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頚椎症についてまとめてみました。

前がき

在宅でリハビリテーションを行っていると様々な症例に出会う。
今回は頚椎症の症例と携わることがあったが、自分の知識が不足していることに気づいたため頚椎症の基本的な知識から初回介入に向けた評価についてまとめて行きたい。


頚椎症の基礎知識

疫学


好発は50代で、女性よりも男性の方が2倍症例が多い。
自然経過としては上肢症状から始まり、徐々に下肢痙性麻痺、温痛覚障害へとつながっていく。
生命予後は正常群と比較すると平均9年縮まっているとの報告もある。

初期症状は両手手指の痺れ(64%)、歩行障害(16%)
下肢の筋力低下を伴うことは少なく、痙性歩行や失調性歩行を訴える。痙性歩行が明らかな症例では両下肢の反射が亢進しバビンスキー反射やクローヌスが陽性となる。失調性歩行がある症例ではロンベルグ兆候が陽性となる。

病態


静的因子としては発育性脊柱管狭窄、動的因子としては頚椎の不安定性の有無が重要な因子となる。
高齢者では加齢により下位頚椎の可動性が低下するため代償的に上位頚椎の不安定性につながることが多い。
よって高齢患者においては65歳未満の患者と比較し主病変の高位がC 3/4、4/5の症例が80%と大半を占める。

治療


発症要因として静的因子(圧迫因子)、動的因子があるため圧迫を除去することと、動的要因を排除することが治療の目的となる。

特に後屈を避けることが重要で、具体的な対策案、生活指導としては、
上を見上げる姿勢はとらない。首をぐるぐる回す運動は避ける、腹ばいでの読書は避ける、T Vを見る姿勢に注意する、頸部までカバーできる広い枕を使用する
などが注意点として挙がる。

保存療法で悪化する場合などに手術適応となることが多く、基本は保存療法が適応される。
軽症例では頚椎牽引法や、動的不安定性を解消するための頚椎カラーによる固定の有効性が報告されている。
薬物療法や代替医療(鍼、灸、マッサージなど)の有効性を証明する科学的根拠はない。

手術療法自体の目的としては圧迫を解除することにより今後の悪化を防ぐことが大きい割合を占める。そのため保存経過をなるべく正確に予測することも重要とされている。
このことから手術療法では手術前後の症候の増減比較だけでなく、保存療法をした場合との比較が重要との意見もある。仮に症状固定期であり、症候の改善が見られなかったとしても、後の悪化を防ぐことができたら有効であったと考えられるからとのこと。

頚椎症の診療 より引用

軽症例は軽症例のまま経過することが多いためまず適応とならない。最も良い適応例は頻回増悪例で、理由としては増悪は過剰な可動性により生じることが多いためである。頚椎の後方滑りなど不安定性がある症例は特に注意が必要である。

経過・予後


Schmidtらの報告では75%が外傷などで症状が悪化し、20%が徐々に悪化、5%が急激な悪化と未治療で改善することはまずない。保存的治療では平均7.5年の調査(151症例)で改善21%、不変23%、悪化9%、悪化のため手術48%とした報告がある。

予後予測ではJOAスコアが8点以下などと、術前の症状が重症であるほど予後が悪いとされている。また狭窄された高位が高ければ高いほど予後が不要とされている。

頚椎症の神経症状は慢性的に悪化するよりは、間欠的な悪化期があり(転倒など外傷による悪化や不良姿勢の継続、頸部の運動など)、その後緩解して再発・緩解を繰り返す(時間的多発性)。その間の期間は症状は固定されていることが多い。

初回評価で理学療法士がやること


まずは初回評価で患者の状態を知ることが先決となる。
病院やクリニックに限らず在宅でも簡便にできる評価をまとめてみた。

①VAS (Visual analogue scale)


現在の症状(痛み、痺れ)の強さを主観的に表してもらう。
注意点としては各項目の定義が曖昧なため患者には10(最大)が「この世の痛みで耐え切れないほどの痛み」などと説明することである。
苦痛を伴う患者からすると10が我慢のきく痛みと混同してしまうことがある。

定義をしっかりとして、経過を追っていく。

②運動能力検査


握力、手指タップテスト、10秒離握手テスト、10秒足踏み検査、三角ステップ検査、足タップテスト、MMT(徒手筋力検査)が挙げられる。

③Nurick scale


頚椎症における歩行障害や就労の可否を中心とした評価、0〜5の6段階評価となる。

整形外科研究に用いられるスコアリングシステムおよびその特徴 頚椎疾患の評価システム より引用

④JOAスコア


現在でも世界的にスタンダードナ評価法として普及している。
頸髄症に伴う各症状を四肢によって網羅し最終的に17点満点(正常なら満点)でスコア化している。

整形外科研究に用いられるスコアリングシステムおよびその特徴 頚椎疾患の評価システム より引用

科学的根拠はまだ乏しいが、70~75%以上の改善率を「改善」としているものが多い。

まとめ

今回はここまで。基本的な知識をうまく活用することが重要だと考えます。
またよろしくお願いします。


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