、一度もベランダに洗濯物を干していない。

もちろんそれは、この部屋に女が住んでいるとバレないようにするため。


アパートの一階に住む女友達は、わざとメンズの洋服をベランダに干していた。

そんなことより、一階の部屋を貸してくれた賃貸業者に驚きを隠せないけれど。
私は、一階の部屋を借りようとしたら賃貸業者に止められた。

7時

生理痛で気持ち悪い。
たぶん生理が原因の貧血。

でも、相変わらず混み合う通勤電車では座席に座れない。

生理って、見た目には分からないから。

分かりやすく、骨折した人がつけるギプスみたいなの身体につけて、ちゃんと病人か怪我人からしく扱われたい。

今日もヒールのパンプスはしんどい。



12時

部署のみんなでランチに行った。

おじさんになりつつある年齢の課長は、海外サッカーが好きらしい。

新卒の男の子もサッカー経験者で盛り上がっている。

でも、私はスポーツの話はわからない。

海外サッカーの熱い話を聞くくらいなら、先輩のジャニーズ好きの女性とジャニーズの話をしたいけれど、そうも出来ないらしい。

ジャニーズが大好きな先輩は、ランチの時間中ずっと曖昧な表情で過ごしていた。

私もあの表情を練習した方が良いのだろうか。



ランチの定食は相変わらず食べきれない。

オフィス街にある定食屋のメニューは全て、健康な20〜30代男性の胃袋を標準として作られているのだろうか。

残すとまたダイエット中なの?とか何か言われそうで無理して食べた。

お腹いっぱいで午後の勤務はただただ眠い。


16時

やっぱり生理痛がしんどい。

女友達にそう溢すと、最近は「婦人科行ってピルもらいなよ!」って言われるけれど。

月に数千円かかって、1〜数ヶ月に一度の通院がマストな薬なんて、負担が大きすぎて嫌になる。

それに婦人科はいつも混み合っているし、生理痛が嫌な人と、妊娠して幸せそうな人と、妊娠できなくて苦しみながら妊活してる人と、ノーテンキな付き添いの男性がいて、カオスすぎて気分が悪い。


20時

やっとオフィスを出た。

街にはたくさんネオンが光ってる。

今日、隣の部署は取引先と接待らしい。

キャバに行くのか、おっぱぶに行くのか。

私ならホストに行きたい、いや、メイド喫茶の方が楽しいかな。


いや、私が接待されるような役職につく未来はありえないのか、それとも、女性がその役職につくと接待イベントが自然となくなるのか、誰か正解を教えて欲しい。

今のところ、接待でホストに行った話は聞いたことがない。


21時

最寄駅についた。

駅前のお弁当屋で安くなったお弁当を買う。

ストックの生理用品が少なくなっていたことを思い出して、駅ビルにあるドラッグストアに戻る。

生理用品の値段は計算しないようにしているけど、本当は私は年間いくら使っているんだろう。

生理用品のお金がかからなければ、私はさっきのお弁当屋さんで、安くなっていない新商品の方のお弁当を買えたのかもしれない。

悲しくなるから絶対に値段は計算しない。


ドラッグストアを出たところで急に疲れが出たから、ベンチに腰掛けてお茶を飲んだ。
ぬるくなった緑茶はあまり美味しくない。

すると、知らない男が話しかけてきた。

「お姉さん、ひとり?」

聞こえないフリをして、立ち上がって、私は駅から家とは反対方向に歩き始めた。


数分歩いてから、さっきの男が後をつけてきていないことを確認して、遠回りしながら家の方向に歩き始める。

あいつのせいで、今日は結局30分ほど時間をロスした。
この街の最低賃金に換算して、時給分くらいはちゃんと支払って欲しい。
請求できねーかな。


自宅のあるマンションの前にやっと着いた。

でも、マンションのエントランスに人がいたからマンションを一度通り過ぎた。

数分待ってから、エントランスに人がいないことを確認して、マンションに入り、エントランスキーを使ってドアを開ける。

もちろん、後ろから誰かに付き纏われてないかは確認する。



あいつのせいで遠回りして帰ったから、私の帰宅は21時半から22時に延びてしまった。

この平日の貴重な30分を彼に慰謝料請求したいけれど、彼に私の名前を知られて報復される方が嫌だから今日も諦める。

こうして失った時間を人生分集めたら、軽く1週間、いや、1ヶ月にはなりそうだ。



22時

最後の力を振り絞って、メイク落としシートをゴシゴシとしてメイクを落とす。

メイク落としシートでメイクを落とすと肌に良くないらしいけど、既に肌にも身体にもメンタルにも良くない生活しているからもう関係ない。

脱いだ服は洗濯機に投げ捨てて、ベッドに飛び込んだ。


おわり

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