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坐位の座り直しについて考察【後編】

前回では座り直しについて考察していく上で前提となる言葉の説明をしてきた。
是非お時間のある方は前編を参考にしていただきたい。


脳卒中患者の座り直しで臨床上よくあるパターン

①前傾する時に非麻痺側へ大きく偏るため座り直した後も麻痺側殿部が十分に後方へ移動できていない


こういった場合には起立着座練習の中で坐骨⇨足底の重心移動や、下肢(足底)を接地する感覚を訓練すると改善できる可能性がある。

②下肢が伸展するのみで場所が変わらない


シーティング見直しを検討する。
(フットレストや座面と下腿長の長さがあってない)
また腹筋筋力の低下や後方への押し付けが強い人に多い印象を受ける。

こういった場合は前傾を取れない理由を評価していく。
・腸腰筋や背筋群(多裂筋)など

介助者としても注意が必要なのはズボンの後ろを引っ張る方法や、両手を組ませて腋下からその手を引っ張る方法である。

この方法は自立を支援する方法としては相応しくないと思われる。どうしてもお尻が持ち上がらないケース以外は直接坐骨や大転子部分を把持して後方に引くようすると良い。

少し脱線しましたが効率的な座り直しとは
起立の離殿まで⇨着座直前の骨盤のコントロール
によって構成されていると思います。

また、座り直し動作にあってこの起立、着座に含まれない要素としてアームレストへのリーチと上肢のプッシュアップが挙げられます。

座り直しにおける上肢の運動

座り直し動作における上肢運動は
①アームレストへのリーチ
②アームレストをプッシュアップして臀部離床させる
動きがある。

今回は番外編として、リーチ動作の基本的な相分けについて確認していく。

「脳卒中の動作分析(金子唯史)」ではリーチ動作は0相(認知相)、1相(屈曲相)、2相(移行相)、3相(伸展相)、4相(安定相)に分けられている。

0相:認知相

物品の認知をして行動プランを立てる相。
リーチ動作に対してのAPAが働くフェーズでもありこの段階で体幹の抗重力筋の活性化やスキャプラ(肩甲骨)セットが行われる。

腹内側系の障害を受けた脳卒中患者の多くはこの時点でエラーが生じる可能性がある。

1相:屈曲層

肘関節の屈曲が生じて肩甲上腕関節の伸展と肩甲骨内転の動きにより中枢部の関節の安定を図りつつ上肢を挙上していく。

2相:移行相

肘関節の屈曲から伸展へと切り替わるフェーズとなる。
個人差はあるがおおよそ肩甲上腕関節が45°屈曲したあたりから目標物へ伸展していくと言われている。

この時に視覚経路から統合された情報より目標物に合わせた手の形を作るプレシェーピングという動きが見られる。対空での屈伸の切り替えは脳卒中患者にとって難易度は高い。

肘が屈曲したまま体幹を前後に動かしてリーチ動作を代償的に遂行する方もよく見られる。

ただその中でもアームレストに向かって肘関節は伸展する動きに切り替わっているのか、掴む(これからプッシュアップをする)手の形を作れているのかという点を注意深く観察する。

3相:伸展相

目標物に対して肘関節の伸展活動していく。同時に肩甲骨は外転、上方回旋して前腕は中間位で保持しなければならない。

ここでの上腕三頭筋の活動は手指の開きと大きく関係するそう。また上肢の活動ではありながらもこの伸展相では坐骨から足底への重心移動が行われる。

これは起立の前傾相とも関連が強い動きであり、起立時にCOMの前方移動が十分にできない症例ではリーチ動作においても同様の現象が見られることが多い。

机上でのリーチ課題においても足底がどのように接地しているのか、介入の中での環境設定は重要である。

4相:安定相

物品へのリーチが完了して通常の次の動作の開始地点となる段階。しかし支持面は殿部、足底、手掌(物品)の3点となり坐位とはCOMが異なる(前方に推移している)。

当然これまでの0~3相でエラーが生じていると4相で本来得られるはずの安定が得られないため、リーチ後の動作への影響がでる。座り直しの動作ではここからプッシュアップの動きに移る。

結論・まとめ

ここまで脳卒中患者の座り直しについて考察してきた。動作には個別性が多くうまくいかないことも多いが、何か介入の糸口になれば嬉しく思う。

理学療法メモでは脳卒中分野や整形分野など様々な範囲での記事を投稿させていただいている。

もし興味があれば他の記事も参考にてほしい。


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