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マイ・ライフ・サイエンス(30)「夏至と梅雨」

 梅雨が好きな人はなかなか見当たりません。私もまた梅雨が好きではありません。優等生になって梅雨がないと夏場は困るんだと言われても、それはそれ、やはり嫌いなものは嫌いです。
 雨がじとじと降り続き湿気が高くなるのはウンザリですし、人目につかない水たまりのボウフラが増殖し、プーンと音をたてて蚊が迫ってくるのを想像するだけで痒くなってきます。
 さらに紫陽花。紫陽花の花が綺麗だとするのは理解できますが、私の心象風景のなかで、紫陽花はある種のトラウマを喚起させます。私が幼稚園児だったころ、いつまでたっても親が迎えに来ず、一人ぼっちで門を見つめていたとき、その門のそばに紫陽花が満開に咲き誇っていました。この幼児のころの強烈な寂しさの経験が心深くに刻み込まれたようで、紫陽花を見るとその強烈な寂しさが蘇ってきます。
 ということで、私は梅雨が好きではありませんが、先日のこと、今年の夏至は6月21日金曜日だというのをたまたま知りました。6月21日といえば梅雨の最盛期のはずで、気象庁の平年値を調べると、関東の梅雨入りは6月上旬で梅雨明けは7月下旬でした。
 夏至は太陽が最も高く上る日で、その日差しの角度は約78°です。ちなみに冬至には約31°になります。地表とのこの角度が直角に近ければ近いほど太陽光は地表を熱く熱しますから、夏至前後は太陽光により地表は最も熱せられます。
 ところが、上手くしたもので、空にはどんよりとした梅雨雲が連日立ちこめ、角度約78°のその強烈な太陽光を遮断してくれるわけです。さらに、時に晴れ間があると、強烈な太陽光は水分をふんだんに含んだ地表を乾かしてくれます。
 から梅雨の怖さはひと夏を越すための水源枯渇もありますが、一年で一番強烈な太陽光を遮断できぬ日々が続くことでもあります。
 500万年ほど前に日本列島が形成されてから現在まで、時々の変化はあったでしょうが、夏至と梅雨の絶妙な関係がこの島国にあり、この島国に住む私たちはこの関係をはっきりとは認識せずとも享受してきました。
 とはいえ、私が梅雨が好きではないのは、仕方がありません。中嶋雷太

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