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自走する地域創生のために、デザイン会社ができること|京丹波町タウンプロモーション

RightDesignInc.のnoteでは、これまで弊社が携わってきたプロジェクト事例を紹介していきます。まず今回ご紹介するのは、京都府・京丹波町のタウンプロモーション。官民連携組織の立ち上げから始まったこのプロジェクトは、現在進行系で広がりつづけています。

官民連携組織の立ち上げ

京都府中部に位置する京丹波町は、特有の自然環境を活かした豊富な食資源を有し、京都中心部と山陰・日本海とを繋ぐ交通の要所としても栄え、京都の食文化を支える「京の都の食糧庫」としての役割を果たしてきました。しかし近年、人口減少と地域経済縮小が著しく進行していることから、その対策として「観光」「移住」「ふるさと納税」といった外需獲得を推進し、持続可能なまちづくりを進めていく必要がありました。

外部のデザイン会社が地方自治体のプロモーションに取り組んでいくにあたって、私たちはまず「仕組みをつくること」と「デザイン思考をインストールすること」に注力しました。今後10年、20年と取り組みが進んでいくことを念頭に置くと、単に年間のプロモーション施策を検討したり個々の施策を実現するだけではなく、京丹波町が自走できる環境をつくりコンピテンシーを高めていく必要があると考えたからです。

プロジェクトの始動にあたって、私たちはまず官民連携組織「京丹波イノベーションラボ」を立ち上げました。この組織は、若手農家や京都から移住したファッションデザイナー、京丹波出身のパワーリフティング世界代表選手、和楽器アーティスト、町役場のやる気あるメンバーなど、京丹波の“タレント”が集まったものです。きちんと町の人々の意見を吸い上げながら、多様な視点を取り入れられる環境づくりは本プロジェクトにおいて非常に重要でした。

京丹波イノベーションラボメンバー

町にデザイン思考をインストール

プロジェクトの初期段階においては、まず3回のデザイン思考ワークショップを実施しました。1回目は、京丹波町のお土産をつくることがテーマ。京丹波町のもつ資産や外の人々に伝えたいことを抽出するとともに、どうすればその資産を形にできるのか考えていきました。

2回目のワークショップは、町の資産を世間の関心と掛け合わせて表現するものです。たとえば京丹波は昼夜の寒暖差が非常に大きいため野菜のうまみが引き出されることで知られているのですが、この現象をサウナブームや「整う」という現象と掛け合わせ、「京丹波の野菜は“整っている”」という表現が生まれました。3回目は、これまでの議論を踏まえながら町の長所を言語化するもの。今回のワークショップでは「デトックス」という言葉に着目し、普段都会で暮らす人々が京丹波で“デトックス”するためにはどんな体験や場所をつくるべきか議論を行っていきました。

オリジナルの「町の資産」カードと「世間の関心」カードを掛け合わせてアイディエーション
官民の垣根をこえて、アイデアを形にしていきました

これらは単に「野菜のおいしさ」や「デトックス」といったキーワードを引き出すのではなく、ワークショップを通じたデザイン思考のあり方を京丹波町の方々に体験してもらうべく行ったもの。回を重ねるにつれ、町の人々がみずから自分たちのもつ資産やその発信方法を議論できる環境が整っていきました。

関係人口を増やしコンピテンシーを強化

町のプロモーションを進めていくうえで、私たちは関係者人口を増やすことが重要だと考えました。そこで京丹波イノベーションラボでのディスカッションやプロトタイピングを経て生まれたのが、新たなプロモーション方針「GREEN GREEN」です。
コンセプトムービーはこちら🎥

プロモーション方針「GREEN GREEN」


「自然との共生」や「ウェルビーイング」など5つのVALUEを定めるとともに、新しいブランドロゴやデザインガイドラインも制作。


また、町の境界を超えて京丹波の魅力でつながるコミュニティをつくっていくべく、町から生まれるモノ・コトをひとつのブランドへと集約する「FROM京丹波」と京丹波のファンを増やすコミュニティプログラム「CLUB京丹波」を立ち上げました。

町から生まれるモノ・コトをひとつのブランドへと集約する「FROM京丹波」
京丹波のファンを増やすコミュニティプログラム「CLUB京丹波」

前者は京丹波の特産物や加工品にラベルを付与し町の名前をより多くの人々へ広めるとともに、誰もが使いやすいロゴを導入することで、町内外で活動する個人も気軽にブランドを活用できるような環境をつくっています。

後者は会員限定のインセンティブとして会員証の発行をしたり、月に一度のオンラインイベントの開催をしたりしています。こうしたさまざまな情報発信を通じて、多くの方々が「京丹波のファン」として町と関われるような場を準備しています。

これらに前述の京丹波イノベーションラボを加えた3つのプログラムからなる「GREEN GREEN」は、ただトップダウンでブランドを広げようとするものではなく、住民一人ひとりが主体性をもって町の魅力を発信していくことへとつながっていきます。デザイン思考のワークショップなどを通じて多くの人々が自らブランドを使いこなせるコンピテンシーを高めることで、自走するプロモーションプロジェクトが生まれつつあります。

町と並走するアジャイルプロトタイピング

これらのプロジェクトと並行しながら、私たちは採用プロモーション映像やコンセプト映像の制作、プロモーション方針を体現するイベント「GREEN GREEN MARKET」など、さまざまなクリエイティブや企画にも取り組んでいます。2023年12月には、第1弾のイベントとして「京丹波Christmas Market2023」を実施しました。これまでクリスマスを祝う大々的なイベントがなかった京丹波に人々が集まる場をつくったことで、町の新たな文化づくりにも寄与しています。
イベントのアーカイブムービーはこちら🎥

イノベーションラボで立体模型を作りながらイベント構想
京丹波Christmas Market2023

多くの施策に取り組むうえで私たちが重視しているのが、町の人々を巻き込みながらアジャイルなプロトタイピングを重ねていくこと。単に京丹波町と受注/発注の関係を結ぶのではなく町と一体となり、ともに日々プロトタイピングを重ねていくことを心がけています。結果として、町役場の方々の自走力が向上し、人材育成にも効果があがっています。

地方自治体のプロモーションを考えていくうえでは、単に優れたクリエイティブをつくったり外部への情報発信を強化したりするだけではなく、ブランドを地域にしっかりと浸透させてシビックプライドを確立し、住民の方々が“自分ごと”としてブランドを活用できる環境をつくることが必要不可欠です。

本プロジェクトは京丹波町を舞台としたものですが、今回の手法はさまざまな自治体で活用なものでもあります。地方部においては少子高齢化や地域経済の縮小など今後も多くの課題が深刻化することが予想されるなかで、これからも私たちはより多くの人々が参画できるグラスルーツなプロモーションの仕組みづくりを考えていきます。

RightDesignInc.へのご相談はこちら

本記事では、2023年で弊社が携わらせていただいたお仕事を抜粋しながら、デザインへの向き合い方をお話しました。

我々はデザインを広く捉え、思考・戦略・体験など、すべてのタッチポイントにおいて「デザイン」の力でできることを一貫して担います。

デザインの力で少しでも何か変わるかもしれないとお考えの方は、ぜひ弊社にご相談ください。

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