パーキンソン病の住環境整備について
今回は在宅生活をされているパーキンソン病の方と関わる機会をいただいたため、その方の為になれるように住環境整備の注意点などをまとめてみた。
パーキンソン病の概要
公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センターにはこう記載されている。
1年間の症状増悪を追跡した研究ではADLで3.3%。運動機能で2.1%の低下を認めたと報告されている。
症状
症状の多くは安静時振戦から出始まり、動作の拙劣さへと繋がっていく。初発の症状には左右差があることが多い。
表情は硬く(仮面様顔貌)、言葉は単調となっていく、自然な動きが減っていく。
歩行は前傾姿勢で歩幅が狭く遅くなり、進行するとすくみ足といって足裏が床に張り付いたように、うまく動き始められなくなる。
運動症状は四肢症状(4大症状)と軸症状(姿勢異常や姿勢不安定性)に分けられ、軸症状は特に薬効が低く進行とともに増悪していく。
他にも、非運動症状では意欲低下、認知機能障害、幻視、幻覚、妄想、睡眠障害、自律神経障害(便秘、頻尿、発汗異常、起立性低血圧)なども確認されている。
予後
患者によって進行の速さは異なる。
一般的には振戦が主症状だと進行は遅く、動作緩慢が主症状だと進行が早い。適切な治療を行うことで発症後10年は普通の生活が可能と言われている。
それ以降は個人差があり介助が必要になることもある。
生命予後はそこまで悪くなく、平均余命よりも2〜3年短くなる程度と。高齢者では脱水や栄養障害、悪性症候群になりやすいため注意。
生命予後は臥床生活になってからの合併症に左右され、特に誤嚥性肺炎に注意が必要。
重症度分類
進行状態は以下に記載した項目に基づいて分類される。
理学療法士(リハビリテーション職)の関わり
中江らの報告によると、在宅生活をしているパーキンソン病患者の中では運動療法未経験者が51.6%が存在していることと、定期的な運動をしていない者が37.4%存在していることを報告している。
様々な研究でパーキンソン病患者の活動量が減っていることが明らかとなっている。
このことから、理学療法士は運動療法を中心として、不活動を防ぎ活動的な生活の支援や生活圏の拡大を図る支援が求められる。
また生活環境が舗装さていることは、転倒予防にも繋がり将来の二次的な障害の予防や、転倒を繰り返すことによる自信喪失を防ぐことにもつながる。
在宅生活を送るパーキンソン病患者を支援する上で、福祉用具業者と協力し生活環境を整えることも必要である。
具体的な環境設定
まず、介入時点での日内変動状況を把握する必要がある。
今対峙しているパーキンソン病患者様が薬物療法の効果On状態なのか、Off状態なのか。
転倒が多いのはOn状態で調子良く活動していることが多いことがわかっているため、出来ればOn状態で活動的な様子を見られると良い。
①バリアフリー化
基本的に段差は解消した方が良いが、難しい場合も多い。
床の全面工事には大掛かりな工事を伴うため、まずは段差を視認しやすくなるように蹴上げや段差部分に目印となるようなテープを貼ると良い。
他にも段差横に手すりを設置するとなおよい。
②足元
夜間の歩行の際なども特に注意が必要である。
人感センサーなどで足元灯をつけられると夜間の移動も転倒を予防しやすい。
また日頃から移動の導線上に物を置かない・かたづけることも重要。
③目印と姿勢
姿勢崩れが原因で動作に困難が生じる場合には目線の高さにテープなどで目印を作ることも効果的である。
男性便器での排尿時姿勢が崩れてしまう場合に目線の高さにテープを貼ったり、
ダイニングチェアやベッドからの歩き始めに足がすくんでしまう場合に、等間隔にテープを貼って目印を作るなど。
意識的に動作・姿勢に修正がかけられるため転倒などを予防できる可能性がある。
終わり
今回はパーキンソン病患者の住環境について、理学療法士として関われるポイントを確認した。
症状や住環境、経済状況などは人によって異なるため個別性の高いアプローチが求められる。
参考文献
1)パーキンソン病診療ガイドライン2018(https://www.neurology-jp.org/guidelinem/parkinson_2018.html)
2)高齢在宅パーキンソン病患者の生活空間に関連する因子の検討.只石朋仁 他.理学療法学.2019,46(5),351-359.
3)身体的活動のケアに向けて〜作業療法士からの視点〜.助金淳.日本静脈経腸栄養学会雑誌.2017,32(5),1450-1452.
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