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歩行分析 機能的課題と印象 後編

歩行分析シリーズの後編となります。

前編では

①そもそも歩行とはなにか
②重要な機能的課題と3つの相
③観察の手がかりとなる歩行の印象

などの事前知識を中心にまとめました。

まだ見ていない方はぜひ、こちらをふまえて後編を読んでいただけると嬉しいです。

後編ではより具体的に、3つの相における

①観察の着眼点
②治療的評価
③解釈の一例

をまとめていきたいと思います。

ぜひ最後までお付き合いください。


前編のおさらい

前編のポイントを振り返ると、歩行には大きく3つの機能的課題があり、それぞれの相での着眼点や受けやすい印象がある、ということでした。

ここから着眼点を深掘りし、治療的評価とその解釈を見ていきます。
また観察する視点は原則矢状面からとしています。

接地初期・荷重の受け継ぎ


①観察の着眼点

ヒトは踵接地のタイミングが左右で違い、遅れるほうが存在します。
入谷誠氏は、人間には蹴り出し足と踏み込み足があるとし、左右の足は同じように動くことはないと述べています。


人間の歩行において左右の蹴り出しが同じ人は一人としていない。

入谷誠,結果の出せる整形外科理学療法.p224



接地が遅れる、ということは荷重の受け継ぎが遅れることを意味し、その後の単脚支持・遊脚前進に大きく影響します。

具体的な観察方法としては、
・踵接地のタイミングで、トン・トン・トンとリズムをとる。右→左と左→右の時間を比較し、遅れる方を確認する。
・左右で接地時の印象の弱々しい・力強さのない下肢を確認する。

などがあります。

右の接地時アライメントが悪く見える これは左の接地が遅いことの結果である



②治療的評価

観察した結果が正しいか確認する方法として、接地が遅れている下肢の踵に厚さ1mm、5x5cm程度のパッドを貼付することで接地のタイミングが整うかどうか見ることができます。
歩行時に何かしらの症状がある場合はこのときに症状が軽減することも多いです。
パッドの厚みによって接地が早まるため、間違った方へ貼付すると左右の差が大きくなり、歩きづらさや症状の悪化を訴えるでしょう。確認のために左右とも評価してみるとよく分かると思います。

左への荷重を代償していた上半身のアライメント改善



入谷先生の足底板評価によく用いられるパッドを使用しています


③解釈の一例

着眼点でも触れましたが、接地が遅れるということは荷重の受け継ぎが遅れるということであり、短脚支持で体重が乗り切らない、前遊脚期で股関節伸展しきらない、ことに繋がります。

筆者の場合は左膝の完全伸展に違和感があり、軽度屈曲位での接地となっているため左膝の踵接地が遅れています。膝屈曲位のため踵離地も早く、左の立脚期全体が短くなっています。


踵接地は立脚期のスタートであり、ここがうまくいかずその後のフェーズでエラーが出ているケースが非常に多いと感じます。


立脚中期・単脚支持

①観察の着眼点

立脚中期において骨盤の側方移動が少ない側があります。
極端な例を除いて、骨盤の側方への移動が少ないほうが、重心移動が不十分となります。

観察方法としては、
・単純な骨盤帯の外方への移動量をみる
・上半身・体幹での代償を服のシワでみる

などがあります。

また歩行中によくわからなければ、その場で足踏みをしてもらうと立脚中期の状況を抜き出してみることができるのでわかりやすいです。

安定感やスッと立つ感じ、不安定感や重たい感じからどちらの重心移動が不十分か観察します。
筆者の場合は右立脚のほうが安定し、軽い印象があるのがわかります。

②治療的評価

側方移動の少ない側の腸骨稜付近に評価者の手をあて、骨盤で押すように何度か促します。その後歩行や足踏み動作で重心移動のスムーズさや症状の軽減があるか確認することで評価結果が正しかったか確認することができます。

③解釈の一例

前編でも述べた通り、歩行の流動性を作るのは緊張と弛緩の繰り返しです。立脚中期において荷重がしっかりと片足にかかることで筋の緊張が生まれ、遊脚期での弛緩(股関節伸展)に繋がります。
筆者の場合、一側(左と仮定)へ荷重できない要因として同側(左)の中・大殿筋の筋力低下、左扁平足、脊椎の右側弯・右への上半身重心偏位が挙げられます。
右への荷重はできるので、結果として右の股関節伸展は出やすく、左は出にくいです。


前遊脚期から遊脚期・遊脚前進

①観察の着眼点

股関節伸展から屈曲のスムーズさ・可動域を見ます。

前面から
・股関節内側のシワで屈曲・内旋可動域
を観察できます。


②治療的評価

ここでの課題である遊脚前進は荷重の受け継ぎ(踵接地)と単脚支持の結果として表出されることがおおく、前の2つのフェーズへの介入結果として変化が現れます。
上2つのフェーズを評価する前に股関節の伸展から屈曲の可動域を確認しておくとよいです。

踵接地でみた画像を対側の前遊脚期として見直してみます。


③解釈の一例

上記の通り結果としての前遊脚期であるため、ここが原因となることは少ないです。このフェーズまでうまくつながってくれると、足が前に進む感覚や、足が軽い感覚を得られることが多いです。



いかがだったでしょうか?
ぜひ歩行を見る際に1つの指標にしていただけると嬉しいです。

参考文献

山口光國,入谷誠,他.結果の出せる整形外科理学療法.メジカルビュー社.2009.
盆子原秀三,他.印象から始める歩行分析.医学書院.2018.

運動と医学の出版社さんの動画は非常にわかりやすく、参考になります。
今回の記事も参考にした箇所が多々あります。



最後まで読んでいただきありがとうございました。
また次回の記事も読んでいただけると嬉しいです。


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