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南仏ホームステイとポルトガル一人旅~パリ編その①~

早朝パリのカフェにて


旅の行程は、パリに3泊→飛行機でリスボンへ。リスボン6泊→飛行機でパリへ移動。その日のうちにTGVでニースへ。ニースに3週間滞在→パリへ戻り帰国。約一か月の旅だ。
パリには早朝に到着した。まだぼんやりした頭をすっきりさせるため、人影もまばらなシャルルドゴール空港のカフェでクロワッサンとコーヒーの朝食をとった。コーヒーの香りとフランス語の響きが、パリに戻ってきたことを感じさせた。パリでの滞在は「深夜特急」で主人公が度々滞在していたユースホステル。初めて滞在するユースホステルではどんな出会いがあるだろう。私はわくわくして旅のスタートをきった。

初のユースホステル

方向音痴の私にしては珍しく、一発でホステルに辿り着いた。駅から近くアクセスもよい。外観はパリらしく思っていたよりずっと綺麗だ。すっかり気をよくした私はスーツケースを預けようと受付に向かった。しかしなぜか受付には誰もいない。到着早々ホステルのいい加減さに新鮮さを感じつつ、フロントのそばにあるカフェスペースで待つことにした。10分ほどして悪びれることなく、背が高くハンサムな青年があらわれた。チェックイン前だが部屋の用意ができていると言われすぐ部屋に入った。
私の部屋はあのセキュリティの甘い受付を抜けてすぐの一階だった。部屋が一階というのも初めてだし、廊下に面した大きな窓があるのも防犯上気がかりだった。時間帯のせいか、バカンスにはまだ少し早い時期のせいか、ホステル内は閑散としていた。
室内は清潔だ。トイレ、お風呂は共同で狭いがベッドと書き物ができる机もついている。一泊3000円にしてはまあまあだ。
私は気を取り直し意気揚々と久しぶりのパリ観光に出発した。

寂しい大都会パリ

久しぶりのパリ、行きたいところが沢山あった。サンジェルマンや、シテ島、サンルイ島、マレ地区。教会や美術館観光、FNAC(CDやDVDを販売している店)や本屋も行きたい。洋服も買いたい。私は早速マレ地区で買い物をすることにした。マレ地区はセンスのいいこじんまりしたお店がたくさんある。手ごろな価格で凝ったデザインの素敵な服を売る店がいくつもあった。私は夢中でショッピングを楽しんだ。
しかし買い物の最中、ふと自分が孤独だと実感した。
あれほど、気の合う友達が沢山いたパリ。しかし今は一人。大都会の雑踏で私はなんともいえない寂しさを味わった。懐かしいパリに興奮して、素敵なお店を発見してもそれを伝える人が誰もいない。わくわくしていた気持ちが沈み始めた。
こんな気持ちになるのは疲れているせいだ。そう思い、私は早めにユースホステルに戻ることにした。

お隣さんは日本人

まだ夕方4時だったが、いつかまた食べたいと思っていたファラフェルサンドを持ち帰り、部屋に帰って食べてそのまま寝ることにした。ファラフェルサンドとはイスラエルのサンドイッチのようなもの。豆で作られた丸いコロッケが、たっぷりの野菜と一緒に平たいピタパンに挟まっている。肉はつかわれていないのに、かなりボリューミー。酸味のある白いシーザードレッシングがかかっており、それが香ばしく揚げてある豆のコロッケによく合う。ピリッと辛い赤いソースが添えられているのもいいアクセントになっている。
早く食べたい気持ちを抑えきれず急いでホステルに向かった。部屋に入ろうとしたそのとき、隣の部屋から東洋系の20代の男の子が出てくるのが見えた。「bonjour」と挨拶を交わし部屋に入ろうとすると「japonais?」と彼がたずねた。「oui」と答えると、彼は日本語で明るくこう言った。「俺も日本人!スペインから来たひろしです。一週間ここに滞在します。よろしく~」

なぜか飲みに行くことになり

ファラフェルサンドを部屋で一人ほおばっていると、誰かがドアをノックする音が聞こえた。先ほど会ったヒロシだった。「夕飯どこで食べるか決めてる?よかったら、これからスペイン人の友達と飲みに行くんだけど、一緒に行かない?」と気さくに声をかけてくれた。早朝に到着して休まず観光したので疲れていたし、夕飯も食べていたが、これも何かの縁だ。ご一緒させてもらうことにした。
急いでファラフェルサンドを食べながら、私は少し不安になった。いくら日本人とは言え、会ったばかりの人と三人で飲みに行って大丈夫だろうか。初めての一人旅。どこまで警戒し、どこまで人を信用するかという線引きがなかなか難しい。

やたらと映画や本の趣味が合う旅人

私はヒロシと二人でバスティーユへ向かった。夜のバスティーユはこれから飲みに繰り出す若者で活気があった。スペイン人のお友達が店に到着するまで、私たちはお互いのことを話し始めた。ヒロシは私と同じ年の29歳、日本で商社に勤めていたが、美術を学ぶために仕事を辞めてスペインに留学中。そして現在は学校が夏休みなので旅人なのだそうだ。
私は今回が二度目のフランス留学であること、初の一人旅であること。本と映画が好きだということを話した。ヴィム・ベンダースやジャン・リュック・ゴダール、レオス・カラックスがお気に入りの監督だと話すと彼も同じような監督が好きだと言う。
本の好みも似通っていた。村上春樹、宮本輝、太宰治、遠藤周作、ポール・オースター、ジョン・アービング、トルーマン・カポーティー、サリンジャー。思いつくままに作家の名前をあげ、二人で盛り上がった。


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