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パーキンソン病のすくみ足に対する理学療法

今回はパーキンソン病の4大症状の一つでもあるすくみ足に対する理学療法についてまとめていきたいと思います。

以前パーキンソン病患者のための環境設定についてまとめたのでこちらの記事もご覧ください。

パーキンソン病は多系統疾患として捉える必要があり、振戦、固縮、無動、姿勢反射障害などの運動症状だけでなく、認知機能障害、記憶障害、自律神経障害、睡眠障害などの非運動症状も引き起こされます。


パーキンソン病では①疾患による障害(振戦、固縮、無動、姿勢反射障害、遂行機能障害)②長期投薬に伴う症状(ウエアリングオフ現象、オンオフ障害、ディスキネジア)③加齢や廃用症候群などが複合的原因による症状(歩行やバランス障害、姿勢異常)に分類されます。


中でも疾患由来、投薬に伴う症状は主に医師による治療対象となりますが
加齢や廃用症候群、複合的原因による症状はリハビリテーションの主要な介入対象となります。


すくみ足に対する理学療法

すくみ足は歩き始めに起こりやすく、地面と床が磁石でくっついてしまったかのようにうまく足が出なくなる症状のことを言います。

他にも、目的地に近づいたタイミングや細い道を通る時なども出現しやすいです。

手足の新鮮が主症状であるパーキンソン病患者ではすくみ足は出づらいと言われています。

すくみ足のメカニズム

すくみ足が発生するメカニズムは主要なもので以下の4つが提唱されています。

歩行中の歩幅の低下やケイデンスの上昇が蓄積し、一定の限界点を超えると生じる閾値モデル、歩行時に認知、情動に関する情報処理が課せられた際に認知的な歩行運動制御と競合が生じた際に生じるとする干渉モデル、歩行中に速度や方向を切り替える必要が生じた際など活動する場面で意思決定を要求されると情報処理能力の低下によりすくみ足が生じるとする認知モデル、歩行開始時など認識している自己の意図と意識にのぼらない運動の準備との解離によりすくみ足が生じるとする分離モデルなどが提唱されている。

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwjOi_Xd1_eBAxULsFYBHYVuBwgQFnoECAoQAQ&url=https%3A%2F%2Fwww.jstage.jst.go.jp%2Farticle%2Frigaku%2F42%2F8%2F42_42-8_074%2F_pdf&usg=AOvVaw1U8aJVeiw9ggLMapuvdpuS&opi=89978449  より引用

パーキンソン病患者では健常者よりも運動制御において認知機能の動員が必要になると考えられています。

実際にすくみ足が発生する直前の脳波を測定した研究では前頭領域のθ帯の活動が上昇されていると報告されてるそうです。

θ帯とは眠気を感じてまどろんでいる際に生じるとのことだが、新しいものを発見したり思考のプロセスにおいて注意が散漫にならないように感覚入力を抑制することとも関連しているそう。

この研究はすくみ足が発生する際にはその直前から認知的負荷が上昇していることを示しており、

認知的負荷が過剰となり効率的に運動制御ができなくなった結果、すくみ足が発生していると考えられています。


すくみ足の介入戦略

ではすくみ足への対処法について
通常歩き始めは利き足側から歩き始めることが多いですが、すくみ足を呈するパーキンソン病患者では振り出し開始足が一定しないとの報告もあります。

また疾患の優位側と利き手側が一致することが多い点についても報告されています。

利き手、利き足側が疾患優位側である場合には歩行開始動作がうまくいかない可能性が上がります。
また、方向転換時の回転方向についても疾患優位側と関係すると考えられます。


そのため歩行開始や方向転換動作ではどちらの足から出した方がいいのか、どちらから回ればいいのかを意識してもらうことによって動作が改善する症例も多いのです。

パーキンソン病は進行とともに認知機能障害などが顕在化してくることが多いため、なるべく早期に認知的な運動制御の指導を行うことが重要です。

参考文献

パーキンソン病の理学療法Up to date. 岡田洋平 .理学療法学.2015,42(8),755-756.

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