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音楽があれば(17)美しい曲の喪失-坂本九「見上げてごらん夜の星を」

 夏の夜に、風がそよりとふくと私の心の奥底に眠っていた美しい曲たちが脳裏に蘇ってきて、私の耳奥にある音楽室で歌が流れ始めます。
 坂本九さんの「見上げてごらん夜の星を」もその一つです。
 クラシックからパンクまで、雑食のようにジャンルを超え様々な音楽を楽しんできましたが、心の静寂に寄り添ってくれる美しい曲は格別なものがあります。
 戦争の辛酸を舐め、誰もが大小のPTSDを患っていたのかもしれませんが、昭和30年代に作曲作詞された名曲たちは、今もなお、輝きを宿したままでいるようです。
 永六輔さん、いずみたくさんや中村八大さんたちが何故こんなにも美しい曲を作り出せたのか…いつの日か、テレビドラマか映画にしたいものです。興味ある方がいればぜひ。
 時代は変わり、音楽の好み(売れる楽曲)はかなり変わりましたが、本当は美しい曲も求められているのではないかと思っています。ただ残念ながら、美しい曲はCMやテレビドラマの主題歌に使うほどキャッチーではなく、またスマホアプリの世界に集まる十代前半の子供たちは、(私もそうでしたが)群れることが楽しいし、踊れたりキャッキャできる方が楽しいので、社会人となり齢を重ねた人々の日々の辛さを癒してくれるような美しい曲は、二の次になっていて、お金儲けに繋がらない音楽は喪失されてきたように思っています。生々しい話になりましたね。
 1985年の夏、御巣鷹山で坂本九さんが亡くなられたあの夏、「見上げてごらん夜の星を」は永遠の美しい曲になりました。
 1990年代初頭から、ビジネスとしてグラミー協会との仕事を重ねつつ、ジャンルを超えた楽曲に多々出会い楽しんできましたが、気づけば美しい曲の喪失をひしひしと感じる今日このごろです。
 ま、心の中の「美しい曲」倉庫には、たんまり貯蔵していますが…。中嶋雷太

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