見出し画像

南仏ホームステイ&ポルトガル一人旅~ポルトガル編①~

リゾートを楽しむヨーロピアンでにぎわうリスボン

パリのシャルルドゴール空港は7月だというのにどこか寒々しい空気がただよっていた。飛行機に乗り2時間半、リスボンに到着して空港におりたつ。雰囲気は一転して、リゾートを楽しむ観光客があふれていた。パリの空港が寒々しく思えたのはビジネスマンが多かったせいかもしれない。

スーツケースが出てくるのを待っていると、30代の日本人らしい男性と目が合う。「お仕事ですか?」と真面目そうなその人が聞く。ラフだけど、こぎれいなファッション、きっとビジネスマンだろう。

「いえ、観光です」と答える私に、彼は意外そうな顔をする。

「観光?!ポルトガルに?観光するところなんてあるんですか」
「お仕事ですか?」私はその問いには答えず、苦笑いしながら聞いた。そうだと答える彼に、いいですね。と付け加えた。海外出張などしたことのない私は仕事で海外に来れる人がうらやましかった。

「もっと見どころのある国がよかったんだけど…」と彼は失礼なことをつぶやいた。

そういえば周りを見渡しても観光客らしき人はみなヨーロピアン。わざわざアジアの東の果てから遺跡や有名な美術館があるわけではないポルトガルに一人旅する日本人は珍しいのだろう。

適当に相槌を打ち、スーツケースをみつけて彼に会釈した。アジア人の少ないポルトガルではお互い日本人だと認識すると、どちらからともなく話しかける。

南国らしい景色が広がる

外に出ると生暖かい風を肌に感じた。空港バスで市内まで出る。車窓の風景はヤシの木とまぶしい太陽、パステルカラーの家並み。楽しそうな南国らしい雰囲気に一人旅の緊張が消えていく。

バスでロシオ広場という中心地までいき、ネットで予約した宿を探す。建物の2階が受付になっていて、見つけにくいとガイドブックに書かれていたが、案外すんなりみつかり案内された部屋に入る。部屋はレトロな感じでかわいらしく、思ったよりも広い。アンティークというほど高級感があるわけではないが、60年代風の受付も素敵だ。ついでに受付のおじさんもレトロな味のある人だった。飄々として素朴さがある。

リスボン一のの繁華街バイシャ地区

料金の割に思っていた以上に素敵なホテルに気分が上がり、さっそくシャワーを浴びて町を歩く。この宿がある地区はバイシャ地区と言ってリスボン一の繁華街だそうだ。

その割には小規模で東京やパリに比べると、こじんまりとしていた。カフェのテラス席には観光客の笑顔があふれていて散策するだけで楽しかった。

外の暑さはパリの比ではなく、歩いているだけで汗が噴出した。喉の渇きと、空腹に気がつき、目に付いたレストランに飛び込んだ。

英語のメニューが出てきたので、観光客向けの料金だけ高い店かと後悔した。魚のリゾットというものを頼んでみる。しばらくして鍋で出てきたそれは、数種類の魚をトマトなどの夏野菜で煮込んだもの。一口食べて、あまりのおいしさにびっくりした。

魚のだしがトマトの酸味とあい、コリアンダーがちょうど良いスパイスになっている。ひとり分には多すぎると思われた鍋いっぱいのリゾットをあっという間に完食してしまった。リサーチもせず飛び込んだ店だが、料金も安く美味しくて満足した。

そのままバイシャ地区を夕方までぶらぶらした。お土産屋さんをみたり、ファドというポルトガル民謡のCDを視聴して過ごした。

夕飯は地球の歩き方で

夜ご飯は『地球の歩き方』ですでにリサーチ済み。豚の臓物煮込みが名物だという店に入った。

18時。店は開店準備中らしくおじさんが表に看板を出していた。入るか入るまいか躊躇していると、彼が「来い」というようなしぐさをしたのでついていった。

従業員がまかないを食べている横で、ぽつんと一人テーブルに着いた。注文するものも決まってるいるので、まかないを食べている人たちをぼんやりとながめた。勤務前なのにワインを飲んで楽しそう。仲間とわいわいまかないを食べる彼らを見ていたら、リスボンでののんびりした暮らしが楽しそうでうらやましかった。もちろん旅行者の目から見た彼らの人生の一部でしかないけれど。

料理は、豚の色んな内臓に野菜が煮込んであるというシンプルなものだった。美味しいのだが昼間のリゾットにはかなわない。

確かにリスボンは観光する場所はそれほどないが、物価が安く安全で食べ物もおいしい。日本に比べると豊かな国ではないし刺激も少ないが、のんびりとした素朴な町並みはどこか懐かしさを感じさせ、心穏やかになる。初めての一人旅にリスボンを選んでよかった。

今日は早く寝て明日に備えよう。部屋に帰り、寝る仕度をするとまだ8時半。空はやっと少し暮れていくころなのに私はもう眠りに付いていた。

この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?