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PTができる腰痛への介入方法とその効果

こんにちは、理学療法メモです。

回復期病棟を辞めて訪問看護ステーションで働くようになった私は、腰痛を持つ患者・利用者の数に驚きました。

もちろん、全員が腰痛に悩んでいるわけではありませんが
PTの介入を希望されるかたで腰痛を持っている割合が非常に多いなと感じたのです。

しかし、ひとことで腰痛とは言っても原因が人により異なるため同じ介入方法では当然良くなりません。

今回は腰痛診療ガイドライン2019改定第2版を参考に、腰痛に対してできる介入方法をその効果についてまとめてみました。

詳しく知りたい方は原著をご覧ください。

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf


腰痛についての簡単なまとめ

腰痛の定義


腰痛とは症状のことを言うため疾患名と混同しないよう注意は必要です。

定義はざっくりとまとめると以下のようになります。

体幹後面(第12肋骨と臀溝下端の間)に生じた1日以上継続する痛みのこと、時に下肢へ放散する痛みを伴うこともある。


腰痛を引き起こす原因について

腰痛はさまざまな原因によって引き起こされますが、具体的には脊椎、神経、内臓、血管、心因性などの原因があると言われております。

この中で危険性が高いものは

  1. 悪性腫瘍

  2. 感染

  3. 骨折

  4. 重篤な神経症状を伴う腰椎疾患

となります。
その後に来るのが「重篤でない神経症状を伴う腰椎疾患が鑑別されるべき腰痛」と言われております。

原因鑑別の最後にはどの組織から腰痛が生じているのかの検討も必要です。
例)椎間板性、椎間関節性、筋・筋膜性、神経根性、靭帯性など

では腰痛の内訳についてはどうでしょうか。

『腰痛診療ガイドライン2012』(初版)では、腰痛のうち非特異的腰痛が85%を占めると言われておりました。


*実際には米国の総合診療医による情報を統合したもので、機械性腰痛の場合、腰椎捻挫が70%、椎間関節や椎間板の加齢変化が10%を占めており、それに関して(約85%程度)は病理解剖学的診断を正確に行うことが困難という意味だったそう。


ですが近年発表された日本の整形外科医による腰痛の原因の調査によると、腰痛の原因の内訳は椎間関節性22%、筋・筋膜性18%、椎間板性13%、狭窄症11%、椎間板ヘルニア7%、仙腸関節性6%でした。

合計すると原因がわかる腰痛は約77%、診断不明の腰痛は22%程度ということになりました。

診断技術の発展によって、大まかな原因については診断が可能となったそうです。

ただし詳細な診断方法や治療法については医療者誰もが納得のできる共通の方法がない現状です。

PTがよく目にする腰痛患者

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001110/4/Low_back_pain.pdf より画像引用

我々PTはこの保存療法を選択された方を多く目にすると思います。

そんなかた達にできる方法、何が有効であるかを紹介します。

1患者指導

”腰痛の治療は安静よりも活動性維持が望ましい
一方で坐骨神経痛を伴うケースでは明らかな差はない”

活動性維持をしている方が疼痛軽減や身体機能回復、病欠期間も短いと報告があります。

あまりに痛みが強すぎる場合を除き、無理のない範囲で生活を続けると言う指導にはある程度の根拠があります。


2物理療法

物理療法もPTの領域に含まれます。
具体的には牽引、超音波、低周波、温熱、コルセットが挙げられます。

どれも効果の有効性をはっきりとさせる根拠はなく、行うことを弱く推奨するレベルであります。

3運動療法

急性腰痛に対する運動療法は、残念ながら効果を認めず。
普段通りの生活を継続することが唯一の介入方法であったそうです。

亜急性期に対する運動療法は復職や身体機能維持に対しての効果は僅かに認めますが、痛みや機能障害の改善に関しては効果が不明な状況です。今後さらに質の高い研究が必要となります。

慢性腰痛に対する運動療法は、疼痛や運動機能、健康状態、筋力及び持久力の改善が認められました。
日本における全国的なRCTでは運動群(体幹筋強化とストレッチ10回、1日最低2セット)と対照群(NSAIDs内服)を比較し、腰痛の程度に差はなかったが、腰痛関連QOLが優位に改善した結果を示している。

4代替医療

PTが行える手技としてはマッサージ、徒手療法、ヨガ(やるとしたら運動療法としてヨガの動きを取り入れる)があります。

徒手療法は一貫した方法が示されていないため効果も結果として異質であり信頼できる方法ではないとされています。現状、自然回復を凌駕するような結果は得られておりません。

ただし患者満足度は高い傾向にあるそう、私見では精神的な介入として一部取り入れるのはアリだと思っています。


マッサージはシステマティックレビューでは亜急性期や慢性期における短期的な介入効果を認めており、運動や教育と組み合わせた際に症状改善に効果的とされています。

一方でコクランレビューでは腰痛に対してマッサージが有効であるとされる確証はなく、基本的な効果に対しても疑問視されています。


ヨガは無治療、通常のケア、運動療法と比較しヨガの優位性が短期的、長期的に示されています。そのため代替医療の中ではまだ効果が得られやすい手法とも言えます。


ヨガはPTの範囲外ではありますが要素を取り入れて介入することは一つ有用かもしれません。


まとめ

ここまでPTとして行える手法を簡単に紹介してきましたが、これだけをやっておけばいいという方法はまずありませんでした。

急性期には普段通りの生活を進め回復を待つ。
亜急性期であれば運動療法(筋力強化と柔軟性改善)を行い、ヨガのような姿勢や呼吸を意識して介入していく必要があります。


慢性腰痛に対しては腰痛の原因となっているもの(生活環境や仕事によるストレスなど)を取り除くために、本人を取り巻く様々な人たちから情報を収集する必要があります。
そして生活上の動作指導、運動習慣の獲得、痛みに対しての考え方や捉え方などを少しずつ変えていく働きかけが必要です。

参考文献)

腰痛診療ガイドライン2019改定第2版
監修:日本整形外科学会、日本腰痛学会
編集:日本整形外科学会ガイドライン委員会、日本診療ガイドライン策定委員会


私の考えですが、腰痛に対して真剣に考えて行動する姿が腰痛を持つ本人にとっても良い刺激になり、安心感にもつながるのではないかと思います。様々な文献を見ても痛みは現代の医療を持ってしても完全に取り除くことができず、付き合っていくものとして捉える方向に進んでいると思います。診断のつかない腰痛に対しては特に我々PTがよりそうことが重要ではないかと考えています。

下記の記事も大変参考になるためお時間のある時にどうぞ。


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